化学 – 共通テスト(2021年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2022年1月15日

Z会の大学受験生向け講座の化学担当者が、2021年度の共通テスト(第1日程)を分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。

共通テスト「化学」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量・問題構成などを整理し、難度(センター試験や試行調査と比較してどう変化したか)を解説します。
試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点

全体の傾向

●マーク数は実質28と、試行調査よりやや減少したが、個別試験レベルの難易度の問題や、計算量が多い問題が見られ、時間のやりくりに苦労するセットであった。負担感は試行調査より大きかったと考えられる。 ●一部に、センター試験では見られなかった出題形式の問題が出題されたが、試行調査で見られたような目新しい出題形式の多くは鳴りを潜め、センター試験の形式を踏襲した出題が中心であった。 ●試行調査では、比較的長めのリード文がついた大問形式もしくは中問形式の問題が中心であったが、本試では小問集合形式が中心であった。 ●グラフ描画をともなう問題、数値を桁ごとに解答する問題が各1問ずつ出題された。前問連動型の問題、実験レポートを題材とした問題は、出題されなかった。

Z会の「共通テスト予想問題パック」が設問内容・図ともに的中! 【本試第2問 問3】

aは水の相図と結びつけ、氷を昇華させるプロセスについて考える問題、bは氷の昇華熱と水素結合のエネルギーの関係を問う問題であった。いずれも知識の暗記だけでは対応できず、問題文の状況を理解し考察する力が求められる難度が高めの問題だが、「共通テスト予想問題パック」に取り組んでいれば自信をもって正解できたであろう

化学の「カギとなる問題」は?

次に、化学で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。
第3問 問3

見慣れない実験について、説明文を読み解き、解答していく問題。aは平易であるが、b、cと進むにつれ、実験で起きている反応を正確に理解しているかどうかが試されるようになる。見た目のわりに複雑であり、量関係を把握するための難度が高い

第5問 問2

グルコースの溶液内平衡、物質量の時間変化など、複数の知識や、問題文で与えられている情報を組み合わせて考える必要がある問題である。グルコースをメタノールと反応させることで、α-グルコース、鎖状構造のグルコース、β-グルコースの間に成立していた平衡が阻害されることを見抜けるかどうかがポイント。

<化学担当者より> 上記2問は、個別試験で出題されても違和感のない問題である。この他にも、これまでのセンター試験を凌駕するレベルの問題が見られた。

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大問別ポイント/設問形式別ポイント(2/11更新)

次に、化学の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:理論  [標準] ・問1〜問3は、平易〜標準的な問題であった。問3は近年見られなかった正誤の組合せ8択問題であった。 ・問4は、a、bに分かれており、いずれも蒸気圧に関する問題であるが、互いに独立した問題である。aは、数値を桁ごとに解答する形式で、共通テストで新たに導入された形式であったが、内容は標準的であった。bはグラフの概形を見積もる問題であり、数値計算が必要であるが、概数計算などで時間短縮をはかる必要があるだろう。処理能力が求められる問題であった。


第2問:理論  [標準] ・問1は、光が関係する反応に関する問題であったが、比較的平易であった。 ・問2は電池に関する計算問題である。電池の質量増加の要因を見抜けるかどうかがポイント。数段階の計算が必要であるが、値が煩雑にならないように配慮されており、理系受験生であれば正解したい問題である。 ・問3は水を題材とした問題で、状態変化や反応熱に関する内容が中心である。aは、水の相図と結びつけ、氷を昇華させるプロセスについて考える問題、bは氷の昇華熱と水素結合のエネルギーの関係を問う問題であり、水1分子あたりの水素結合の数を正しく求められるかどうかがポイントであった。cの図はあまり見慣れないが、落ち着いて取り組めば正解できるだろう。


第3問:無機  [やや難] ・問1は正誤判断問題であり、選択肢の数が少なく内容も典型的で、平易である。 ・問2は、金属の同定の問題である。スズと鉛が同族元素であることを知っている必要があり、見た目のわりに正解はしづらい問題である。 ・問3は、見慣れない反応に関する実験を読み解き、解答する問題である。解き進むにつれて難度が上がっていき、cはとくに難しい。時間が限られた状況下では、後回しにするなどの判断も必要であろう。


第4問:有機  [標準] ・問1は芳香族炭化水素に関する正誤判断問題であり、第3問 問1と同様、平易である。 ・問2は油脂に関する正誤判断問題である。下線部のみの正誤判断ではあるが、受験生が手薄になりそうな点からの出題も見られる。 ・問3は、アルコールの反応を題材とした典型的な問題であり、ぜひ正解したいが、一つ一つの物質について検討が必要であり、解答にはやや手間がかかる。 ・問4は高分子化合物の範囲からの出題である。内容は難しくはなく、正解を目指したい。 ・問5はペプチドのらせん構造に関する問題で、化学の知識も必要であるが、小学算数の考え方が中心となる問題である。


第5問:理論、有機  [やや難] ・問1〜問3ともグルコースを題材としているが、それぞれ独立した問題である。 ・問1bでは方眼紙が用意された。しかし、題意の時点でのα-グルコースの物質量を正しく求められれば、グラフ描画を行わなくても正解を絞り込める問題であった。また、問1cは、実験Ⅰのα-グルコースの物質量を0.200molとした場合と同等であることを見抜けるかどうかで、難易度の感じ方が大きく変わるであろう。個別試験対策の充実度によって差がつきやすい問題であった。 ・問2は、Xの水溶液が還元性を示さないという情報をもとに、グルコースにおいてα型、鎖状構造、β型の間に成立している平衡が阻害されていることを読み取れるかがポイントである。 ・問3は、a、bとも一転してごく平易な問題である。取りこぼしのないようにしたい。


攻略へのアドバイス(2/11更新)

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。化学で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。
幅広い分野の正確な知識が必要

初年度の共通テスト化学では、試行調査から一転して、センター試験を踏襲した小問集合形式が中心の出題となった。 大問・中問形式の場合、おのずと出題分野が絞られてくるため、全分野にわたる幅広い内容を問いにくく、いわゆる「ヤマが当たる」という現象を回避しづらいという難点があった。この点も、方針転換して従来の形式に回帰する要因になったと考えられる。 引き続き、全範囲を抜けもれなく学習することが肝要である。

個別試験を想定した演習を

形式面では従来のセンター試験に回帰した形になった一方、問題のレベルはセンター試験に比して上昇しており、個別試験レベルの問題が見られる。共通テストの直前であっても、個別試験レベルを想定した演習を積んでおくことが望ましい。 また、分量が従来のセンター試験からそれほど減っていないにも関わらず、処理に時間がかる問題が複数見られる。このため、個別試験と同様に、時間がかかりそうな問題は後回しにし、確実に解けそうな問題の見直しを重点的に行って取りこぼしを防ぐなど、個別試験で必要な戦術を身につけておく必要もあるだろう。

共通テスト独自の出題形式にも注意

従来のセンター試験型の問題が中心とはなったが、方眼紙を用いる問題や、数値を桁ごとに解答する問題など、共通テストで新たに導入された出題形式も見られる。今後、リード文の読み込みが必要となる問題などが出題される可能性もあるので、もし出題されても面食らわないように、共通テスト試行調査の問題にも目を通し、必要に応じて模試型問題などで対策をしておくとよいだろう。  

高3生向け Z会の共通テスト対策講座

◆[専科]共通テスト攻略演習 共通テストの傾向をふまえた教材に取り組みます。毎月の演習で、基礎固めから最終仕上げまで段階的に対策を進められます。

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