生物 – 共通テスト(2023年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2023年2月1日

Z会の大学受験生向け講座の生物担当者が、2023年度の共通テストを分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。

 

共通テスト「生物」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


全体の傾向

●難易度は2022年より上がり、2021年第2日程より難化した。2022年度に比べ、考察問題の比率はやや下がったが、難度の高い考察問題が多く、また、知識問題ではより正確な知識理解が求められるなどしたため、難易度も負担感も増した

●2021年度・2022年度と同じく、文A・Bに分かれていない(中問のない)大問を含む大問6題の構成である。

●2021年度・2022年度と同じく、多くの大問では、個々の設問が1つの大分野に縛られることなく、題材に応じて複数分野から出題された。

●リード文について、会話文となっていたのは第6問だけであった。また、第6問は「課題を発見し解決方法を構想する場面」であり、「『どのように学ぶか』を踏まえた問題の場面設定」の問題であった。


生物の「カギとなる問題」は?

次に、生物で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第4問問3・問4

リード文と、複数のグラフ・図を踏まえて設問の要求を検討する設問である。検討に用いる情報がやや多めで、とくに問4は窒素固定に関する正確な知識も必要であったが、この設問レベルの情報の処理にはしっかりと慣れておき、確実に解答できるようにしておきたい。


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大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、生物の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:シアノバクテリアの外部環境に応じた発現調節  [標準]

・シアノバクテリアが、外部環境の硫酸条件によって集光装置に必要なタンパク質の発現を切り替えることを題材に、原核生物の遺伝子発現制御、調節タンパク質の働きを調べるための実験、光合成色素からみた光合成生物の系統樹が問われた。
・問4は、系統分類の知識で選ぶ空欄と、設問の条件から検討する空欄のある設問であった。


第2問A:霊長類の色覚と適応  [やや難]

・遺伝子重複や突然変異によって生じる視物質の違いを題材に、遺伝子重複に関する知識や、色覚と環境への適応について問われた。
・問2は、X染色体の遺伝子座がヘテロ接合である個体が三色型になる、つまり、三色型は雌だけであることに注意


第2問B:ヒトの匂い物質の受容と識別  [標準]

・ヒトの嗅細胞の興奮と匂いの識別が題材である。問3について、嗅細胞による化学物質の受容および興奮の発生と、匂いの感覚が生じることの関係は、教科書によってはあまり触れられていないが、初見であってもリード文や表から比較的容易に類推できる。


第3問:植物の光環境応答と葉緑体の移動  [やや難]

・シロイヌナズナの葉での、光環境に応じた葉緑体の定位運動が題材である。
・問1はフィトクロムによる赤色光の受容と光発芽の知識問題で、確実に解答したい。
・問2は、光合成色素の吸収スペクトル(あるいは光の波長と色)を踏まえたうえで、葉緑体の移動による透過率の違いを検討する問題であった。透過するのは、光合成に利用されない光である点にも注意
・問3は、実験1〜3から確実に否定できる選択肢を選ぶ。


第4問:植物の物質生産と窒素同化  [標準]

・植物の成長と同化を主題にした大問である。
・問1は「細胞と分子」の分野の知識をもとに、確実に解答したい。
・問2は生態系の物質収支の正確な理解をもとに、丁寧に検討することが求められた
・問3は図1と図2が離れているため、検討しづらいが、不足している肥料を与えられれば成長量が増すことから考える。
・問4空欄エは、設問文中の説明と図内の分子の量に注意する。
・問4空欄オ、問5空欄クは、理解があいまいな受験生が多かったのではないか。


第5問:ショウジョウバエの母性因子とその遺伝  [やや難]

・ショウジョウバエの母性因子の遺伝子(母性効果遺伝子)の遺伝と発現が題材であった。
・問1は、母性因子は母(雌親)の遺伝子に由来し、卵の母性因子のmRNAは雌親の細胞で転写されたものであることを踏まえて計算する。
・問2の選択肢ⓒは誤字の発覚した文である。「勾配」と正しい字で読む場合、掲載していない教科書も多く、迷ったり、検討に時間がかかったりした受験生が多かったのではないか。
実験1〜3は問3の選択肢ⓓ〜ⓕと読み合わせると理解しやすい
・問4は、卵で雌親由来のmRNAから発現するタンパク質Xが配偶子への分化に必要であることを踏まえて、空欄を埋めていく。


第6問:魚類の縄張りの形成  [標準]

・アユなど魚類の縄張り形成が題材の大問で、この大問はどの設問も「生態と環境」からの出題であった。
・問2では実験1の条件を見落とさないようにしたい。
問3は選択肢の選び方が目新しい設問であった。解答番号28では、「…地点Zのモデルが(選択肢)①〜④のいずれか」であるので、地点Zのモデルであるグラフを選択肢①〜④の中から選び、そのグラフから読み取った値を選択肢⑤〜⓪の中で探すことになる。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。生物で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

多くの設問で、複数分野の知識をもとにした検討が必要

知識問題は、全範囲から問われる。文章の正誤判断での出題では、選択肢内の文全体で誤りがないかどうかを正確に判断する必要がある。選択肢が増えると負担が重くなる所以である。

また全範囲から問われるため、苦手分野を残すと得点を積み増すことが難しくなる。例えば2023年度でいうと第5問以外の問1で読み込みや検討に時間をかけているようだと、深い読解や検討の必要な設問に時間を割きにくくなるので、なるべく早く全範囲の学習をひととおり終えておきたい。


正確な知識と幅広い文章ジャンルでの演習経験が差をつくる

考察問題は、題材は教科書や図説にないものであっても、リード文と実験結果を読み取れば理解できる。時間に対してリード文が長く、複数の図表がある大問が多いので、普段の演習を通じ、実験の条件や結果のポイントをすばやく抽出できるようにしておきたい

共通テストでは分野融合の問題も出題されるが、分野融合の実験考察問題も、理解の基になるのは各分野の基礎知識である。また、仮説・実験・結果・考察という流れや、対照実験を設けるなどの実験考察の考え方自体は分野融合であってもなくても共通している。考察問題についても、まずは学習を終えた分野内での知識を元にした実験等の問題演習を通し、素早く要点をつかみ取る訓練などを進めていきたい


解答時間を意識した演習を

知識問題では細かい正誤判断、考察問題では実験条件や結果の読み取りと整理を行わなければならないため、高得点を狙うには効率的に読解し、解答していく必要がある。

そのため、問題演習を通じて、要点を把握・整理しながら正確にリード文を読み取る訓練、各選択肢をすばやく判断する訓練を重ねておきたい


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