国語 – 共通テスト(2023年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2023年2月1日

Z会の大学受験生向け講座の国語担当者が、2023年度の共通テストを分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。

 

共通テスト「国語」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:80分 / 200点


全体の傾向

評論・小説・古文・漢文の全4題の出題という形式は例年と同様。

実用文の読解やグラフを用いた出題などは見られなかったが、第1問の評論は昨年度に引き続いて同一のテーマ・引用文に関する複数の文章をもとに出題されたほか、授業の会話場面や生徒の学習活動を想定した出題もそれぞれの大問で見られた。〈読み取った情報の整理・統合が重視される出題〉だったと言える。

全体の難易度としては標準的な範囲の出題であったが、各選択肢の丁寧な吟味に加え、それぞれの大問で複数の文章・資料を見比べる手間もあり、負担感はやや大きい出題であった。情報を整理し的確に把握する力は各大問の中でさまざまな形式で問われており、共通テスト形式の演習経験を積んでいた受験生であれば、実力を発揮できただろう。


 

国語の「カギとなる問題」は?

次に、国語で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第1問:問6

【文章Ⅰ】【文章Ⅱ】両方の内容を理解したうえでそれらを統合して解釈する必要があるが、(ⅰ)~(ⅲ)のいずれも、個々の文章で述べられている概念や内容を正しく押さえることが解答の前提となる。目新しい形式の出題であっても、本文中の根拠となる箇所に正しく着目したうえで、誤りを含む選択肢を消去して正解を吟味することが変わらず重要である。


第2問:問7

本文と同時代の広告が【資料】として取り上げられ、【構想メモ】などをもとに本文全体のモチーフや表現効果について考察した【文章】の空欄補充問題が出題された。本文末尾に着目したうえで、当時の時代背景にも思いを巡らせ、紛らわしい選択肢に惑わされないよう選択肢を丁寧に吟味できたかどうかで差がつくだろう。


第3問:問4

本文と同じ筆者による文章を踏まえた会話文という形式での出題である。枝問3つと負担が重く、受験生にあまり馴染みのない連歌や掛詞の解釈が扱われているが、対話の中に本文理解についてのヒントがあり、内容を踏まえてそれぞれの文章を丁寧に読解すれば正解は導ける。古文単語や文法知識などの基本事項に加え、連歌や掛詞などの古文常識をあらかじめ身につけていれば、解答の助けとなっただろう。


第4問:全体

旧センター試験から3年連続で出題されていた漢詩ではなく、散文での出題であった。官吏登用試験に備えての【予想問題】と【模擬答案】という2つの文章から出題されているものの、読解にあたって特別な配慮などは不要なため、落ち着いて取り組みたい。設問は、従来の知識問題中心のものから文脈把握(文章内容の読解)に比重が置かれており、これまでの読解演習の経験で差がついたと考えられる。


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大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、国語の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:現代文(評論)柏木博『視覚の生命力――イメージの復権』、呉谷充利『ル・コルビュジエと近代絵画――二〇世紀モダニズムの道程』 [標準]

ル・コルビュジエの建築物における窓について、その著作『小さな家』からの共通する引用箇所を含みつつ、別の観点から考察を加えた2つの文章が出題された。論旨自体はそれほど難解なものではないが、昨年度の「食べる」という受験生にとって身近な題材に比べると、テーマとしてややとらえづらく感じた受験生もいたかもしれない

・問1の漢字問題は、(ⅰ)傍線部に相当する漢字を含む選択肢を選ぶ問題3問のほか、(ⅱ)傍線部と同じ意味で漢字が用いられている熟語を含む選択肢を選ぶ問題2問が出題された。なお、漢字問題はセンター試験では5択が定番だったが、共通テストに変わってからは4択に変化・定着してきている。
・問2~4は【文章Ⅰ】、問5は【文章Ⅱ】の部分読解に関する設問。読解や選択肢吟味の難度は標準的なものだが、複数文章による出題に慣れていないと、頭を切り替えて、それぞれの文章で述べられている趣旨を混同しないように読解するのに手間取ったかもしれない
・問6では、2つの文章の内容を踏まえた生徒同士の話し合いを通じて、文脈に合致する発言内容を選ぶことが求められた。(ⅰ)では2つの文章における引用文の取り上げ方の違い、(ⅱ)では子規のエピソードを取り上げた意図が問われており、〈題材の取り上げ方や配列の仕方〉といった筆者による表現の意図や工夫についても意識して選択肢を検討する必要がある。(ⅲ)は2つの文章を統合した発展的な読みが求められるが、個々の文章で述べられている概念や内容を正しく押さえた選択肢が正解となる。


第2問:現代文(小説)梅崎春生「飢えの季節」 [標準]

第二次世界大戦終結直後、食糧難の東京が舞台の小説。読みやすくはあるものの、当時の時代背景にどれだけ思いを巡らせることができるかも重要であったため、前提知識があれば読解の助けとなっただろう。

・問1では昨年に引き続き、小説頻出の語句の意味を問う出題がなかった。また、設問数は昨年の5問→7問に増えたが、全体のマーク数に変化はなく、全体的な負担感も昨年並みであった。
・問1から問6については、例年どおり心情にかかわる問題。比較的オーソドックスな出題であった。一部紛らわしい選択肢もあるが、落ち着いて素直に選べば難しくはないだろう。
・問7では、本文と同時代の広告が【資料】として取り上げられ、本文全体のモチーフや表現効果について考察する問題であった。資料を深読みし過ぎず、必要な情報を取捨選択した上で、選択肢を丁寧に吟味する必要があった


第3問:古文 源俊頼『俊頼髄脳』 [標準]

2018年度の本居宣長『石上私淑言』以来となる、歌論書からの出題。内容的には説話に近いものとなっており、場面状況は比較的つかみやすい。掛詞を中心とする和歌の解釈が問われているため、修辞法を中心とする古文知識を身につけていれば、解答時間の短縮や高得点が狙えただろう

・問1の語句解釈問題はいずれも頻出の重要語を問うもので、ここでの失点は避けたい。
・問2の傍線部解釈問題は、語句と表現に関するものであるが、助動詞の意味など、いずれも基本的な文法知識で正解が導ける。
・問3の説明問題は、1⃣~3⃣段落という広い範囲の読解が求められており、限られた時間のなかで本文を丁寧に読解する必要がある。
・問4は、本文と同じ筆者による文章を踏まえた、教師と生徒3人の会話文形式の出題。枝問が三つあり、負担が重い。(ⅰ)(ⅱ)では掛詞の解釈が扱われており、誤りの選択肢に惑わされることなく、それぞれの文章を正確に読解できたかが問われる


第4問:漢文 白居易『白氏文集』 [標準]

白居易が官吏登用試験に備えて作成した【予想問題】と【模擬答案】が提示された。センター試験も含め、2020年度から3年連続で出題されていた漢詩はなく、散文のみの出題
【予想問題】と【模擬答案】の2つが提示されているとはいえ、予想問題=問い、模擬答案=答え、というシンプルな構造であり、素直に読解すれば問題ない。ただし、その他の大問に比べて注が少なく、一部意味を読み取りにくい漢字もある。また、文法知識のみで解ける設問が減り、文章内容の理解を問う設問の割合が増加した。読解力が正面から問われる出題であったといえるだろう。

・問1は基本的な語の意味。(イ)「以為」は基本中の基本の語なので、確実に正解したい。(ア) (ウ) も基本的なものではあるものの、文脈を踏まえた判断が必要となる。
・問2は解釈の問題。二重否定となっていることに注目する。「効す」の意味がわからない場合でも、提示された選択肢から意味をとることができるだろう。
・問3は一文が長く、構造が読み取りづらい。白文の状態では判断が難しいかもしれないが、カギとなる「豈不」「以」に着目しつつ、選択肢を比較して正解を導きたい。
・問4~問6は、傍線部前後の内容が問われるオーソドックスな設問であり、丁寧に文脈をたどることが求められる。問4は比喩の理解を問う問題ではあるものの、紛らわしい選択肢もないので素直に正解を選べばよい。
・問7は【模擬答案】で述べた答えを問う問題。文章の主題を理解できているかが問われている。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。国語で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

幅広い文章ジャンルでの演習経験を通して、正確に情報を把握する力を身につける

共通テストでは〈複数の文章・資料を組み合わせた問題〉が出題される。問題文に加え、関連する資料にも広く目を配る必要があるため、「情報を適切に把握する力」が必要だ。試験時間に対する問題量が多く、解くスピードが要求されることも共通テストの特徴の一つだが、まずは「提示された問題文・資料を正確に読み取ることができる力(=読解力)」「基礎となる知識事項」がなくては始まらない。本番でどのような文章が出題されても対応できるよう、早い時期から問題演習を重ねて多くの問題に触れておくことが重要である。

Z会の「[専科]共通テスト攻略演習」では、さまざまな文章ジャンル・出題パターンを網羅しているので、共通テストで求められる力をバランスよく鍛えるために、ぜひ活用してほしい。

高3生向け Z会の共通テスト対策講座

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