「東大物理」2020年度個別試験分析

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…時間:2科目150分)

  • 2019年度と同様に一部で穴埋め形式の出題があったが、基本は記述形式である。
  • 例年、力学、電磁気分野から各1題、その他の分野から1題(2020年度は熱力学、2019年度は波動、2018・2017年度は熱力学)の、計3題の出題。
  • グラフを選択させる問題が毎年のように出題されている。
  • 解答用紙は、1題当たり横35文字、縦25行程度の文字が書けるように罫線が入っている。

2020年度入試の特記事項

  • 2020年度は、2019年度に続いて穴埋め形式の設問が出題された。
  • 各大問の最後の設問は、通常は前問までの結果を利用する難度が高い設問であるが、2020年度の第1問、第2問は最後の設問だけ単独で解答可能な解きやすい設問であった。
  • 2019年度と比べて思考力を要する問題はやや減少し、難度はやや下がった。

合否の分かれ目はここだ!

  • 東大入試の対策をきちんと立ててきた人にとっては、手がつけられないような問題はなく、その中で自分にとって得意な分野、容易に解答できそうな設問を選んで手をつけていくのが得策である。2020年度は2019年度に比べれば取り組みやすく、上手に時間配分しながら得点を積み上げることが合否の秘訣であろう。
  • 比較的解きやすかったと思われるのは、第1問Ⅰ、Ⅱ(1)、Ⅲ、第2問Ⅰ(1)、(2)、Ⅱ、Ⅲ、第3問Ⅰ、Ⅱなどで、これらを確実に得点できたかどうかが合否の分かれ目になっただろう。
  • 全体では5.5割〜6割程度の得点を目指したい試験であった。第1問、第2問の最後は、前問ができなくても答えられる設問であったので、途中でつまずいても最後まであきらめずに解く姿勢が合格につながった可能性がある。
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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 第1問  力学・原子 [標準]
中心力が働く場合の運動、ボーアの量子条件

  • Ⅰは運動物体の面積速度の計算と面積速度が一定となる場合の条件式の導出。(1)は穴埋め形式で、上手に誘導に乗ればよい。(3)は問われ方に多少まごつくが、(2)の結果を踏まえて解答は容易。
  • Ⅱ(1)は単なる計算問題だが、(2)はKrが0になる場合でこのとき円運動になることを見抜けるかどうかで差がついたと思われる。
  • Ⅲはボーアの量子条件を暗黒物質に適用する問題だが、原子分野としての内容は基本的で、Ⅰ、Ⅱができない場合でも解答可能なので得点しておきたい。

 第2問  電磁気 [標準]
電磁誘導(磁場中に置かれた平行レール上を運動する導体棒)

  • 電磁誘導の典型問題だが、導体棒が終端速度に達するまでの過程の変化を理解できていたかどうかが問われた。Ⅰの前半は容易だが、後半はエネルギー的な考察で式変形を上手に行う必要があった。
  • ⅡはⅠの結果を利用して解ける。
  • Ⅲは回路の式と導体棒の運動方程式を立てれば問題ないが、Ⅱの結果をそのまま短絡的に用いて解答しないように注意したい。

 第3問  熱力学 [標準]
熱サイクル(ヒートポンプ)

  • 断熱、定圧過程を組み合わせた低熱源から高熱源に熱を移動させるヒートポンプの原理を考える問題。設定がやや煩雑だが、各状態での状態量の計算結果が与えられている。
  • Ⅰ、Ⅱは断熱過程では熱の流出入が0であること、定圧過程では仕事がすぐに求められることを踏まえて、熱力学の第1法則を用いればよい。Ⅱ(3)は2つの容器内の温度すなわち内部エネルギーが等しくなることから求められる。Ⅱでは解答に使う文字の指定に注意したい。
  • Ⅲ(1)はp-V図を選択する設問で、状態AとEでの温度の違いを考えればよい。(2)以降は、一連の過程での変化の状況がわかっていれば難しくない。

     攻略のためのアドバイス

    東大物理を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

    ●要求1● 読解力

     丁寧な説明や誘導が東大物理の特徴の一つ。現象や原理の説明が長い文章で示されることがある。長い文章の中には、解答のヒントが含まれているものである。したがって、東大物理の攻略には、限られた時間で文章から現象を正確に読み取る力が不可欠である。

    ●要求2● 現象を説明する力

     答案を作成するためには、問題文から読み取った現象を教科書レベルの原理、法則を用いて説明する力が必要である。まずは、基本事項の理解を深めることを目指そう。

    ●要求3●適切に記述する力

     東大物理では解答の自由度が高い解答用紙に、設問ごとに適切な解答を記述する必要がある。適切に解答する力は、答案を書く訓練を繰り返しながら身につけるしかない。

    対策の進め方

    まずは,●要求2●を満たすことを目指そう。独学が困難な物理は,授業を大事にしつつ、高校3年の夏までには、基礎事項を完成させたい。Z会の本『物理 解法の焦点』は、高校物理の全範囲について、教科書だけでは学べない実戦的な解法を身につけることができるので、早い時期から取り組むことをおすすめする。

    次の段階として、基本事項を東大レベルの問題に応用できる力を高めよう。そのためには、問題の意図を的確につかむこと、つまり、●要求1●を満たす必要がある。このためには、良質な問題を数多く解いておきたい。Z会の通信教育では、読解力を養うのに最適な良問を提供している。

    ここまでの学習が順調であれば、●要求3●もある程度は満たされているはずである。最後は、東大型の問題演習に取り組もう。即応した問題を解くことで、さらに数点の上乗せを期待できる

    Z会で東大対策をしよう

    Z会東大物理担当者からのメッセージ

    2020年度は、2018年から続いた難化傾向に歯止めがかかり、比較的解きやすい出題となりました。とはいえ、見慣れない設定で基本を正確に理解していないと、合格点に達することは難しく、時間内にすべてを解き切ることは困難です。あたりまえのことですが、できる設問を見極めて確実に得点できた人が合格できたと考えられます。

    また、例年は各大問とも前半部分は比較的易しめで最後の問題は難度の高い設問となっていますが、2020年度は第1問、第2問ともに最後の設問はそれ以前の設問に比較して解きやすく、前半でつまずいても解くことが可能でした。あきらめることなく最後まできちんと設問に目を通して解く姿勢があったかどうかで差がついたのではと思われます。

    東大物理の問題は、基礎的な理解を土台として考察できるように工夫された問題ですので、まずは基本事項に対する理解を深め、その上で理解した基本事項をどうつなげて問題を解くのかを、良質な問題を解くことで養成していきましょう。良質な問題は、基本の理解が不十分であったことを気づかせてくれるはずで、その気づきによってさらに問題への対応力も身についていきます。

    そのための演習問題として、東大の過去の出題傾向を十分に研究したZ会の通信教育、本科「東大コース」が非常に有効です。本科「東大コース」では、無理なくステップを踏みつつ、添削指導による記述力の養成を含めて、合格のための力を身につけることができるように構成されています。また、特講「過去問添削 東大」では、本番のシミュレーションとして実際の東大物理の問題を演習できます。演習を繰り返すことで、本番であわてることなく取り組んで、合格を勝ち取りましょう。

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