数学Ⅰ・A – 共通テスト(2021年度)の分析&対策の指針

投稿日時:2022年1月15日

Z会の大学受験生向け講座の数学担当者が、2021年度の共通テスト(第1日程)を分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。

 

共通テスト「数学Ⅰ・A 」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量・問題構成などを整理し、難度(センター試験や試行調査と比較してどう変化したか)を解説します。
試験時間と配点

時間 / 配点:70分 / 100点

全体の傾向

◆大問5題構成であり、第1問と第2問は必答問題、第3問~第5問についてはこれら3題から2題を選択する選択問題である。 ◆単なる数値を求める問題だけでなく、

  • 正しい(あるいは誤っている)選択肢を選ぶ問題
  • 具体的な実社会での設定がなされ、それに対して数学を適用し、解釈をしていく問題
  • 複数の登場人物が会話をしており、その人物の考えを踏まえて解答していく問題

など、これまでのセンター試験であまり見受けられない出題が多い

おもな注目ポイント

●大問構成は試行調査やセンター試験と同じであり、分野の出題バランスも試行調査やセンター試験とほぼ同じである。 ●出題方針は試行調査を踏襲しているが、一方で、難易度は従前のセンター試験に合わせるように配慮を感じられる。全体的な難易度としては、2020年度センター試験と同程度かやや難しいといったところである。 ●試験時間が70分に増えた分、問題文の読解量と思考量が増えた印象である。全体的に、「時間が厳しい試験である」という点については変わりがない。

数学Ⅰ・A の「カギとなる問題」は?

次に、数学Ⅰ・A で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。
第1問 〔2〕

共通テストの特徴である「一度考えた結果を一般化していく」ことが繰り返し要求される。難易度はそれほど高くはないが、このような考察を普段からしていないと、太刀打ちできないだろう。

第2問 〔1〕

実社会の事象を数学を用いて考察していく試行調査の特徴が色濃く現れた問題。数学の内容は難しくないが、条件や設定の説明が長く、読解力が求められる。必要な情報を素早く正確に読み取る力が要求され、対策ができていないと、時間がかかってしまう。

<数学担当者よりコメント> 各大問、および中問での最後の問題はやや難易度が高く設定されており、高得点をねらうためには、これらのうちどのくらいを処理できるかがカギとなってくる。大問間の難易度の違いでは、必答問題が比較的処理しやすく、選択問題が難しい構図である。これは、近年のセンター試験の傾向を踏襲している。

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大問別ポイント/設問形式別ポイント(2/9更新)

次に、数学Ⅰ・Aの出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問〔1〕:数と式、2次方程式 [やや易] 文字定数を含む2次方程式の2つの解がともに有理数となる条件を考察する問題。 はじめの方の設問において、具体的な文字定数の値に対して解を求めた上で、最後の設問でその条件を考えていくことが本中問の大きな流れである。この流れの中で、いくつか数式に関する処理を試す出題も織り交ぜられている。他の大問や中問の難易度を加味すると、本中問は確実に得点しておきたい。 最後の設問では、試行調査で多く見受けられた会話文がある。会話文中に考察のヒントが与えられている。


第1問〔2〕:図形の計量 [標準] 三平方の定理の証明法の1つを思わせる平面図形の設定で、余弦定理、正弦定理、面積公式などの理解を試す問題。 (1)は基本的な求値問題であるが、(2)以降はすべて解答群から正答を選ぶ選択式の問題である。式の意味を考えさせたり、これまでの考えたことを応用して処理したりするなど、試行調査の特徴が色濃く現れている問題である。 本質的な理解ができている受験生は高得点がとれるが、一方で、解法を覚えているだけの受験生は(2)から苦戦しただろう。数学の力の差が得点差となって現れてくる良問である。


第2問〔1〕:2次関数 [標準] 陸上競技の100m走において「タイム」を最小とするために「ストライド」と「ピッチ」をどのようにすればよいか、を考察していく問題。実社会への数学の応用を重視した試行調査の特徴を踏襲している。 試行調査ほどの分量ではないが、それでも設定を説明するための文章量はやや多い。問題文から必要な情報を正確に素早く引き出す読解力が問われる。 一方で、数学としては決して難しくない。おそらく時間をかけさえすれば得点できるが、かかった時間によって他の問題の得点を左右したものと思われる。


第2問〔2〕:データの分析 [標準] 都道府県別の各産業の就業者数割合を題材とした問題。実社会への数学の応用の代表例として、センター試験時代から重視の傾向があったが、共通テストでも継承されている。 以前は、平均値、分散、相関係数などの値を求める問題が多かったが、2021年度は、「正しい(誤った)記述を選ぶ」「あてはまるヒストグラムや散布図を選ぶ」といった設問が目立った。与えられたデータからいかに情報を読み取れるか、を重視した出題といえる。


第3問:場合の数と確率 [やや難] 当たりを引く確率が異なる複数のくじ引きを題材にした確率の問題であり、条件つき確率を主題としている。 (1)では具体的な確率をいくつか求めていくが、(2)以降は会話文を織り交ぜつつ、

  • 考察過程や結果を振り返りながら、事実を導き、
  • それを一般化して規則を予想し、
  • さらにそれを応用して別の問題を解決していく

という試行調査で重視した問題構成が見られた。単に問題を解くだけという受け身の学習しかしてこなかった受験生には難しく映っただろう。


第4問:整数の性質 [やや難] さいころの出た目によって円上のいくつかの点を動く石が数回の試行後、到達する可能性のある点を考察する問題。 テーマは1次不定方程式であるが、石が到達する可能性のある点の考察を、1次不定方程式の解に結び付けて考えるところも意識しており、試行調査の特徴がここでも色濃く反映されている。 難易度としては、(3)までは処理しやすいが、(4)で差がついたであろう。(4)は複数の1次不定方程式を解いても処理できるが、(3)までの考察を振り返ることで、処理量をかなり軽減できる。正答率の高低の難しさというよりも、かかった時間で差がつくタイプの問題であろう。


第5問:図形の性質 [やや難] 3:4:5の直角三角形から出発して、角の二等分線、外接円、円に内接する円などを定義していき、図形量や性質を導いていく問題。 問い方としては、従前のセンター試験を踏襲した形式であるが、他の選択問題(第3問、第4問)と同程度の難易度であり、受験生にとってはやや難しかったであろう。 差がつくと思われるところは、「方べきの定理」を用いて問題文で設定された円の半径 r を求めるところである。やや設定が複雑で図が書きにくいことと、複数の考える流れが想定できるためであり、後者では問題文の思考の流れに乗ることも重要である。


 

攻略へのアドバイス(2/9更新)

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。数学Ⅰ・Aで求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。
教科書の知識をしっかりと身につける

知識を発展させたり、深堀させる出題、多様な知識を問う出題とさまざまなバリエーションがみられる。どの知識を問われるかは出題されるまでわからないので、教科書に載っている知識はすべて扱えるようにしておこう

探求心を大切にする

2021年度の「共通テスト」でも至るところで見受けられたが、一度考えた内容を「振り返る」ことが大切である。 これは普段の学習において、問題が解けることだけが大切なのではなく、たとえば、平面から空間(2次元から3次元)への拡張、発展的な知識の類推など、ある知識を得て「何かに発展できないだろうか」といった探求心を日ごろからもつことを「共通テスト」が要求していることの現れである。

「自分を信じる力」を本番で維持できるかが最も大切

「自分を信じる力」を本番で維持できるか、一番大事なのはそこである。そのために、良質な演習の積み重ねが大事。早い時期から、さまざまなレベル・ジャンルの問題に触れて、万全の対策を進めておこう。 Z会では、共通テストを徹底分析し、Z会の通信教育[専科]共通テスト攻略演習を制作している。共通テストで求められる力をバランスよく鍛えるために、ぜひ活用しよう。そして、「何でもドンと来い!」というゆるぎない自信をもって本番を迎えてほしい

高3生向け Z会の共通テスト対策講座

◆[専科]共通テスト攻略演習 共通テストの傾向をふまえた教材に取り組みます。毎月の演習で、基礎固めから最終仕上げまで段階的に対策を進められます。


◆[Z会の映像]共通テスト対策映像授業 「授業」を中心に学習を進めたい方におすすめ。Z会精鋭講師陣による質の高い解説講義(映像授業)で、共通テストの攻略ポイントを学びます。

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