物理 – 共通テスト(2021年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2022年1月15日

Z会の大学受験生向け講座の物理担当者が、2021年度の共通テスト(第1日程)を分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。

 

共通テスト「物理」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量・問題構成などを整理し、難度(センター試験や試行調査と比較してどう変化したか)を解説します。
試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点

全体の傾向

難易度は2018年度試行調査や2020年度センター試験に比べて上昇し、分量も増加した。典型的な問題は少なかったため、受験生の負担感は増加しただろう。解答する際は時間配分に注意したい。 大問3Aではダイヤモンドとガラスの入射角のグラフを正しく活用した上で、「部分反射」という聞き慣れない現象について考える、共通テストらしい問題が出題された。また、大問3Bでは水銀原子が励起状態になったときの、全体の運動量や運動エネルギーの和について考える、難易度の高い問題が出題された。 大問4では会話文の問題が出題された。運動量保存則やエネルギー保存則について、式を立てて値を求めるだけでなく、現象を正しく理解しているかどうかが問われた。  

物理の「カギとなる問題」は?

次に、物理で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。
第1問

問5の難易度が比較的高かった。等温変化と断熱変化のグラフの判別はできた人が多かったと考えられるが、L等温とL断熱の大小を比較するのにグラフをどのように活用するべきか戸惑った人もいただろう。ポイントは、等温変化と断熱変化のグラフの交点(状態(a)にあたる)より低い圧力においてV軸に平行な直線を引き、それぞれのグラフとの交点から、どちらの方が体積が大きくなるかを考えることである。

第2問

問6の難易度が比較的高かった。導体棒aは速度がv0から徐々に下がり、導体棒bは速度が0から徐々に上がり、やがて等しい速度になることまではわかった人が多かっただろう。2本の導体棒からなる系について、問5をヒントとして、それぞれの導体棒にはたらく力の水平成分は内力で、運動量保存則が成り立つことを見抜けるかどうかがポイントであった。

第3問

問3の難易度が比較的高かった。ダイヤモンドとガラスの入射角のグラフを用い、全反射か部分反射かを判断する問題であるが、見慣れないグラフに戸惑ってしまった人が多かっただろう。また、問5、問6も難易度が高い。水銀と電子は外力は受けていないので運動量は保存されるが、過程(b)では水銀原子が励起するためにエネルギーが必要なので、運動エネルギーの和は減少することを見抜けたかどうかがポイントである。

第4問

第1問から第3問に比べれば標準的な難易度であったが、問4が比較的難しい。ボールが衝突した後の速さによって弾性衝突か否かが決まるので、そりが水平方向に移動しなかったからといって弾性衝突であるとは断定できない。 「Z会の共通テスト対策講座」についてはこちら  

大問別ポイント/設問形式別ポイント(2/11更新)

次に、物理の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:小問集合  [標準] ・小問集合は力学2問、電磁気1問、波動1問、熱力学1問の5問が出題された。問5の難易度が高かった。 ・問1は水面がどちら向きに傾くかで迷った人がいただろう。 ・問2、問3は易しい問題であり、確実に得点したい。 ・問4はドップラー効果を定性的に考えられたかどうかが時間を節約するポイントであった。 ・問5は与えられたグラフをどのように活用すればよいか戸惑った人が多かっただろう。熱力学の問題ではp-Vグラフを上手に活用することで、問題の見通しが良くなることが多いので、積極的に活用したい。


第2問A:抵抗、コンデンサーを用いた直流回路  [標準] ・第2問Aは比較的典型的な問題である。計算ミスに気をつけて確実に得点したい。 ・問3は「電流はスイッチを入れた直後の値を保持した」という文から、コンデンサーが接続されている部分には電流が流れないことを見抜き、ブリッジ回路の考え方で解答できたかどうかがポイントである。キルヒホッフの第2法則を適用すると計算量が多くなるので注意が必要である。


第2問B:金属レール上の導体棒の運動  [やや難] ・問4は基本的な問題である。導体棒にはたらく力を正しく理解できていたかどうか、導体棒と金属レールからなる回路の抵抗値を正しく求められたかどうかがポイントである。 ・問5では2つの導体棒の長さ、流れる電流、外部の磁束密度の値が同じなので、はたらく力の大きさも同じであることがわかる。また、回路を貫く磁束密度を一定に保つために、導体棒にはたらく力は回路の面積を小さくする方向にはたらくことがわかったか(レンツの法則の力学的な解釈がわかっているかどうか)がポイントである。 ・問6は第2問Bの中で最も難易度が高い。問5をヒントとして、運動量保存則を用いて導体棒の最終的な速度を求められたかどうかがポイントである。


第3問A:ダイヤモンドが明るく輝く理由  [やや難] ・問1、問2は光の屈折についての基本的な理解を問う問題であり、確実に得点したい。 ・問3はダイヤモンドとガラスの入射角のグラフを用いて、全反射か部分反射かを判断する難易度の高い問題。ただ、ダイヤモンドは屈折率が大きく、光が全反射をするために輝いて見えることについては、知っている人も一定数いただろう。


第3問B:蛍光灯が光る原理  [やや難] ・問4は電子が電圧によって加速されることで得る運動エネルギーを問う問題。典型的な問題なので確実に得点したい。 ・問5、問6は難易度が高い。問5は外力ははたらいていないので運動量は保存されること、問6は過程⒝では水銀原子が励起するためにエネルギーが必要なので、運動エネルギーの和は減少することを見抜けたかどうかがポイントである。


第4問:ボールとそりの運動  [標準] ・問1は放物運動の対称性から考えるとわかりやすい。易しい問題なので確実に得点したい。 ・問2はボールとそりについて、水平方向の運動量保存則を考えればよい。 ・問3はボールとそりが完全非弾性衝突をしていることがわかれば、すぐに解答できる。 ・問4はやや難しかったが、ボールが衝突した後の速さによって弾性衝突か否かが決まることに気づけたかどうかがポイントである。


攻略へのアドバイス(2/11更新)

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。物理で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。
知識や公式の抜け・漏れをなくし、典型問題を確実に解答できる力を身につける

共通テストは思考力が問われる問題が多いが、それ以前に考える材料となる知識や使うべき公式を正しく身につけていなければ太刀打ちできない。まずは典型問題の演習を通して、知識を定着させ、公式をすぐに使用できる状態にしておくことが最優先である。

図を用いて定性的に考える訓練や、グラフから必要な情報を読み取る訓練をする

図を用いて定性的に考える訓練をすることや、グラフから必要な情報を読み取る訓練をすることが重要である。例えば、第1問の問1は慣性力と重力の合力を描くことで、「あたかも左下向きに見かけの重力がはたらいている」という見方をすることができる。また、第1問の問5は普段からp-Vグラフを描いていた人は取り組みやすかっただろう。 さらに、学校で行われる実験も、ただ教科書の結果と一致することを確かめるだけでなく、「誤差が生じた原因はなぜか」「実験結果から新しい仮説が考えられないか」などについて先生や友人と議論をすることで、グラフを上手に活用する練習をすることを心がけてほしい。

様々な物理現象を言葉を用いて定性的に説明する訓練をする

共通テストでは会話文の問題や定性的な理解を問う問題が出題されるが、普段から物理現象を言葉を用いて説明する訓練をすることが重要である。今回は第4問の問4で会話文の問題が出題されたが、物理現象についての様々な疑問に対して自分の言葉で説明をする訓練をしたり、先生に自分の認識の誤りを指摘されたりといった過程をたどることで、物理現象に対する理解をより深めることができる。  

高3生向け Z会の共通テスト対策講座

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