添削指導員は、どんな人?どのようなことを考えて指導をしているのか?

添削指導員は、どんな人?どのようなことを考えて指導をしているのか?

2023.08.24

添削指導員をされる前は、どのようなお仕事をされていましたか?

国語の教員として東京都の私立学校、宮城県の公立高校などを経て、沖縄県で学習支援を行う公営塾に勤務していました。従来の講義型授業ではなく、生徒参加型の授業などの実践から、生徒の主体性や思考力をどのように引き出すか、評価するかということに興味を持っていました。添削指導員は、この興味をもう少し掘り下げていけるお仕事ではないかと感じ、応募しました。

学校の先生時代にはどのような文章指導を行っていたのでしょうか?

東京都の私立学校時代は、小論文や志望理由書などの指導はほとんど行っていませんでしたが、宮城県立の実業高校に赴任した際に、就職や看護学校を希望する生徒を対象にして志望理由書や作文の添削指導を始めました。

当時の生徒の志望理由は、「地元だから」「親が薦めるから」といったものが多く、書く内容を一緒に考える指導から始めなければなりませんでした。そこで、よく取り組んでいたのが「書かない文章指導」です。小論文や志望理由書を書く前に生徒同士で討論を行ってもらい、自らの考えを深めてもらいました。

進学校に異動してからは、AO入試が始まったタイミングでもあったため、小論文指導に多く携わりました。当時は「べき論」を書く生徒が多く、ここでもディベートを行いながら、様々な意見があることを肌で感じてもらってから書くような指導を行っていました。

2011年頃までの大学入試における小論文では、生徒の考えをしっかりと書けていれば合格できていましたが、徐々に「資料やデータを正しく読み取り、事実と結び付けて論を組み立てる」という出題傾向が多くなり始めました。この頃から文章指導にも変化を加えていきました。

学校での小論文指導とビジネス文章の指導に違いはありますか?

小論文とビジネス文章で違いがあるというよりも、学習者が大人か生徒かという点に大きな違いがあるように感じていました。

最初は大人に対して指導しているため、こちらが伝えたい意図を汲み取ってくれやすいのではないかと思っていました。しかし、添削指導をしながら当時の生徒を思い出す場面が多くあり、指導すべきポイントはあまり変わらないのではないかと感じました。

そこで、教員時代に生徒に伝えきれなかったと反省していた要素を指導として加えるようになりました。そういった点で言えば、今(ビジネス文章)の方が指導している内容が深いものになっているのではないかと感じています。

指導に当たって気を付けていることはありますか?

評価項目ごとにA・B・Cの評価を付けますが、評価がBならBなりの、CならCなりの理由を「ここが足りない」とはっきり示すようにしています。

ただ、指摘をしすぎると、学習者がどこから改善していいか分からなくなり、書くことに対して恐怖心や抵抗感を抱いてしまう恐れもあるため、さじ加減には気を付けるようにしています。このさじ加減は日々、難しいなと感じている部分です。

また、「匿名の添削者」ですから、自分の考え・こだわりは横に置くことを意識しています。レポートを俯瞰的に見て、「書き手は何を伝えたいのか」「文章を書く上で何に困っているのか」を読み取るようにしています。また、答案のすぐれた点もピックアップすることで、書き手の努力を評価することも意識しています。

指導したい内容が多い場合、指導内容をどのように取捨選択していますか?

指導ポイントが多い場合、全部指導しなくてはという思いがありました。しかし、全てを指導に盛り込むことはできません。また、改善点を羅列的に指摘するだけでは、部分的な改善にとどまります。

そこで、「課題テーマについて学習者が伝えたいことは何か」「伝える文章を書く上で学習者は何に困っているのか」「読み手が困ることはないか」などから、指導上の「論点・ストーリー」を見つけることを意識するようになりました。

また、段落構成や見出しなどは、本文で例示することで短期的な解決を導きたいと考えています。これに対し、課題テーマの理解・考察などは、少し「長いものさし」で見守ることも必要と考えています。

指導ポイントが多い場合、以上のような観点からその内容の取捨選択をしています。

これまで指導していて、学習者が躓きやすいなと感じたポイントはありますでしょうか。

「発散と収束」という言葉がありますが、多くの人が発散した状態のまま書いているように感じます。つまり、考えをまとめてから書くのではなく、考えながら書いている人が多いようです。

また、出題意図をあまり理解できていない人が多いようにも感じています。

例えば、出題意図として考察が求められているにもかかわらず、「Aという事象があった、Bというアドバイスがあった。そして、成功した。今後も頑張りたい。」といった事実の列挙だけがされ、考察がない文章となっているケースを多く見かけます。

考えをまとめて(収束して)から書く

このように失敗や成功の要因が分析されていない文章を見ると、仮に失敗しても同じことを繰り返すのだろうな、という感想をいだきます。

さらに、ハイコンテクスト(社内の人しか分からないような)な文章を書く方もいらっしゃいます。このような文章の場合、こちらは読み取ることが難しいと感じます。社内では伝わるのかもしれませんが、誰が読んでもわかる文章を書いた方が良いのではないかと感じています。

高校生でも「出題の意図を理解する」「考えをまとめてから書く」という指導をしていたことが多く、躓きやすいポイントは共通しているなと感じています。

ビジネスにおいて文章を書く上での心構えや気をつけてほしい点はありますか。

出題の意図、レポートなどで与えられた要件を満たすことを心がけてもらえればと思います。これらの条件を満たせていない文章をみると、「ビジネスシーンにおいて顧客の求めるものに回答できていないケースもあるのではないか」と感じることがあります。

持論を出発点にするのは必ずしも悪いことではありませんが、就職活動でA社とB社の志望動機をまったく同じように伝えるかのように、同じものを同じように売っている状態となっているのではないかと感じています。

「出題の意図」や「与えられた要件」を満たすように書く

高校生を指導している際にも感じていたことなのですが、「レポートってこう書かねばならない」といった思い込みをしている方がいらっしゃいます。このような方も出題の意図や与えられた要件を満たすことが出来ない状態に陥っていることがあります。

このような状態に陥らないようにするには、様々な要素を客観的に見て、目の前にある事象が「なぜ今のような状態になっているのか」と、その要因を見出し、考察していくような意識を持つと良いかと思います。

文章が上手く書けている方への指導で気を付けていることは?

文章が上手く書けている方には、少々ハードルが高い指摘となることが多いです。難しいのは、書き手には「自信がある」「今までなら問題なかった」箇所を指摘する可能性が高いことです。例えば、「与えられた要件・目的とのズレ」「がんばりますという結論」などです。こうした点の指摘・修正は非常に難しいです。しかし、あと少しで良くなる可能性を秘めていますので、それらを改善できるような気づきを与えられる指導を心がけています。

伸びる受講生とそうでない(躓く受講生)とではどんな違いがあると思われますか。

添削指導された内容をそのまま修正してしまう方はあまり伸びないなと感じます。一方で、一から考え直してくれる受講生は力がついていると感じます。

しかし、この点については、指導する側としてもバランスが悩ましい部分です。

具体的に指導しすぎると直してしまうだけの状態になってしまい、抽象度が高いと伝わらない可能性があるからです。この距離の取り方のバランスが難しいと日々感じています。

添削指導いただいたものについて、より効果的な振り返り方法や、特に確認すると良いポイントなどがありましたら教えてください。

添削指導で提示している論点について理解し、自身の論点を把握するように心がけてください。

この2つの論点を俯瞰的に見ながら、統合して欲しいです。

添削指導では、ある程度具体的に書いていますが、「こういうことを指導者は言いたいのかな」と受講者の皆さんに抽象化していただけると助かります。

(講座の学習以外で)文章力を伸ばすために普段から意識するとよいことやできることがあれば教えてください。

月並ではありますが、本を読んでほしいと感じています。インターネットの活字を読んでいる方も多いと思いますが、インターネットにはインターネットの文法のようなものがあります。できれば、紙媒体で文章を読んでいただければと思います。

これは個人的な読書体験ではありますが、小説を読むと自身では言語化できなかったものが言語化され、可視化されていくような体験ができることがあります。

このように様々な言葉や文章に触れ、文章力を伸ばして頂ければと思います。

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