日本史B – 共通テスト(2021年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2022年1月15日

Z会の大学受験生向け講座の日本史担当者が、2021年度の共通テスト(第1日程)を分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。

 

共通テスト「日本史B」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量・問題構成などを整理し、難度(センター試験や試行調査と比較してどう変化したか)を解説します。
試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点

全体の傾向

大問数は6題、小問数は32問であった。センター試験と比べて、大問数は同数であったが、小問数・マーク数は4問減少した。また、第2回試行調査とは、大問数・小問数ともに同数であったが、マーク数は36から32に減少した。 ●出題構成は、テーマ史、原始・古代、中世、近世各1題、近・現代2題で、センター試験や試行調査と同様であった。センター試験同様、近・現代からの出題が全体の3割を超えており、昭和戦後史単独の設問は2問出題された。

出題テーマ

第1問:貨幣の歴史 第2問:日本における文字使用の歴史 第3問:中世の都市と地方との関係 第4問:近世社会の儀式・儀礼 第5問:景山英子と女性解放運動 第6問:農地改革

おもな注目ポイント

試行調査で見られたような、史料・絵図・グラフなど多様な資料を用いた問題や、知識を活用して判断する問題、論理的な思考を求める問題が出題された。しかし、試行調査よりセンター試験形式の知識のみを求める問題が増えたことから、第2回試行調査に比べてやや易化した。 試行調査同様、出題された史料は、ほとんどの受験生にとっては見慣れないものであったが、出題史料数は第2回試行調査から減少し、5つであった。史料自体は比較的読みやすいものであり、注記と合わせて丁寧に読めば十分に解答できる。  

日本史Bの「カギとなる問題」は?

次に、日本史Bで「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。
第1問問1

提示された文と「最も深く関連する」ものを選ぶ問題であった。歴史的事実に基づく正誤判断ではなく、論理的な思考を用いて選択肢を検討させる、共通テストらしい問題であった。

第2問問1

異なる時期の中国諸王朝の領域のみが示された3つの地図を、年代順に配列する問題であった。地図中に王朝名は示されておらず、古代の倭と中国との外交史に関する知識を活用することが求められた。関係する諸外国にも意識を向けた学習ができていたかどうかがカギになるだろう。

第3問問1

(2)では、絵図そのものに対する知識ではなく、荘園絵図の内容を読み解く方法について出題された。提示された方法に従って絵図を照合することで、何がわかるかを考えることが求められた。

第6問問3・問5

いずれも提示された「発表用スライド」中の空欄に当てはまる内容と、それに関する理解が問われた。各スライドの記述から歴史事象の展開を読み取り、それらの結果や背景を総括することが求められた。

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大問別ポイント/設問形式別ポイント(2/12更新)

次に、日本史の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:貨幣の歴史  [標準] ・メモを織り交ぜた会話文形式の出題であった。知識の活用や思考力を求める問題も見られたが、全体としては、教科書レベルの知識で対応可能な問題であった。 ・問1は、a〜dの判断ポイントが、歴史的事実の正誤ではないことに気づきたい。Xの私鋳銭を認めないことを示す法令、Yの国家による銭貨の支出を示す法令に当てはまるものをa〜dから検討する。 ・問5のIIIは、「戦費調達」「多額の不換紙幣」から、西南戦争を想起したい。 ・問6は、「解説文」中の「1946年には新円切り替えにより流通が禁止されていた旧円の旧貨幣」に注目する。昭和戦後期の経済政策の内容と年代をきちんと押さえられていたかどうかで差がついただろう。


第2問:日本における文字使用の歴史  [標準] ・リード文として、生徒の「発表要旨」が示された。問1は難しかったが、その他は取り組みやすい問題であった。 ・問1は、中国王朝名がなく支配領域しか示されていない地図に戸惑っただろう。設問文の「1世紀、3世紀、5世紀」から、当時の日本の様子を記録した『後漢書』東夷伝、『魏志』倭人伝、『宋書』倭国伝を想起して、足がかりを掴みたい。 ・問4は、試行調査で見られた評価とその根拠を選ぶ問題である。ただし、「国風文化」という見慣れたテーマであり、基本的な知識を活用すれば判断できる。


第3問:中世の都市と地方との関係  [標準] ・問1で未見の史料や絵図が出題されたが、丁寧に資料を見ていけば確実に解答できる。その他の問題も基本的な知識を確認する問題であり、確実に得点したい。 ・問1(2)では、絵図の内容の読み取りが求められた。(1)の史料の注記から「牓示」の役割を押さえ、X・Yに沿って、実際に絵図を読み解いていく必要があった。 ・問3は、室町時代の一揆に関する年代整序が出題された。とくに、山城の国一揆(I)と加賀の一向一揆(II)は発生時期が近いので、正確な知識が求められた。


第4問:近世社会の儀式・儀礼  [標準] ・問1では模式図、問4では未見史料が出題された。解答に時間はかかるが、他の設問同様、確実に正解したい問題であった。 ・問1のXは、<殿席の説明>から、外様大名と譜代大名の殿席を読み取り、模式図上でその位置を確認すればよい。Yは、「日米修好通商条約」と「大老」から井伊直弼を、「徳川斉昭」からは御三家を想起すればよい。模式図・説明文から読み取った情報を、基本的な知識と結びつけて正答を導くことが求められた。 ・問4(1)・(2)はどちらも未見史料であったが、注記を活用しながら読んでいけば、内容の把握は難しくない。落ち着いて取り組み、着実に得点したい。


第5問:景山英子と女性解放運動  [標準] ・問3で未見史料が出題されたが、基本的な知識を確認する問題を中心とした大問であった。 ・問1では、センター試験で頻出だった、リード文中の空欄補充組合せの問題が出題された。試行調査では1度も出題されていない形式であるが、大阪事件と平民社に関する基本知識の確認であり、確実に得点したい。 ・問3は、史料の内容と時代背景が問われた。ただし、リード文中から景山英子の学校設立が1901年であることを読み取り、教育勅語が出された年代、義務教育の期間が延長された年代を知っていれば解答できた。


第6問:農地改革  [標準] ・農地改革をテーマに、発表用スライドを素材として出題された。問1・問4はやや細かい知識が求められたが、全体としては標準的なレベルの問題であった。 ・問3は、スライドに示された具体的な出来事から、1920年代〜1930年代前半における寄生地主制の展開を掴む必要があった。問5では、スライドの具体的な情報をもとに、戦時期の農業政策の方針を汲み取り、さらにその目的を考察することが求められた。いずれも、提示された情報を的確に読み取り、問題に即して考える力が求められた。


 

攻略へのアドバイス(2/12更新)

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。世界史で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。
基本的な知識を確実に押さえる

共通テストでは、資料読解力や論理的思考力をはかる問題も見られたが、知識の確認や活用など、知識を必要とする問題がほとんどであった。共通テストにおいても、教科書レベルの知識を押さえていることが重要である。教科書や用語集などを活用して、基本的な知識をしっかりと固めよう。

同時期の世界の動きを意識する

共通テストにおいては、世界の国々との接触や交流という視点を意識することも求められる。諸外国の出来事や日本への影響については教科書でも触れられているので、見逃さないようにしたい。また、図説などの年表を活用し、同時期の世界の動向について理解を深めておこう。

資料読解力を磨く

共通テストでは、教科書などには掲載されていないような文献史料や絵図、グラフなどの資料をその場で読み取り、設問に即して解答することが求められる。資料問題対策の第一歩は資料に慣れることである。日頃から史料集や図説を活用し、「資料を読むこと」に慣れておこう。

問題演習を積む

共通テストでは、センター試験には見られなかったような、知識の活用や思考力を求める問題が出題される。このような形式の問題は、一問一答的な学習では対応しきれない。様々な形式の問題に取り組み、実戦力を養おう。

高3生向け Z会の共通テスト対策講座

◆[専科]共通テスト攻略演習 共通テストの傾向をふまえた教材に取り組みます。毎月の演習で、基礎固めから最終仕上げまで段階的に対策を進められます。

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