「東大日本史」2020年度個別試験分析

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (地歴…時間:2科目150分)

  • 例年、第1問-古代、第2問-中世、第3問-近世、第4問-近・現代というのが基本構成である。
  • 総字数は660字で、2019年度から微増したが、2016~2018年度と同字数である。
  • 小問数は7問で、2019年度から1問減った。
  • 小問の最小字数は60字、最大字数は150字であった。
  • 全体的な難易度は、2019年度からやや難化した。

2020年度入試の特記事項

  • 第2問で提示文に加えて図版が提示され、図からの読み取りが求められた。
  • 第1問〜第3問は従来の提示文型であり、第4問は史料の現代語訳が提示された。
  • 2019年度に出題が見られた、昭和戦後期の出題はなかった。

合否の分かれ目はここだ!

  • 第1問の設問Bや第2問は、設問要求や、提示文と設問要求の関係性を捉えるのに苦戦した受験生も少なくないだろう。「提示文を使い切ること」を念頭に起き、少しでも解答の要素を挙げられたかどうかが、差につながっただろう。
  • 第3問は、提示文の内容が基本的知識と結びつけやすく、設問要求に沿って解答をまとめるのは難しくない。ここで確実に高得点を取ることがカギになる。
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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  

A:8世紀の木簡と『千字文』『論語』(2行:60字)

  • 出土する8世紀の木簡に、『千字文』や『論語』の文章が多く見られる理由が問われた。
  • 『千字文』と『論語』が、それぞれ古代日本の律令国家において、どのように用いられたかを、提示文から読み取りたい。その上で、律令国家において官吏に求められる能力と関連付けて考えることが必要であった。

B:書の定着に律令国家・天皇家が果たした役割(4行:120字)

  • 「毛筆による書」と律令国家や天皇家の関係性という視点から、「唐を中心とした東アジアの中で,律令国家や天皇家が果たした役割」が問われた。
  • 解答の方針、盛り込むべき要素の判断に迷った受験生が多かっただろう。東大の第1問(古代)頻出テーマの律令国家と華夷思想(中華思想)を想起し、唐を中心とした文化圏の形成に関連付けることに気づければ、解答をうまくまとめられただろう。

 第2問  

山鉾巡行と町の自治(5行:150字)

  • 16世紀の京都における、山鉾の運営方法が町の自治に与えた影響が問われた。戦国時代における町の自治は教科書で扱われているが、「山鉾巡行から受けた影響」という視点に戸惑っただろう。
  • まずは、提示文から山鉾の運営を町が行っていることを読み取る。その上で、提示文と図1・2から読み取れることを盛り込みつつ、知識と合わせて解答をまとめたい。

 第3問  

A:改暦の際の江戸幕府と朝廷の役割(2行:60字)

  • 暦を改める際の、幕府と朝廷の役割を、両者を対比して述べることが求められた。
  • 提示文から読み取るべき要素の判断はつきやすい。但し、解答をまとめる際は、事実の羅列に終始せず、両者の対比が明確になるように注意を払いたい。

B:改暦の際に依拠した知識の推移と幕府の学問政策(3行:90字)

  • 江戸時代に暦を改める際に依拠した知識の推移が問われた。提示文から読み取った「推移」と、留意点として挙げられた「幕府の学問に対する政策とその影響」を結びつけて述べればよい。
  • 「改暦」というテーマに戸惑ったかもしれないが、問われているのは江戸時代の学問の動向への理解である。確実に解答したい。

 第4問  

A:陸軍将校に対する演説とその背景(3行:90字)

  • 1878年に行われた陸軍将校に対する演説をもとに、その主張の背景にある「政府の方針と社会の情勢」が問われた。
  • 史料は現代語訳されており、読み取りやすい。但し、「主張」そのものの説明が求められているわけではないことに注意しよう。
  • 1878年という時期から、漸次立憲政体樹立の詔や自由民権運動を想起したい。

B:軍人勅諭の政治的意図(3行:90字)

  • 1882年に軍人勅諭を出した「政府の意図」を、国内の政治状況を踏まえて述べることが求められた。
  • 前年の1881年には国会開設の勅諭が出されている。そのような中で、「世論に惑わず、政治に関わらず、ひたすら忠節を守」ることで、政府がどのような軍隊像を求めたかを考えればよい。

 攻略のためのアドバイス

東大日本史を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 全時代・全分野についての正確な知識・理解
当然だが、日本史についての知識・理解があることが問題を解く上での前提となる。学習の際には、歴史事項の正確な意味内容や、事項の流れに加えて、律令制や幕藩体制といった、各時代を考える際の本質的な事項の理解の両方を身につけることを心掛けよう。

●要求2●提示文・設問文の把握
東大日本史では、与えられた提示文や史・資料すべてをうまく活用すること、設問文の要求や意図を読み取ることが重要になる。東大型の問題演習を通じて、提示文を利用し、設問の趣旨にあった解答を作成する力をつけていこう。

●要求3● 要求された字数に応じて論をまとめる記述力
東大日本史で出題される字数は30字~180字と幅広い。そのため、設問の要求だけでなく、各設問で指定された字数に合わせて、情報を取捨選択し、論旨をまとめる高度な記述力が必要である。定期的な論述演習で、設問の要求を満たした論を作成する力を養っていこう。

Z会で東大対策をしよう

Z会東大日本史担当者からのメッセージ
  • 2020年度は、第3問・第4問は比較的取り組みやすい問題でしたが、第1問、第2問はやや難しい問題でした。難しい問題に対して、解答の方向性が見出せない時は、提示された文章や資料を読み直し、出題者の意図、つまり「何を答えさせたいのか」を考えてみることで打開できることもあります。
  • 東大日本史は特徴的な出題形式であり、一般的な論述問題の演習を積むだけでは対応しきれません。東大日本史の出題に慣れること、さらに頻出テーマについて理解を深めておくことが、合格への近道です。
  • Z会の通信教育 本科「東大コース 日本史」では、東大日本史を解けるようになるために取り組んでほしい問題や、東大日本史の出題形式や設問の傾向,頻出テーマを踏まえた問題を豊富に出題しています。Z会オリジナルの、東大日本史に即した問題演習を積み、個々の解答に応じた添削指導を受けることで、東大日本史への対応力を着実に養っていきましょう!

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