今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化 (地歴…時間:2科目150分)
- 大問3題の構成で、論述問題が中心。
- 第1問の論述字数は600字。2019年度の660字から、例年並の600字に戻った。
- 第2問の論述字数は480字。総論述字数としては1080字と、2019年度の990字からやや増加した。
- 第3問は例年通り単答集合であった。
- 全体的な難易度は例年並みといえる。
2020年度入試の特記事項
- 第1問では、3つの史料が提示され、解答に用いることが求められた。
- 第1問・第2問は近・現代史の比重が高く、第3問は古代~現代から幅広く出題された。
- モンゴル・チベット、オセアニアなど、学習が手薄になりやすい地域からの出題が見られた。一方で、ヨーロッパ史を扱う問題は少なかった。
合否の分かれ目はここだ!
- 第1問の大論述は、史料を用いて解答するという新しい傾向が見られたが、多少の傾向変化があっても解答に必要な力は変わらない。正確かつ多角的な知識はもちろんのこと、問題文・指定語句・史料から設問の要求を的確に読み取り、論旨が通った解答にまとめあげる論理的思考力・文章表現力が不可欠であった。
- 第2問の小論述集合は、学習が手薄になりやすい地域からの出題も見られ、教科書の全範囲の磐石な知識が求められた。
- 第3問の単答集合は、概ね易しい出題であったため、確実に得点すべきである。文化史からの出題が多く、抜け漏れなく学習している必要があった。
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大問別のポイント
第1問
- 15世紀頃から19世紀末までの、東アジアの伝統的な国際関係のあり方と近代におけるその変容について問われた。
- 指定語句が例年の8つから6つに減少した。一方で、史料が3つ提示され、解答内で事例として用いることが求められた。
- 史料を解答内で扱うことはさほど難しくない。但し、問題の主要求はあくまで東アジアの伝統的な国際関係のあり方とその変容である。史料の説明に終始してしまわないよう、解答の骨子を入念に組み立てる必要があった。
- 朝鮮とベトナムの事例を中心に説明するよう指定されているが、指定語句や史料から、琉球についても事例として盛り込むべきと判断できる。いずれの地域についても教科書的な知識で対応できるため、正確な記述を心掛けたい。
第2問
- 民族の対立や共存をテーマに出題された。単答問題の出題はなかった。
- いずれの小問も、設問の要求と制限字数のバランスを見極め、解答に盛り込む要素を取捨選択できるかが肝である。
- 論述字数が増加したが、各小問に時間をかけすぎずに手早く処理し、第1問に使える時間を十分に確保できるようにしたい。
- 問(1)-(a)、問(2)-(a)、問(3)-(b)は基本事項である。
- 問(1)-(b)ではモンゴルとチベット、問(2)-(b)ではオーストラリアと、学習が手薄になりやすい地域から出題された。
第3問
- 思想による人間・人間集団のあり方の変化をテーマに、オーソドックスな単答問題が10問出題された。
- 文化史からの出題が多かったものの、各小問の問題文は比較的読み取りやすく、取り組みやすい出題であった。
- 問(10)は、世界史としては珍しい出題だった。
攻略のためのアドバイス
東大世界史を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1● 第3問は磐石な知識力が必須!
ほとんどが基本的な知識に関する出題であるため、合格のためには9割以上の得点をめざしたい。但し、文化史や現代史など学習が手薄になりやすい範囲からの出題も見られるので、注意が必要である。
●要求2● 第2問は「正確な知識」「設問の要求に応じた記述」がポイント!
概ね基本的な内容から問われる一方で、知識が不正確だったり設問の要求を意識できていないと、大きく減点されてしまう。日頃から、知識の正確さや、年代や“意義”・“影響”などの設問の要求に正しく応えているかを意識して、端的に解答を作成する練習を積みたい。
●要求3● 第1問は「読解力」「論理的思考力」「文章表現力」を鍛えよ!
東大世界史第1問の攻略には、盤石な知識はもちろん、問題文から要求を読み取る「読解力」、解答を組み立てるための「論理的思考力」、600字でも筋の通った解答を作成する「文章表現力」が必要となる。こうした力は一朝一夕で身につくものではないので、早期から論述対策を始めよう。第三者に添削してもらうことにより、表現力を磨き、文法的にも正しい文章を書けるようにしておきたい。
Z会で東大対策をしよう
・2020年度の第1問のように、多少の出題傾向の変化があっても、論述問題で必要とされる力は変わりません。問題演習を通じて「読解力」「論理的思考力」「文章表現力」をしっかりと鍛えておきましょう。
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