令和7年度以降の共通テストに関する検討状況~出題方法・出題の方向性・得点調整~
Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。
大学入試センターは、2022(令和4)年11月に、新しい学習指導要領(平成30年3月に告示)に対応した2025(令和7)年度以降の大学入学共通テスト(以降、共通テスト)に関する現在の検討状況について公表しました。
(大学入試センターHPより)
公表された内容は多岐にわたりましたが、大きく以下のトピックに分けることができます。
■ 出題教科・科目の出題方法等の予告(配点や時間など)
■ 問題作成方針に関する検討の方向性
・科目の問題作成方針に関する検討の方向性及び試作問題
■ 得点調整
・『情報Ⅰ』と『旧情報(仮)』の受験者数が1万人未満の場合も得点調整の対象とすることについて
・得点調整の実施条件・方法の改善に関する意見募集について
「科目の問題作成方針に関する検討の方向性」はあくまで方向性であり、問題作成方針については、令和5年6月に公表する予定としています。
「得点調整の実施条件・方法の改善に関する意見募集について」はその他の公表内容とはタイプが異なる内容となりますが、「『情報Ⅰ』と『旧情報(仮)』の受験者数が1万人未満の場合も得点調整の対象とする」という情報の理解の助けとなるため、本記事では同時に取り上げることにしました。
2025(令和7)年度以降の共通テストの各教科トピック
前述したように、今回公表された内容は多岐にわたるため、大学入試センターではポイントを端的に紹介した資料を公開しています。
※本記事では、内容がより分かりやすくなるように、筆者が一部下線などの加筆をおこなっている箇所がございます。
全体(令和7年度試験の主な変更点)
国語
● 必履修科目「現代の国語」*1「言語文化」*2で育成する資質・能力を、試験問題全体を通して評価する。
*1 話合いや論述などの「話すこと・聞くこと」、「書くこと」の領域の学習の充実を含め、実社会における国語による諸活動に必要な資質・能力を育成する科目
*2 上代から近現代に受け継がれてきた我が国の言語文化への理解を深める科目
● 様々な資料から読み取ったことを基にレポートを書くといった言語活動を重視し、多様な資質・能力を問うことができるよう、大問を一つ追加。
● 配点は近代以降の文章が3問110点、古典が3問90点(古文・漢文各45点)
● 各大問では、試験時間(90分)との関係に留意しつつ、それぞれの題材の意義や特質を一層生かすよう工夫する。
● 試作問題では、新たな大問の例を2例紹介。
地理歴史・公民
● 試作問題では、必履修科目*1を組合せた科目と、必履修科目を学習した後に履修する選択科目*2を組合せた科目の構成や内容を紹介。
*1「地理総合」、「歴史総合」、「公共」
*2「地理探究」、「日本史探究」、「世界史探究」、「倫理」、「政治・経済」
● 計6科目の中から1~2科目を選択解答するが、2科目選択の場合、選択できない科目の組合せがある。
数学
● 数学①②ともに試験時間が70分となる。
● 試作問題では、新たに出題範囲となる内容の問題例と、それを含めた場合の全体の問題構成のイメージを紹介。
※ 試作問題では、新規の内容を含む部分以外は、過去の共通テストで出題した問題を使用。
( 令和3年度本試験(1月17日実施)の問題を基にしつつ、配点に応じて、問題の分量を調整している。)
理科
● 一つの時間帯の中で、最大2科目を受験する形となるが、選択できる科目の形については従来どおり。
(「基礎」を付した科⽬は、2つで1科⽬として扱う)
● 旧教育課程履修者のための経過措置科目は設定しないが、旧教育課程履修者が選択可能な選択問題を出題する場合がある。
英語
● 出題形式は「リーディング」形式と「リスニング」形式(原則、両方を受験)
● 5領域の力を総合的に育成する「英語コミュニケーションⅠ」「Ⅱ」と、発信力の強化をねらいとした「論理・表現Ⅰ」の内容に対応
● 文字と音声の特性を生かして、「聞く」「読む」「話す」「書く」を統合した言語活動で育てた総合的な英語力を測ることを重視。
● そのための工夫の例として、試作問題では、
- 賛否の意見を書くために複数の資料を読んで主張をまとめ論拠を整理する場面
- 書いた英文を推敲する場面(以上リーディング)
- 講義の要点を確認し考えを述べ合う場面(リスニング)
を扱った問題の例 を紹介。
情報
● 『情報Ⅰ』の試作問題では、4つの大問で、学習指導要領において育成することとしている力を、幅広く問う形となるよう作成。(配点は100点)
● 経過措置科目の『旧情報(仮)』は、「社会と情報」及び「情報の科学」の共通問題と、それぞれ固有の内容に対応した選択問題から構成する試作問題を紹介。
● 得点調整は通常、受験者数が1万人未満の科目は対象外となるが、令和7年度の『情報Ⅰ』『旧情報(仮)』は、受験者数が1万人未満となっても、得点調整の対象から除外しない。
● 令和7年度試験の問題作成に向けて、試作問題を基にしつつ、大学生を模擬受験者としたモニター調査を参考としたり、様々な機会を通して高校関係者の意見を伺うなどして、問題の内容、分量、程度等に留意した問題となるようにする。
2025(令和7)年度共通テストで起こりうる得点調整の懸念点
前掲した資料の通り、令和7年度の『情報Ⅰ』『旧情報(仮)』については、受験者数が1万人未満となっても、得点調整の対象から除外しないことになりました。通常であれば、受験者数が1万人未満の科目は得点調整の対象外となるため、例外的な措置となります。
2025(令和7)年度の共通テストは『情報Ⅰ』『旧情報(仮)』だけでなく、他の教科・科目でも大きな再編が行われ、得点調整が発生することが予想されます。しかし、現在の得点調整の実施方法だけでは不公平感や混乱につながるような恐れがあるため、見直しが検討されています。
現状の得点調整方法は以下の通りです。
- 対象科目間で、原則として、20 点以上の平均点差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合には、得点調整を行う。
- 分位点差縮小法に基づき、平均点差が 15 点となるよう、点数を調整する。
- 平均点が最大及び最小以外の科目についても、素点の平均点差が同一の比率で縮小されるよう調整する。
- 受験者数が1万人未満の科目を対象外とする。
共通テストでは、素点に加え、各科目の受験者集団における相対的な位置を9段階で示す「段階表示(スタナイン)」を公表しています(下図)。
基本的には、平均点差が一定の範囲に収まれば、段階表示の同段階間での得点差も一定の範囲に収まりますが、科目間の得点分布の形によっては、平均点差を一定の範囲に収めるように調整しても、段階表示の同段階間で大きな得点差が残ることがあるようです。(下図)
特に、2025(令和7)年度共通テストにおいては、新たな科目が出題され、旧教育課程履修者(既卒者)のうち希望する受験生のみが受験する経過措置科目も設定されます。こうした科目構成や内容等の変化により、科目間での得点分布の形が大きく変わり、結果として、段階表示の同段階間で大きな得点差が生じ、不公平感や混乱を招く可能性があるため新たな実施方法を検討しているようです。
今のところ以下のような実施方法が検討されており、この実施方法に関する意見募集が行われています。
- 対象科目間で、次のいずれかが生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められる場合には、得点調整を行う。
– 20 点以上の平均点差が生じた場合
– 15 点以上の平均点差が生じ、かつ、段階表示の区分点差*が20 点以上生じた場合
*各科目の成績の段階表示(スタナイン)の各段階の境目となる、上から4%、11%、23%、40%、60%、77%、89%、96%の分位点(得点)の科目間の差 - 分位点差縮小法に基づき、区分点差が最大となる2科目の間の区分点差が最大 15 点となるよう、点数を調整する。
ただし、その調整は元の点数を下げない範囲で、また、平均点の順序を保つ範囲で行うこととし、その結果、区分点差が 15 点以上に止まる場合も許容する。 - 区分点差が最大となる2科目以外の科目についても、区分点差が同一の比率で縮小されるよう調整する。ただし、その際にも、上記の点数を下げない、平均点の順序を保つという条件を課す。
【執筆担当者より】Z会ソリューションズの対応について
Z会ソリューションズにおいても、2025(令和7)年度の共通テストに向けた準備を進めております。
現在は、アンケートを実施しながら先生方のご意見をお伺いしている段階ですが、「数学II、数学B、数学C」の選択問題で新たに登場する「統計的な推測」分野を扱った書籍の発刊を予定しています。
今後も先生方のご意見を伺いながら最適な商品・サービスをご案内できるように努めてまいります。
<アンケート実施結果をまとめた記事>
2022年度「情報Ⅰ・Ⅱ」に関する実態調査アンケート~結果レポート~
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