早稲田大学政治経済学部の入試改革を語る(前編)_2019.2

2019年2月21日

カテゴリー : 大学受験

早稲田大学政治経済学部の入試改革を語る

早稲田大学政経学部は、2021年度入試より一般入試改革を行うと発表しました。また、世界を視野に入れた大学教育計画「Waseda Vision 150」を策定するなど、これからの大学教育の革新に取り組んでいます。そのねらいについて、前政治経済学部長であり、現在は早稲田大学副総長である須賀晃一先生にお話をうかがいました。

 

◆学部教育改革の次段階として、一般入試改革を行う

早稲田大学政治経済学部では、2021年度の一般入試から、従来の3教科型の学力試験を廃止し、大学入学共通テスト(外国語、国語、数学I・Aと選択科目1科目の計4科目、計100点)と、英語外部検定試験と学部独自試験(計100点)の計200点満点で選抜する方式に変更します。

早稲田大学政治経済学部 一般入試
2019年度入試
(1)外国語(90点)
(2)国語(70点)
(3)地歴または数学(70点)

 

2021年度入試より
1)大学入学共通テスト(計100点)
(1)外国語(25点)
(2)国語(25点)
(3)数学1・数学A(25点)
(4)選択科目~地理歴史・公民・数学・理科~(25点)
2)英語外部検定試験および学部独自試験(計100点)
英語外部検定試験の配点割合は2)の3割程度の予定

この一般入試改革の背景にあるのは、2000年ごろより段階を踏んで取り組んできた政治経済学部のカリキュラム改革です。今や、テロや環境問題をはじめとした地球規模で起こる問題は、政治学か経済学のどちらか一方の視点のみでなく、両方の視点からでないと分析・解決できないものになっています。また、多様な国々の人々と協力して解決にあたるには、外国語の習得も不可欠です。 そこで、これからの政治経済学部のあり方として、政治学と経済学で共通に使われる道具、すなわち、数学や統計学、ゲーム理論などを必修科目として学び、その上で、政治学と経済学の両方の視点や考え方を学ぶことのできるカリキュラムをつくるべく、2004年の国際政治経済学科の開設を皮切りにカリキュラム改革に取り組んできました。その改革が結実するのが、2019年です。政治学科、経済学科、国際政治学科の3学科でカリキュラムを1本化し、政治学と経済学の両方の領域を学べるようにした上で、学科ごとに専門科目の必要単位数を定めることで専門性を深めるという、我々が目指してきた体制が整いました。 また、外国語学習についても、外国語で専門分野を学ぶことのできる学生を育てるため、チューター教員1人と学生4人という環境で会話力の強化をはかる「Tutorial English」、英文エッセーを書く技術を磨く「Academic Writing and Discussion in English」の2つの必修科目や、英語以外の外国語でも専門分野を学ぶことのできる学生を育てる「外国語副専攻プログラム」の設置などを進め、2018年にようやくその目処が立ちました。 このようにして我々が育てていきたいのは、政治と経済の両方に興味を持ち、現代の諸問題の解決策をリーダーの立場でも、サポーターの立場でも、フォロワーの立場でも考えられるグローバルリーダーです。常に人の上に立つのではなく、得意分野ではリーダーとなってグループを引っ張り、他に適任者がいるときはサポートに回り、また、フォロワーとしてリーダーの期待に応える行動がとれる、つまり、適材適所を考え、自らの立場を認識して行動できる、まさに公共性を実現する人です。    

 

◆学力と英語4技能、そして問題意識のありかを測る入試に

このような意思を持ってカリキュラム改革を行いましたから、入試も、私たちが育てたい人に来てもらえるものにすることは必然でした。現状の文系3科目で受けられる試験の対策をしているだけでは、政治経済学部で学ぶ基礎は作られませんし、世の中の諸課題の解決にあたるグローバルリーダーにもなれません。例えば、経済の面から環境問題を分析するにも化学の知識が必要ですし、経済学そのものを学ぶにあたっても、経済学の理論には数学や物理学の概念を活用したものがたくさんあります。また、政治学においても、統計学を用いた分析手法が取り入れられています。 必要なのは、「文系」「理系」「国立大志望」「私立大志望」といった枠にとらわれず、高校で学ぶべきとされている科目はすべて、まんべんなく学ぶこと。そのメッセージを高校生のみなさんに受け取っていただくために、2021年度からの一般入試では、大学入学共通テストの外国語、国語、数学I・Aと選択科目1科目の計4科目を課すことにしました。 数学I・Aを必須としたのは、数学の論理は統計学やゲーム理論をはじめ、さまざまな論理の基礎となっているものだからです。その基礎の基礎として、数学I・Aの範囲は最低限理解し、忘れずにいてほしいと考えました。高校で一度習っただけで2年、3年とブランクがあいて大学入学後に学び直しても、取り戻すのは難しいというのが我々の実感です。 こうして大学で学ぶのに必要な基礎学力を大学入学共通テストで測り、さらに、大学入学共通テストでは測ることが難しい英語4技能を英語外部検定試験で、政治経済学部で学ぶことで発展が見込める問題意識を持っているかどうかを学部独自試験で測ります。 学部独自試験は、2018年8月にサンプル問題を公表したとおり、日本語と英語の文章を1つずつ読んで、設問に答える形式を予定しています。日本語では、政治ないし経済分野、あるいは両分野にまたがった問題を扱う新書レベルの文章を、英語では、統計データを利用して社会問題を考える文章などを想定しており、いずれも、大学入学後に読んでもらいたいレベルの文章です。これらの文章の内容を正確に理解し、自分なりの意見を書けるかどうかを測ります。 また、意見を記述してもらう問題では、その視点や考え方が政治経済学部のアドミッション・ポリシーに合うかどうかや、高校時代に広く学んだ結果生まれた問題意識が、政治経済学部で学ぶことで発展させられるものなのか、ということも見る予定です。

 

プロフィール 須賀 晃一(Koichi Suga) 厚生経済学を専門とし、社会選択理論における権利の研究、所有権制度の経済分析等の研究を行う。2018年に早稲田大学政治経済学部長を退任し、早稲田大学副総長に就任。 早稲田大学HPはこちら

 

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