執筆者:鈴木亮介(Z会進学教室 調布教室長/国語科)
記事更新日:2022年08月26日
「税金作文 書き方」で検索し、違和感を持った君へ ~小学6年生のあなたへ~
Z会の教室による小学6年生の学びを助けるフリーマガジン「親子で始める、中学準備」では、これまで「夏休みの読書感想文、書き方テクニック10選」、「自由研究、調べ学習もこれでばっちり! 課題解決のヒケツ、5つのステップとは?」などの記事を公開し、6年生の皆さんの書く、考える宿題をサポートしています。
今回は、毎年8月になるとZ会進学教室の国語や社会の先生がたくさんの小中学生から相談を受ける、あの宿題について解説します。「先生、税の作文ってどうやって書いたらいいんですか?」
多くの小中学校では「税に関する作文」が夏休みの宿題に課されます。小学校ではまだそうした機会がないという小学6年生の皆さんも、中学に入るとこの課題に取り組むことになると思いますので、予習のつもりで読んでみてください。
「税金は大切だ。」言うのは簡単だけど…
税金作文について、実際に私が生徒からよく相談される質問トップ3は次の通り。
1.そもそも興味がないし何を書いたらいいかわからない
2.「子どもも消費税を支払っている」「税金のおかげで道路が作られている」などワンパターンのことしか思いつかない
3.税金を払うことは大切だと締めくくっても、どうしても綺麗事感がぬぐえない
確かに、何かの会費と同じように考えると、自分の財布からお金が出ていくことに対して前向きになれないという率直な気持ちは、わからないでもありません。
とは言えせっかく「税について考え、書く」機会が与えられたのですから、ここはひとつ、知恵と工夫で楽しく学び成長できるチャンスに変えてしまいましょう。
あったらいいな、こんな税
まずは「そもそも興味がない」という皆さんへ。「こんな税金があったら面白そう」「ついつい払っちゃうかも」…ということで、自由に発想してみましょう。
「本をもっとたくさん読もう税」…年間の読書量が3冊未満の人は、この税金を納めることとする。
「お年寄りを大切にしよう税」…高齢者の支援に使い道を限定した税金とする。
…などなど。もっとも、税金は罰金ではありませんから「じゃんけんで負けたら2倍税」などは現実的ではありません。税の三原則として財務省は「公平・中立・簡素」を挙げています(財務省HP
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei2811/02.pdf より)。税負担については公平・中立であること、そして仕組みができるだけ簡素(シンプル)であることが求められます。
ところで、世界には様々な税金があります。ハンガリーでは2011年に「ポテトチップス税」という税制度が導入されました。正確にはポテトチップスをはじめとする塩分や糖分が高い食品や清涼飲料水を対象に税率を引き上げるもので、税金の徴収額が増えること以上に国民の肥満防止を期待して導入されたものですが、国民に支持されず、すぐに廃止されてしまったそうです。このように「世界の変わった税」を調べてみるのも面白そうですね。
税を考えることは国を考えること
以前「夏休みの自由研究は「お金」のことを考えてみよう」という記事でご紹介したZ会の本「99%の小学生は気づいていない!?」シリーズの『お金と社会のミライ』では、税金について次のように紹介しています。
「おうちでは、家族が働いてかせいできたお金を家族みんなのために使います。市区町村や都道府県、国では、おもに税金をみんなのために使います。税金とは、みんなが健康に幸せに安心して暮らせるよう、みんながはらうお金のこと。この税金がどう使われるかで、わたしたちの生活は大きく変わります。」
以前、財政難の自治体が冬の記録的大雪のために当初の想定以上の除雪が必要になり、「お金がないので道路の雪かきができなくなりそう」ということが話題となりました。税金が私たちの生活を支えていることを改めて実感できるニュースと言えそうです。
「税金作文」において考えるポイントは2点。「どうやって集めるか」と、「集めた税をどのように使うか」です。自分の住む国や自治体のことを考え、「こんな国にしたい」「こんな町にしたい」ということを自由に考えてみましょう。
そのときに大切なのは、「限られたお金を何にどのくらい使うか」、「一部の人だけに偏らず、全ての人にとってためになる使い方になっているか」。理想を描きつつ、現実的に限られた予算を分配するという視点も持つと良いでしょう。
考察と論拠のバランスが大切
小学6年生の皆さんにとってはやや難しい言葉を使いますが、「税の作文」では自分の考えたこと(=考察・自説)と、実際に見聞きした事例・データなど、意見を支える情報(=論拠)のバランスが大切です。
自分の考えたことだけをつらつらと書きなぐるのでは、客観性や現実性が低く、説得力の弱い文章になってしまいます。と言って、実際に行われていることや調べてわかった知識だけを書き並べるのでは、作文になりません。
そのバランスを取るためには、身近な社会問題を出発点に考えてみると良いでしょう。最近話題になってたり、身近に当事者がいる「困ったこと」を挙げ、何が原因となり、どうすれば解決できるのかを調べつつ考えていき、税の話と結び付けていくと良いでしょう。
それでもやはり、税制度の大切さに実感がわかないという人は、必ずしもそうしたまとめ方をしていく必要はないように思います。大切な人を守るために、今の自分にはどのようなことができるだろうか…そこから考察を始めてみると良いですよ。
「99%シリーズ」特設サイトURL
https://www.zkai.co.jp/books/99series/
★読書感想文メモもダウンロードできます!
この記事の著者
鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。