「東大化学」2020年度東大入試分析

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)

  • 大幅に易化した2017年度を基点に、年々少しずつ難化している。それでも、2016年度以前の東大化学に比べれば平易な小問が多く含まれていた。
  • 2017年度以降は中問に分かれていない大問が含まれており、2017年度〜2019年度は中問4〜5題の出題であったが、2020年度はすべての大問が中問に分かれており、中問6題と2019年度より1題増加した。小問数でみると、2017年度24問→2018年度29問→2019年度32問と増加傾向にあったが、2020年度は31問とわずかに減少した。中問数は増加したが、全体の分量は昨年度並みである。

2020年度入試の特記事項

  • 出題順は、2017年度以降、第1問:有機、第2問:(理論・)無機、第3問:理論 で定着してきている(2016年度以前は、第1問:理論、第2問:理論・無機、第3問:有機 の順)。
  • すべての大問が中問に分かれており、中問6題の構成で2016年度以前の形式に戻った。
  • 論述問題はいずれも文字数指定がない形式が定着しつつある。
  • 近年、計算しやすい値の計算問題が多かったが、昨年度に続き、煩雑な計算を必要とする問題が複数みられた。
  • 無機の知識を必要とする出題が、ここ数年より少なめであった。

合否の分かれ目はここだ!

  • ここ3年で難度が上がってきているとはいえ、依然として東大としては平易な問題も多く、合格には高得点が必要になると考えられる。小問数が多いので、解ける問題を優先して解き、得点をしっかりと確保することが重要だっただろう。
  • ところどころに煩雑な計算を要する問題や難度の高い問題が含まれていたため、丁寧に全問を解答するより、時間をかけずに手際よく解き進めていく力が必要。試験時間に対して分量は多いため、できるだけたくさんの問題に正解することが高得点につながる。
  • 論述問題には文字数指定がないため、必要なポイントを押さえて的確に論述できたかどうかで差がついただろう。
東大化学を突破するために必要な
「本質の理解」につながる学習ができる!



さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問 

I <有機> 有機化合物の構造決定 

    炭素数は多いがグルコースやサリチル酸など、構造を決めやすい化合物が中心であるため、比較的解きやすい。セロビアーゼやマルターゼを用いて、セロビオースやマルトース以外の化合物を加水分解している点が目新しい。これらの酵素のはたらき方が、化合物Aの構造決定に生かされている。流れにのれれば解きやすい問題である。

    II <有機> 有機化合物の構造決定

    ヨードホルム反応を主軸とした構造決定の問題。キ〜ケは平易。コは、リンゴ酸を扱う問題を解いた経験があれば正解に至りやすかったと考えられる。しかし、Gからの反応でKを推察することは難しく、L、M、Nなどからある程度想像力を働かせて解答せざるを得ないだろう。

     第2問  

    I <理論・無機> 空気に関する総合問題

    空気を題材として、理論・無機の範囲を幅広く問う問題。アの希ガス(貴ガス)に関する正誤問題は、盲点になりそうなものが含まれている。エの論述問題は、高校化学の有機分野で扱う内容を応用させた問題であり、良問である。オは、窒素の発生法として重要な反応であるが、これが自己酸化還元反応であることを認識させるようにつくられている。カは、化学反応式ではなく電子eを含むイオン反応式を問うており、単純な係数合わせで正解できないように工夫されている。

    II <無機> 電子配置、分子結晶

    分子やイオンの構造を、電子対の反発から考察する問題。解きやすい問題が中心であり、コの論述問題も比較的書きやすい。一方、クの選択肢の中に構造を掴みにくいものが含まれており、一筋縄では正解できない。

     第3問 

    I <理論> 中和滴定、電離平衡

    トロナ鉱石を題材とした、二段階中和滴定、電離平衡に関する問題。イの誘導に乗れないと、エの正解も厳しい。イでは、問題文中に近似を用いる箇所が示唆されているが、エは、無視できる項を自分で判断する必要があり、演習量の差が現れるだろう。オの血液の緩衝作用については、教科書のコラム等に掲載されており、知識としてもっていた受験生もいたと考えられる。

    II <理論> 火山活動の化学的考察

    自然現象に関して化学の観点から考察する問題で、東大ではこれまであまり扱われなかったタイプの問題である。計算が煩雑な問題もあるが、方針が立ちにくい問題はない。コの論述問題は、教科書等でよく取り上げられる反応を自然現象・データに結びつけて考察する内容であり、興味深い。

     攻略のためのアドバイス

    2017年度以降、見慣れない題材について長いリード文を読むような問題はなりを潜めていたが、高校化学で扱わない内容を考察する問題として、また少しずつ姿を見せ始めている。出題傾向の変化に関わらず、必要とされる力そのものに大きな変化はない。基本的な事項を、暗記するだけではなく深く理解しておくことはもちろん、例年どおりの難度の高い応用問題が出題されても対応できるだけの十分な力をつけておくべきである。

    東大化学を攻略するには、次の3つの要素を満たすことをめざそう。

    ●要求1●難問に対応する思考力と応用力

    東大化学では、高校で学習する内容をそのままあてはめるだけの問題も出題されるが、合否の決め手となるのは、高校範囲の知識を応用させて考える問題である。よって、基礎力の確立と、それを柔軟に使いこなせる思考力、応用力の養成が求められる。全分野において法則を正しく使いこなせるようになるのが第一である。

    ●要求2● 長い問題文を短時間で読み解く読解力

    東大化学では、実験操作や高校化学の範囲外の内容などに関する長い問題文を読み、題意を読み取り解答する問題が出題される。限られた時間の中で問題文を読みこなし、正確に理解する力が要求される。見慣れない題材・実験にも臆さないよう、他大学の過去問(京大・阪大といった難関大)にも目を向けて演習しておくとよい。

    ●要求3●計算問題の解答時間を短縮する計算力

    煩雑な計算問題が出題される東大化学では、計算力を身につけることが必須である。ふだんの問題演習では、電卓を使用したり、頭の中だけで考えたりするのではなく、実際に手を動かして計算し、計算自体に早いうちからしっかり慣れておこう。

    対策の進め方

    まずは、高校化学の内容を完全に理解することから始めよう。高校化学の内容で曖昧な部分があると、●要求1●を満たすことはできない。近年の東大化学では、応用問題を解くうえで前提となる標準的な内容を確実に押さえることが、よりいっそう求められている。また、有機の「高分子化合物」の単元は対策が遅れがちなので、とくに意識して取り組んでおきたい。Z会の通信教育やZ会の本『化学 解法の焦点』などを利用して、基本的な各単元の理解を確認しながら学習を進めよう。

    高校化学全般の内容を理解したら、次に●要求1●を満たすために、高校範囲の内容を応用させて考える問題に取り組んでみよう。このタイプの問題は問題文が長いことが多いため、並行して●要求2●を満たしていくこともできる。Z会の通信教育でも、さまざまなタイプの添削問題を通して、演習を積んでいく。

    演習を順調にこなしていけるようであれば、●要求3●もある程度は満たされていくであろう。自分の得意・不得意、問題の難易度などを意識し、解答時間内で得点を最大化できるような自分の解き方を身につけてほしい

    Z会で東大対策をしよう

    Z会東大化学担当者からのメッセージ

    今年の東大化学は、近年の傾向と同様、奇抜な題材はなく、東大受験生であれば見覚えのある題材が中心でした。ただし、問題の分量が2016年度以前の水準にほぼ戻り、また手間のかかる計算問題や難度の高い問題も含まれていたため、かつてのように「解かない問題を見抜く力」も必要なセットだったといえると思います。
    したがって、まずは標準的な問題を確実に正解したうえで、差がつく問題をできるだけ多く正解して、高得点をめざしたいところです。分量が多いので、解く問題に優先順位をつけ、試験時間内にすばやく処理する力が求められるでしょう。
    また、高校化学で扱わない内容について考察する問題も、また少しずつ出題されるようになってきています。日頃の演習や過去問演習をとおして、通り一遍の学習をするのではなく、「この現象はなぜ? この操作は何のために行っている?」ということを常に考えながら学習を進めていくとよいと思います。
    Z会の通信教育の東大対策講座では、このような盲点になりがちな箇所を突く出題をしていきます。東大受験を目指す方には、表面的な理解にとどまらない、本当の学力を身につけていただきたいと思います。

    合格から逆算した対策ができる
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