農業や社業をも変える「プログラミング」で本当に必要なこととは?_2016.11

2016年11月10日

カテゴリー : 教育情報全般

農業や社業をも変える「プログラミング」で本当に必要なこととは?

Z会ではアメリカのMake School社と共同でプログラミングスクールを開催しています。2016年10月末にMake School社の共同創業者でCEOのJeremy Rossmann(ジェレミ-・ロスマン)氏が来日し、高校生を中心に講演を行いました。Jeremyが伝えた「プログラミングに必要なこと」について、ご紹介します。

 

◆App Storeが世界を変えた

「作ったプログラムをほかの人にも使ってもらいたいと思ったら、お店と交渉し、パッケージを作って、アプリをCD ──あるいはフロッピーディスク── にコピーをし、やっと店頭に並ぶ。とても大変なことで、中高生がやろうと思ってもできることではありません。大企業のみができることでした。」

これはJeremyのお父様が若い頃のお話。といっても、せいぜい30年ほど前のことです。ところが今は、App StoreやGoogle Playを利用すれば「クリック一つで」アプリが公開できてしまいます。中高生が、ある意味では大企業と同じ土俵に立つことができるようになったのです。

私たちが住む世界は大きく変わってきています。この劇的な変化の引き金となったものの一つに、「インターネット」に関わる料金が下がってきたことが挙げられます。インターネットの接続料が高ければiPhoneもこれほどに普及をせず、App Storeのような仕組みもうまくいかなかったことでしょう(インターネットが登場したばかりの頃は、接続料は数万円~数十万円もしました)。安価にインターネットに接続できる人が増えたからこそ、アプリを使う人の数も増え、FacebookやInstagramなどのネット上のサービスも利用者を増やしています。

そして、「本格的なウェブサイトを安価に作れるようになった」ことも見逃せません。ウェブサイトを作りたい、それも「zkai.co.jp」のように、自分だけの「ドメイン」を使ったアドレスにしたいと思っても、かつてはとてもお金のかかることでした。それが今では、中高生でも何とか手の届く価格になっています。企業が多くの人手とお金をかけて作っていたネット上のサービスも、今ではアイディア次第では中高生にもそれらに匹敵するものが作れるようになったのです。

また、こうして「インターネット」が普及したことも、新たな変化を生む要因となっています。10年ほど前までであれば、「数学」がインターネットを改善するためのツールでした。たとえば「Googleの検索速度をあげたい!」と思えば、数学的な知識を用いて解決していたのです。

しかし今では、技術的な問題以上に「使う人」のことを考えることが求められています。「人工知能」や「機械学習」によって、それぞれの人に応じたページを表示したり、それぞれの人に応じた情報を提供したりすることができるようになってきました。「技術そのもの」ではなく「技術をどのように使うのか」にも関心は移ってきているのです。

 

◆まったく想像もつかないモノ

「たった1台のノートパソコンで、これまでよりも素晴らしく、もっと大きな、まったく想像もつかないモノが作れるような時代です。」

インターネットが「一部の人たちのもの」から「インフラ」(社会基盤)になったことにより、今後は、これまでにあったアプリやインターネット上のサービスとは質の違うものが開発されていくはずです。例えば、「農業とインターネット」の結びつきを、これまでに誰が考えたでしょうか。現にアメリカでは農業用のアプリが開発され、利用されています。我々が農作物を購入すれば、農家に渡ったその代金の一部がこうしたソフトウェアの料金としてソフトウェア会社に入ってきます。ありとあらゆる場面で「アプリ」が使われることで、プログラマーの活躍の場は広がっています。

どの生徒も熱心に、Jeremy Rossmann 氏の講演を聴いていた。

◆New York Timesはもはや「テックカンパニー(技術の会社)」

「アメリカで最も有名な新聞である『ニューヨーク・タイムズ』のウェブサイトにアクセスしてみましょう。どんな求人があるかを見ると、ジャーナリストよりもはるかに多くの技術者の採用があることがわかります。」

「ニューヨーク・タイムズ」社のサイトにある同社の求人を見ると、さまざまな職種で募集がなされていますが、その中でも”technology”分野では40件もの募集があります。Androidのエンジニアだったり、ソフトウェアエンジニアだったり……。経理部門や人事部門などさまざまな仕事がある中で、群を抜いて「技術」に関する募集が多いのが現実です。「新聞」というこれまでの枠組みから、「インターネット上での情報提供」という新しい枠組みへと転換していることの現れともいえるでしょう。「どうしてもニューヨーク・タイムズで仕事がしたい!」と思ったら、ジャーナリストではなく、技術者として採用されるようスキルを磨くことが近道かもしれません。

このような「枠組みの転換」を図っているのはニューヨーク・タイムズだけではありません。アメリカのみならず日本でも、多くの会社が「ICT(情報コミュニケーション技術)」を活用するような枠組みを模索しています。今後、「コンピュータ」に関する技術がますます重要となってくることに疑いの余地はありません。Jeremyは「プログラミングは『スーパーパワー』(特別な力)だ!」とよく口にします。社会のあらゆるものに関わり得る「プログラミング」はまさに「スーパーパワー」なのでしょう。

 

◆どのようなプロダクトであれ、使うのは「人」

「農業のことを理解しているプログラマーが少ないからこそ、これまで農業用のアプリが出てくることはありませんでした。そのような例は多く、例えば女性のことを理解しているプログラマーもまた、決して多くはないのです。」

アメリカのMake School Summer Academyの修了生で、化粧品を選ぶサポートをするアプリを開発した方がいます。公開して以降口コミでダウンロード数はどんどん増え、あっという間に人気のアプリになったそうです。このアプリの開発者は、高校を卒業したばかりの19歳の女性でした。なぜ彼女のアプリがこれほどまでに支持を集めたのでしょうか。Jeremyは「女性目線でアプリを開発してきた人が少なかった」ことを要因の一つに挙げています。

そのアプリは「リップの色を選ぶとオンラインで購入できるリップの一覧が表示され、詳細を見て気に入ったらその場で注文が可能」というもので、決して多機能ではありません。しかし作成者自身が本当に必要と思った機能だけが搭載されており、だからこそ多くの共感を呼んだのではないでしょうか。そして彼女は今、有名化粧品メーカーからも「アプリ内でウチの化粧品を売って欲しい」との申し出を受けているそうです。「使う人のこと」を真剣に考えてきたからこそのことでしょう。アプリづくりには、技術だけではなく「人間を理解すること」が欠かせないことの一例です。

「プログラミング」というと、向かい合う相手はコンピュータというイメージを持ってしまいがちです。しかし忘れてはいけません。プログラムを作るのも人であり、使うのも人であるということを。プログラムを作る人には「情熱」が必要です。それと同時に使う人を思いやる「心」も必要なのです。

まだまだ紹介しきれないほどたくさんの言葉を残していったJeremyは、「11月にも日本に行きたいね」と言っていました。講演会を実施する際にはZ会×Make Schoolのサイトにてお伝えしますので、興味のある方はぜひご参加ください!

 

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