変わりゆく「学力の評価指標」と、新しい時代に対応するための学び方_2016.3

2016年3月17日

カテゴリー : 教育情報全般

変わりゆく「学力の評価指標」と、新しい時代に対応するための学び方

Z会特別講演会「学びが変わる×未来を変える」@日本科学未来館 実施レポート(後編)

2016年2月20日・21日にZ会が実施した特別講演会「学びが変わる×未来を変える」の実施レポート。後編は、大学入試改革に見られる学力の評価指標の変化と、これからの時代に対応するための学び方について、講師を務められた静岡大学准教授 益川弘如先生の講演内容の一部を紹介します。

 

◆これからは、21世紀型スキルを測る入試が増えていく

「創造性とイノベーション」など、21世紀を生きていく上で必要な「21世紀型スキル」をグループワークで紹介しましたが、大学入試でも、このようなスキルを測定しようという動きが出ています。

例えば、お茶の水女子大学が2016年度より実施する新AO入試「新フンボルト入試」は、第一次選考は2日間、第二次選考は3日間かけて、英語での模擬授 業を受けてのレポート作成(文理共通)、大学図書館を利用しながらの課題レポート作成(文系)、グループ実験(理系)などを行います。これらを通して受験 生を多面的に見て、のびしろ(ポテンシャル)のある学生を選抜するのがねらいです。

他大学でも、より簡易な形での実施や、ペーパーテストでもこれからの社会で生きていくために必要な力を測ろうとする試みが始まっています。こうした動きや世界の動向、研究成果を見ると、これからの新しい大学入試で出題される問題は、次の3パターンに分類できるでしょう。

1.知識活用を問う設問
現実世界で解決しなければならない課題の解決策を、これまで学んだ知識を適用して答えられるかどうかをはかる問題です。例えば、「エネルギー不足を解消す るために発電所を作ります。あなたなら、どの場所にどんな発電所を建てますか?また、建設予定地の住民とどう解決を見出しますか?」など。この課題の場 合、理科、社会、政治など幅広い教科の知識が必要でしょう。

2.思考判断を問う設問
課題解決のために必要な情報を、与えられた複数の資料から抽出できるかどうかをはかる問題です。「課題を解決するためにインターネットで検索したところ、 このような情報が出てきました。あなたはこの中からどの情報を組み合わせて課題解決に使いますか?」などの問いがこれにあたります。

3.知識創造を問う設問
複数の情報を組み合わせて自分なりの解決策を提示できるかどうかをはかる問題です。「今得た新しい情報・資料も組み合わせて、どういう解決策をとればいいか考えて書いてください」などの問いがこれにあたります。

なぜこのように評価方法が変わってきているか改めて整理すると、これまで重視されてはいなかった2つの力を評価する必要性が出てきているからです。一つめ は、「将来も新しい知識を学び続けることのできる力」。技術や科学の革新によって知識が爆発的に増え続けている現在においては、学校卒業後も新しい知識を 覚えて、活用していく必要があるからです。二つめは、「生涯に渡って知識を組み合わせて課題解決できる力」。これは、答えが簡単に見つからない課題が増え てきていることが背景にあります。

 

◆21世紀型スキルは、各教科を学ぶ際に使うことで磨かれる

学校教育においては、各教科の中身を学ぶ際に21世紀型スキルを使いながら学ぶことで、社会に出たときにもこれらのスキルを発揮できると言われています。だからこそ、今回グループワークの際に用いた「知識構成型ジグソー法」のような学習法が学校の授業に取り入れられてきているのです。

実際、海外の研究グループが行った調査によると、数学の公式を教わってからグループで演習問題を解いて定着していく方法で学んだ生徒たちと、グループで先に演習問題を解くチャレンジをしてから公式を教わる方法で学んだ生徒たちに対して3週間後にテストを行い、正答率を比較したところ、学習内容を直接問うテストの正答率には大きな差はありませんでしたが、過去の学習内容を組み合わせて考えなければ解けないテストでは、後者の正答率が前者の2倍以上になったことも報告されています。

これらをふまえて、最後に、子どもの学びを引き出すため保護者の方々に意識していただきたい3つの役割をお伝えします。

1.「わからない」を大切に
物事に対する「わからない」という気持ちから知りたいことが生まれ、その先の「わかる」や、次の学びにつながります。わかる、わからないを行き来するような追求を見守り、支えてあげてください。中身について対話せずに「わからないことはダメなことだ」「しっかりわかるようになりなさい」などと形式的な指導をすると、子どもは悩み考える「わからない」という姿を見せないようにしようとし、「保護者から言われた範囲をきれいに言えることが大事」という姿勢をとってしまいます。保護者の方が学習内容について子どもと一緒に対話し、疑問や問いを生む支援をすることが大切です。

2.表面的理解より概念的理解を大切に
教科書どおりに言えることが大切なのではなく、その子なりの言葉で言えることが大切です。そのことが、きちんと自分の考えと関連付けていることになり、中身がわかっていることの証になります。「どうしてそうなるのかな?」など、理解を重視するような声掛けが大事です。

3.学習内容と現実社会を意識的につなげるように
「穴埋め問題が解ければいい」ではなく、大事なのは、解けた中身の意味を具体的な事象と関連付けて考えさせること。それが自分の考えと関連付けていくことにつながります。そのためには、現実社会の様々なトピックと結びつけながら考えていくような問題にたくさんチャレンジしていくことが大切です。

 

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