Z会の東大コース担当者が、2020年度入試の東大物理を徹底分析。受験生の再現答案や得点開示データをもとに、合否を分けた「差がつく一問」を選定し、東大物理の攻略法を詳しく解説します。
まずは、2020年度の「東大物理」を俯瞰しよう
はじめに、問題構成や出題傾向をおさえて、「自分が受ける入試問題」を正確に把握しましょう。
解ける問題を見極めて確実に得点を積み上げよう!
全体的に、2019年度に比べれば易しくなった印象を受けますが、すべての大問を時間内に正確に解き切ることは難しかったと思われます。解ける問題を見極めて上手に時間配分し、得点を最大化することが合格への条件となったでしょう。
合否の分かれ目は?
受験生の答案データを見てみると…
第一問 | 第二問 | 第三問 | 計 | |
---|---|---|---|---|
配点 | 20 | 20 | 20 | 60 |
全体平均 | 11.58 | 12.94 | 10.93 | 35.44 |
合格者平均 | 12.64 | 13.91 | 12.60 | 39.15 |
不合格者平均 | 10.06 | 11.55 | 8.55 | 30.15 |
平均:合−不 | 2.58 | 2.37 | 4.05 | 9.00 |
Z会集計の再現答案からZ会で推定した配点を当てはめ、大問ごとの得点率を出すと、上表のような結果となりました。第3問が合格者、不合格者の差が最も大きく、この問題ができたかどうかが、合否に直結したようです。
⇩
差がつく一問は
≪第3問≫
差がつく一問の注目ポイント
第3問は断熱変化を含む熱サイクルの問題ですが、ポアソンの法則による計算結果も問題文中に与えられており、各過程の変化を丁寧に考察できれば、東大としては易しい部類の問題です。設問全体を見渡して特に難しいと思えるものはないのですが、合格者が各設問ごと誤りなく丁寧に解答できていたのに対し、不合格者はケアレスミスや白紙が多く、時間内に正確に解き切ることの重要性が浮き彫りになったようです。
受験生の再現答案&添削を見ながら、差がつくポイントを確認しよう
Z会では、受験生が作成したこの大問の再現答案を、独自の採点基準に基づいて添削しました!
Z会が採点した結果は、20点中10点。Z会が設定した目標点である16点を下回る結果となりました。
それでは、この答案には、「どんな要素が足りなかったのか」「どういう対策をしていれば目標点に届いたのか」を詳しく見ていきましょう。
目標点とのギャップをどう埋める?
I〜II(2)までの各過程での仕事や内部エネルギー変化についての考え方は正しいのですが、気体がした仕事とされた仕事を明確に区別できていなかったための符号ミスがありました。
II(3)では、操作4の過程で容器X内の気体が仕事をされている(体積が減少している)ことを考察し忘れたため、正解できていませんでした。この考察ミスによって、III以降についても雪崩式に失点することとなってしまったと考えられます。
落ち着いて問題文をもう少し注意深く読み解くことができていれば、解答が誤りであることは容易に気づけたはずで、十分目標点には達していたと思われます。
受験生全体の解答傾向は?
I〜II(2)までについては、合格者、不合格者とも基本的な考え方はできていましたが、不合格者には符号ミスが散見されました。
II(3)以降も、間違えた人は思い込みによるミスと思われるものが多く、設問が連鎖しているためにそれ以降が正解に至らなかったというパターンが多かったようです。
合格者には設問途中でのミスが比較的少なく、そのため最後まですんなり解いている答案が多かったため、結果的に得点を積み上げられたということかと思います。
やや長文で一見面倒そうには見えますが、基本的ともいえる問題で、問題の状況を的確に把握できたかどうかが合否の分かれ目となったようです。
Z会が独自作成。この大問の採点基準はこちら!
大学から採点基準が公表されていない中、Z会では、実際の受験生の再現答案や得点開示データを毎年収集し、綿密に分析。長年の分析に基づいて作成した独自の「採点基準」で、本番に限りなく近い採点を可能にしています。
「2020年度入試 東大物理 第3問」の採点基準
配点20点
I:6点、II:(1)〜(3) 各2点(計6点)、Ⅲ:(1)〜(4) 各2点(計8点)
採点のポイント
Ⅰ:W1,W2,W3に各2点(符号ミスは各-1点)
Ⅱ:(1)、(2)の符号ミスは各-1点、(3)は考え方ができていれば1点
Ⅲ:(2)、(4)は考え方ができていれば1点
一言コメント:各過程の変化を正しく把握できたかどうかが問われました。
Z会の『過去問添削』で、東大対策を進めよう!
Z会では、特別講座『過去問添削』を開講中です。長年の分析に基づく正確な採点で現在の実力を正確に把握。そのうえで、あなたの答案に寄り添った適切なアドバイスにより、次の打ち手が明確になります。実戦力を効果的に高められる講座です。
Z会東大コース担当者からのメッセージ
合格を勝ち取るためには、まずは基本事項理解のための問題演習が不可欠です。その上で志望校対策として、過去問演習に取り組むことになるかと思いますが、様々な要素が融合された入試問題ほど、通常の問題集よりも詳しい解説が求められます。また、実際に記述答案を作成するという練習や、適切な時間配分の仕方を身をもって体験することも大切です。これらの要素をすべて満たした教材こそZ会の「過去問添削」です。問題の解答のみならず、さらに発展的な問題にも対応できる解説を熟読すること、さらに、答案の記述を客観的に評価してもらうことで、本番では自信を持って取り組むことができます。