東大英語

「東大英語」2020年度個別試験分析

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

  • 分量:変化なし
  • 難易度:やや難化

2020年度入試の特記事項

  • 1(B):語補充ではなく、大問5にあるような語句整序形式の問題が出題された。
  • 2(A):昨年度よりも抽象的で難度の高い内容の英作文であった。
  • 2(B):一昨年度から引き続き和文英訳が出題された。
  • 4(A):2018年度に出題された語句整序形式ではなく、2017年度や昨年度と同様の正誤問題(「誤りを含む下線部を選ぶ」形式)が出題された。
  • 5:物語で英文自体は平易なものだったが、心情と状況の高度な読み取りが必要であった。

昨年度と大きな形式の変化はなく、求められる力も例年通りのものであったが、設問がやや難化し、基本的な単語と文法知識に加えより高度な読解力や記述力が求められた。

合否の分かれ目はここだ!

  • 例年通り、英語の発信力・受信力・批判的な思考力を試す問題がバランスよく出題された。
  • 大問別に見ると、1(A)、1(B)は引き続き取り組みやすい問題であった一方、2(A)、2(B)、4(B)、5は昨年度よりやや難化した。120分という限られた時間内でこれだけの問題をこなさなければいけないことを考えると、決して時間的余裕はなく、負担感の多い問題構成であることは例年と変わらない。取り組みやすい問題をできるだけスピーディーに処理し、負担感の大きい問題にかける時間を確保したい。
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大問別のポイント

 1(A)要約  

  • 「高齢者にやさしい町づくりを促進するための世界的な取り組み」に関する約380語の英文の要約問題。
  • 制限字数は昨年度と同様の70~80字。ただし、昨年とは異なり問題文に要約すべき内容についての指示はなかった。
  • 現代社会における話題を扱ったという点で昨年度より馴染みのある話題だっただろう。
  • 内容はパラグラフの展開に沿って明快なものであったが、解答には高齢者にやさしい町づくりの現実と理想の対比を盛り込みながら、最終的に実現のために必要な取り組みを欠かさないようにまとめる必要があった。

 1(B)長文読解(語句整序,文補充)  

  • 「都市に適応する生物の進化」について論じた英文。語数は補充する選択肢を含めて約940語。
  • パラグラフ展開はわかりやすかったため、話の流れは容易に把握できたであろう。
  • (ア)の語句整序の問題は1(B)の問題では初めて出題された形式であるが、これは大問5で同じ形式の問題が出題されている。語数は8語と多くはないので、andがplanesと何を結んでいるかを意識すれば容易に解けたであろう。
  • (イ)は昨年度同様の文補充の形式。選択肢の数は7つと昨年度から1つ減り、空所の数も5箇所と1箇所減っている。文補充の選択肢には指示語やディスコースマーカーなどの手がかりが多く、また今回は具体的な年数など流れが把握しやすいキーワードが空所の前後に書かれていることが多かったので、つながりを意識して取り組めば、正答にたどり着くのに困難はなかっただろう。
  • この問題の解答の見極めにかける時間が、全体の時間配分に大きな影響を与えやすいので、問題を解く順番や時間配分に特に気をつけておきたいところである。

 2(A)自由英作文  

  • 「私たちは言葉を操っているのか。それとも、言葉に操られているのか。」という人と言葉の関係について述べる自由英作文。
  • 解答の語数は昨年度と変わらず60~80語。ただし、昨年度より内容の抽象度が高かったため、戸惑った受験生も多いだろう。
  • どちらの立場で書くにせよ、論理的に説明ができるかどうか、またそれを伝わりやすい英語にできるかどうか、どちらの能力も問われる問題となっていた。

 2(B)和文英訳   

  • 昨年度に引き続き、下線部の日本語を英訳する問題。昨年度は具体的かつ平易な日本語だったが、今年度は内容が抽象的かつ著者の意図するところを汲む必要がある日本語であった。
  • 出典は、鶴見俊輔『アメリカ哲学』。
  • 「押し切って」、「まゆつばもの」、「寛容の態度を養う」など与えられた日本文をそのまま英訳するのではなく、文脈をしっかりと意識して訳出すべき表現が並んだ。
  • 使用できる単語や表現の幅を広げるための対策も続けていきたい。

 3(リスニング)  

  • (A)~(C)と中問が3つあるが、昨年度と同様、(A)と(B)は連続した内容で、(C)のみ独立した内容であった。
  • (A)はインタヴューで(B)はそれに続く会話、(C)は講義であった。
  • 昨年度同様、出題形式はすべて英問英答の選択式。問題数は各5問あり、選択肢はそれぞれ5つであった。昨年度(A)で出題されていたような空所補充の形式は出題されなかった。

(A)ある心理学者への「2つの育児方法」に関するインタヴュー

  • 昨年度と比較すると全体的に選択肢の英文が長かった。昨年度のような空所補充の形式の出題はなかった。
  • 内容一致や内容不一致だけでなく、「インタヴューで述べられていないもの」を選ぶ問題も出題された。
  • 2つの育児方法、つまり「carpenter」と「gardener」の違い、そして幼年時代の長期化が人の適応力にもたらす影響を聞き取れたかが鍵であった。

(B)(A)の内容に関連した「才能を育てる教育と順応力を育む教育」についての3人の会話

  • 昨年度出題されていた英文完成の形式の問題はなく、全て内容一致の問題であった。
  • 司会者以外の2人の、お互いの意見に対する考えを選択する問題が出題された。
  • 昨年度と同様に、司会者以外の発言者の意見の相違を汲み取る事が必要であった。

(C)講義

  • 「食糧難対策の作物栽培の試み」に関する講義。
  • 英文完成問題が1問、その他4問は内容一致問題であった。
  • 5問中3問の選択肢は1〜2語と短かったので、音声が流れる前に負担なく選択肢に目を通せただろう。
  • ここでも講義の内容から「あてはまらないもの」を選ぶ形式の問題が2題出題されている。この2題の選択肢の語句は全て英文中で読み上げられたため、正確に設問文を読み内容を聞き取る必要があった。

 4(A)正誤問題  

  • 「幻想的小説における木や森の重要性」に関する英文。昨年度に続いて正誤問題が出題された。語数は約520語と昨年度より少し減少している。
  • 昨年度同様、英文は5つの段落に分かれており、各段落にそれぞれ5つの下線が引かれている。
  • 誤りを含まない箇所にも、見慣れない単語や表現が含まれているため「正しい」と確信を持ちにくいが、問われている文法・語法のレベルは基本的なものもあったので、確かな文法・語法、イディオムや熟語の知識が必要である。また、その知識を用いて英文を正しく理解できているかも問われている。

 4(B)下線部和訳  

  • 「時間の経過によって人の性格がいかに変化するか」に関する約300語の英文。
  • 下線部は3つで、昨年度から変化なし。語数も昨年度とほぼ同じ。
  • (イ)下線部ではthat same poolが何を指すか明らかにしなければならなかったが、どこまで書くかの判断が難しかったかもしれない。
  • 全体として、文脈の把握や語彙自体は難しくないものの、文の構造を理解するのに手間がかかるものもあった。
  • (ア) everything from 〜 to friendship という構造がポイント。「友情に行く」とはならないので注意。
  • (イ) that same pool の指すものは第2パラグラフ前半の a part of the 1947 〜… in a【pool】of 70,805 children にまず注目、次に a smaller sample of 1,208 fourteen-year-olds とあり、これと「同じ集まり(= pool)」ということ。またof those found の of は「〜のうち」の意味であることに注意。
  • (ウ) コンマが多いのでどこで文を区切るかの把握が重要。most of them 〜以下の主節の構造に注意。

 5 長文読解(小説)  

  • 出典はアメリカのAmy Silverbergという女性作家の小説から。唐突に始まる父との奇妙な「かけ」で家を出ることになった娘の、揺れ動く心理を読み解く。
  • 英文は約890語。問題は選択式問題+記述式問題混合。語句整序問題も含まれていた。
  • 記述問では「場面に即して」「具体的に」という設問指示があった。英文には父親の言動の背景が書かれていないため、それに対する娘の心理を読み解くためにはかなりの読解力と想像力が必要とされた。また,空所補充問題は、登場人物についての描写を丁寧に拾って判断する必要があった。
  • 英文自体の難易度は高くないが、設問の難易度は高い。

攻略のためのアドバイス

東大英語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 「基本=易しい」と甘く見てはいけない。

難易度が高い語彙はあまり登場しないが、文脈の把握が難しい英文を題材にしたり、基本語の盲点となる用法を設問としたりすることがあり、基本事項の習得が疎かだと得点を伸ばすことができない

●要求2●高度なリスニング力を身に付けよう。

東大のリスニングは、放送時間が長いのに加え、聞き取り問題として扱うには高度な英文を題材にしたり、複数の放送の内容が関連していたりして、解答には高度なリスニング力が求められる。差がつきやすい問題の1つなので、対策には十分時間をかけておく必要がある。

●要求3●時間管理力を付けよう。

東大入試英語の最大の壁は、与えられた試験時間内に膨大な問題に適切に解答できるかどうかである。まずは時間を意識して問題を解くこと。大意要約や自由英作文など記述に時間がかかる問題も含まれているので、日ごろから答案作成→第三者による添削→添削内容の習得・答案改善のサイクルを築いて、質の高い答案を迅速に作成できるようになっておかなければならない。

対策の進め方

まずは基礎力の完成を目指すこと。文法事項を網羅的に習得した上で,さまざまな英文を正確に読めるようにしておこう。また、対策にあてた時間が得点に直結しやすい要約・自由英作文の記述対策にも早い段階から取り組んでおきたい。

基礎力が身に付いたことを実感できるようになったら、答案の精度を上げていく一方で、時間管理力をつけるために時間を計って演習し、自分の課題を確実に消化しておこう

最後に、自分で納得できる答案を試験時間内に書けるような時間配分を感覚として身に付けておいてほしい。試験本番は必要以上に時間をかけて問題に臨んでしまい、時間配分がうまくいかないこともある。ある程度余裕のある戦略を組み立てられるように、問題に十分慣れておくこと。過去問研究の差が明暗を分ける。

 

Z会で東大対策をしよう

Z会東大英語担当者からのメッセージ
  • 東大は大学のHPにて、「(高等学校段階までの学習で)その言語についての正確な知識に裏打ちされた論理的な思考力の養成に努めて」「ときにその言語の背景にある社会・文化への理解を要求する問題が出題される」と明言しています。東大英語の問題全体を見れば、このメッセージが含まれていることがわかりますね。
  • 1(B)は例年、「今年は何が出るのか」が気になる問題ですが、今年度は語句整序+文補充が出題されました。昨年度と同様に取り組みやすい問題であったので、ここで時短を図るのが時間配分のポイントだったと言えるでしょう。
  • 2(B)は今年度も引き続き和文英訳でした。取り組みやすい内容であるからこそ単語の使い方や文法面でのちょっとしたミスが得点に影響する出題なので、確実に点を取りたい1問です。英語の4技能化が叫ばれている昨今ですが、上でも述べた通り、正確な語句の知識と文法知識は最低限身に付けておきたいところです。
  • 東大英語は決して語彙・内容面で難しいものではありませんが、意味を理解しただけでは得点につながらない問題がほとんどです。つまり、解答を作成するための日本語・英語での記述力こそが最大のポイントとなります。Z会の「東大コース」では、東大の入試を分析し尽くした上で練り上げた良質な問題を出題。さまざまな出題形式に対応しているため、柔軟なアウトプット力を身に付けることができます。プロの添削者による個別の添削指導も受けられるので、実戦力が確実に上がります。Z会で問題演習を重ねて解答の質を高め、一緒に東大合格を勝ち取りましょう!

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