地理B – 共通テスト(2023年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2023年2月1日

Z会の大学受験生向け講座の地理担当者が、2023年度の共通テストを分析。出題内容やカギとなる問題の攻略ポイントなどを「速報」として解説します。 

 

共通テスト「地理B」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


おもな注目ポイント

●大問数は5題、小問数は30、解答数は31で、2022年度共通テストと同数であった。

●2022年度共通テスト同様、すべての問題で資料が使用されている。資料の種類は、統計グラフ・統計表・地図・地形図・写真など多岐にわたり、複数の資料が提示された問題も多かった

●2022年度共通テスト同様、地図や経年変化を読み取る資料が多く使用された。

●大問ごとの出題テーマは、自然環境と自然災害、資源と産業、人口と都市、地誌、地域調査と、2022年度共通テストとほぼ同じであった。但し、第4問の地誌はインドと中国の2カ国を扱った大問であった。

●出題形式は、全問題の約6割に当たる18問が組合せ形式の問題であった。また、5択の単答問題が出題された。2022年度共通テストで出題された三文正誤の8択問題は出題されなかった

●2022年度共通テストに比べ、題意をつかみにくい問題や判断がつきにくい設問・資料は少なかった。しかし、資料の多さや組合せ形式の問題が多いことから、解答には時間がかかる。全体の難易度は昨年並といえる。


地理Bの「カギとなる問題」は?

次に、地理Bで「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問問1

「時間スケールと空間スケール」から気候・気象現象を判定する問題である。目新しい資料ではあるが、それぞれの発生期間から判定は容易である。


第2問問5

フランスとポルトガルのEU域外への輸送手段別の輸出額と輸出量の判定問題である。本問は、2021年度共通テストで初めて出題された形式の問題で、連続して出題されている。本問は、両国の位置関係や輸出品の特徴も含めて考えるなど、資料の慎重な読解が求められた


第3問問5

日本の「従属人口指数」の将来予測を含む推移を示したグラフを判定する問題である。まずは「従属人口指数」の意味を正しく理解することが必要である。


第4問問2

インドと中国の米と小麦の生産に関する問題である。インドと中国の米と小麦の生産地の分布は基本事項である。それらの分布とグループの設定基準を結びつけることができるかがカギである。


第5問問1

地図の読み取りに絡んだ空欄補充問題である。2地点間の標高差については、勾配の求め方を知っていれば容易に解けるが、距離の単位を誤って、計算ミスをすることがないように注意したい。


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大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、地理の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:世界の自然環境や自然災害 [標準]

・問1:「時間スケールと空間スケール」から気候・気象現象を判定する問題である。モンスーンは季節によって風向が異なる卓越風であることから、数カ月の事象であることを判別したい。
・問3:月別・時間別による気温分布の等値線図の判別問題で、Cs・Dw・H気候区における気温の日較差・年較差の特徴の違いを見極めることが求められた。雨温図・ハイサーグラフではない気候グラフであっても読解ができるよう、地図帳・資料集などで各気候区の特徴や分布を確認することが大切である。
・問5:図中の陸地と海洋の位置を確認し、沈み込み帯である海溝の位置や兵庫県南部地震などの直下型地震の発生場所から、地震の震源分布を結びつけることができるかがカギであった。震源の「東西方向の位置と深度」の図に戸惑った受験生も多かったと思われる。
・問6:模式図から短時間の豪雨の降水量と河川の水位の変化を丁寧に読み取り、都市型水害と地表の人工改変の関係を考える問題である。


第2問:資源と産業 [標準]

・問2:東アジアの農業は労働集約的であることから、「1ha当たりの穀物収量」が高くなること、東アジアの稲作は灌漑で行われていることから、「耕作地に占める灌漑面積の割合」が高くなることを想起し、資料を判定したい。
・問4:センター試験から頻出の3枚の分布図の組合せ問題である。本問では、生産量ではなく「生産量に占める輸出量の割合」を示した図であることに注意したい。タイの鶏肉生産、モンゴルの羊肉生産などに着目するとよい。
・問5:本問は、縦軸・横軸をそれぞれ「○○または××」の形で示し、4つの資料を並べた問題である。イベリア半島に位置し、接する国はスペインのみのポルトガルは、大陸側に位置するフランスに比べて海上輸送の割合が大きくなり、また、航空貨物は付加価値が高く高額であることを理解していれば正答にたどり着ける。


第3問:日本の人口や都市をめぐる問題 [標準]

大都市圏と鹿児島県について、人口・都市の違いや変化に関する探究学習をもとにしたストーリー性のある出題であった。

・問1:九州地方と四国地方から三大都市圏への人口移動に関する問題である。位置的に九州地方より四国地方の方が大阪圏と繋がりがあることに気づけるかがカギとなる。
・問2:東京都区部の「住宅地の平均地価」はバブル経済期に高騰し、「工業地区の面積」は産業の空洞化で工場は地方や海外に移転し減少している。1970年代以降の日本経済に関する基本的な知識が必要であった。
・問5:日本の「従属人口指数」の将来予測を含む推移を示したグラフを判定するに当たって、最近の日本の年少人口が約10%、生産年齢人口が約60%、老年人口が約30%であること、日本は4カ国の中で最も老年人口比率が高いことを想起したい。


第4問:インド・中国地誌 [標準]

・問2:米の二期作が行われている華南を含むbは米の割合が高くなり、小麦栽培が中心の華北を含むcは小麦の割合が高くなるなど、特徴的な分布を示すところから判別したい。
・問5:1995年と2019年のインド・中国・オーストラリア3国間の輸出額・移民の送出数に関する問題である。オーストラリアの最大輸出相手国は中国であり、オーストラリアは移民受入国であるという基本知識をもとに、グラフを丁寧に読み取りたい。
・問6:中国の大都市部でPM2.5の濃度が高いことに着目すると、Sが1月の地図であることが判定できる。


第5問:地域調査(利根川下流域) [やや易]

対象地域は目新しいが、全体を見れば、複雑な資料は少なく、常識で解ける問題も含む、比較的取り組みやすい地域調査の大問であった。

・問1:地図の読み取りに絡んだ空欄補充問題である。地図を丁寧に読み取れば、B・Cの河川は利根川(本流)に合流するが、Aの河川は東京湾に注ぐことがわかる。
・問3:新旧地形図の比較を含む空欄補充問題である。地形図の読図は頻出なので、基本的な読図の演習は行っておきたい。
・問6:「探究課題について適当な調査方法を考える」という共通テストらしい問題である。調査方法により得られる結果が探究課題に結びつくかを慎重に判定したい。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。地理で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

早めの基礎知識の定着をめざす

共通テストでは、従来のセンター試験と同様、高校地理の幅広い分野からの出題が見られる。高3の夏休みの終わりまでに高校地理の学習範囲を終えたい。単純な知識問題は出題されない傾向にあるが、教科書の本文で太字となっている用語や地名は最低限押さえるようにしよう。秋以降は、共通テスト独特の出題形式に慣れるため、模試形式の演習に多く取り組み、資料読解力を鍛えるよう心掛けたい。


日頃から資料に目を通す

土台となる知識量や地図・統計図表といった資料の読み取りが中心である点は、センター試験から変化がないが、共通テストでは扱われている資料はセンター試験より多く、多様になっており、資料の読解が複雑化している。

さらに、グラフの指標だけでなく凡例についても答える問題や、地図で具体的な場所が示されない問題、複数の資料から経年変化を読み取らせる問題など、事前の資料学習の成果が発揮される出題が見られる。授業や演習で登場した地名・地域や内容について、日頃から地図帳や資料集で位置や範囲を確認し、分布や数値の特徴をつかむ習慣をつけるとよいだろう。


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