Z会の東大コース担当者が、2020年度入試の東大国語を徹底分析。受験生の再現答案や得点開示データをもとに、合否を分けた「差がつく一問」を選定し、東大国語の攻略法を詳しく解説します。
まずは、2020年度の「東大国語」を俯瞰しよう
はじめに、問題構成や出題傾向をおさえて、「自分が受ける入試問題」を正確に把握しましょう。
記述の”きめ細かさ”が合否を左右する。
現代文・古文・漢文いずれにおいても〈文章の内容を正確に読み取り、かつ限られた解答欄に的確に解答をまとめる力〉を重視する出題傾向に変化はありませんでした。 例年と同様に精密な読解・答案作成の力で差がつく、国語の実力の有無が結果に反映されやすい出題だったといえます。
合否の分かれ目は?
問題の見た目と難易度の違い
次に示すグラフは、再現答案のアンケートから収集した入試本番の難度をまとめたものです。
【文系】(数字が小さい=難しい)
合格者 | 不合格者 | |
---|---|---|
全体 | 3.3 | 3.0 |
第1問 | 3.2 | 2.8 |
第2問 | 3.7 | 3.2 |
第3問 | 3.9 | 3.4 |
第4問 | 1.9 | 1.9 |
※3.0=「普通」を基準に、1.0に近づくほど「難」、5.0に近づくほど「易」という評価。Z会再現答案調査・アンケート結果より集計。
【理系】(数字が小さい=難しい)
合格者 | 不合格者 | |
---|---|---|
全体 | 3.4 | 3.1 |
第1問 | 3.0 | 2.9 |
第2問 | 3.4 | 3.4 |
第3問 | 3.5 | 3.4 |
※3.0=「普通」を基準に、1.0に近づくほど「難」、5.0に近づくほど「易」という評価。Z会再現答案調査・アンケート結果より集計。
第三問を見ると、体感的な難易度は、理系はわずかな差ですが、文系は合格者ほど易しいと感じていることがよくわかります。 実際に再現答案を見ると【漢字や熟語の意味を十分に汲み取り、答案へ反映する力】【文脈に即した表現で答案をまとめる力】の有無によって、如実に出来が分かれる結果となっており、東大入試に合わせた記述解答の練習をどれだけ積んできたかで差が開く問題となっていました。
⇩
差がつく一問は
≪第三問≫
差がつく一問の注目ポイント
第三問の漢文は、話の展開をとらえやすい文章でしたが、不合格者の答案では、自分では読めたつもり・書けたつもりであっても、漢字・熟語の意味や指示語の指示内容などの把握が正確にできていないため、大きく減点されてしまうという傾向が見受けられました。 東大国語で合格点を確保するために要求される〈読解・答案記述の水準〉を知るうえでも、なるべく早い時期に取り組んでおきたい一問といえます。
受験生の再現答案&添削を見ながら、差がつくポイントを確認しよう
Z会では、受験生が作成したこの大問の再現答案を、独自の採点基準に基づいて添削しました!
一見、解答欄を埋めることができていて、点数がしっかりとれそうな答案に見えます。しかし、Z会が採点した結果は、30点中16点。Z会が設定した目標点である21点には届きませんでした。
それでは、この答案には、「どんな要素が足りなかったのか」「どういう対策をしていれば目標点に届いたのか」を詳しく見ていきましょう。
目標点とのギャップをどう埋める?
どの設問もひととおり解答欄を埋めており、大きな読み誤りもない答案ですが、詳細に見ると、訳語の選択や文脈を踏まえた説明が不十分な箇所が目立ち、目標点に届かない結果となっています。
(一)はa「決獄」d「聞」の解釈が正確でなく減点対象。(二)も「嫁」が〈再婚〉であることや「終」が〈最後まで〉の意であることを表現したいところです。一番大きな減点となった(四)は、「此」の指示内容を確実につかんだ上で、的確な説明をすることが望まれます。
入試本番でこのような細かな失点をしないように、書き上げた答案は必ず第三者の客観的な評価を受け、減点の余地のない答案を作成する練習を繰り返すことが不可欠です。
受験生全体の解答傾向は?
Z会で作成した採点基準をもとに再現答案を採点すると、文系(30点満点)・理系(20点満点)ともに、合格者平均と不合格者平均で概ね2点程度の差がつく結果となりました。不合格者の答案では、特に(一)c「事」を〈仕える〉、d「聞」を〈評判である〉と解釈できなかったものや、(二)で「嫁」を動詞と捉えられなかったものなどが目立ちました。また、(三)の「之」、(四)の「此」という傍線部中の指示語の指示内容をどれだけ的確につかめるかが、合格者と不合格者間の差が開く要因となっていました。
全体として、
・漢字のもつ意味や指示語の指示内容など、傍線部の細部も漏らさずに丁寧に訳出・解釈する。
・説明の上で必要な内容を端的な表現で補足する。
・問題文や設問の趣旨に合致するよう、解答のまとめ方や用いる表現を工夫する。
といった東大古典において求められる取り組みの差が、実際の答案における出来の差として表れたといえるでしょう。
Z会が独自作成。この大問の採点基準はこちら!
大学から採点基準が公表されていない中、Z会では、実際の受験生の再現答案や得点開示データを毎年収集し、綿密に分析。長年の分析に基づいて作成した独自の「採点基準」で、本番に限りなく近い採点を可能にしています。
Z会の『過去問添削』で、東大対策を進めよう!
Z会では、特別講座『過去問添削』を開講中です。長年の分析に基づく正確な採点で現在の実力を正確に把握。そのうえで、あなたの答案に寄り添った適切なアドバイスにより、次の打ち手が明確になります。実戦力を効果的に高められる講座です。
Z会東大コース担当者からのメッセージ
文章が「読める」からといって、それだけで設問が「解ける」とは限らないことが、東大国語の大きな特徴です。東大国語で合格点を確保するには、限られた解答欄に読み取った内容を的確にまとめ、答案の完成度を高めるための記述・表現の工夫が求められます。東大頻出の文章ジャンルや東大特有の狭い解答欄に慣れるためにも、早い時期から過去問演習に取り組んでおく必要があります。加えて対策として重要なのは、問題をただ解いただけで終わりにせずに、添削指導を受けて答案の出来や改善点を把握し、入試本番に向けて解答の質を高めていくこと。Z会の「過去問添削」なら、入試本番に近い形の演習と、東大国語を熟知したプロの添削指導によって、合格にぐっと近づくことができます。