普通科の改革が進められようとしている〜高校の新学習指導要領スタート〜
Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。
2022(令和4)年度から高等学校で新しい学習指導要領が施行されました。
1人1台端末の環境整備が小学校・中学校に続き高等学校でも進められることや、「情報Ⅰ」「総合的な探究の学習」「歴史総合」「公共」などの新しい教科・科目もスタートします。
このようなデジタル環境の整備やカリキュラム変更以外にも、2022(令和4)年度は高等学校教育の制度改正が施行される初年度にあたり、特に「普通科改革」は大きな変化の一つと言えるでしょう。
今回は、高等学校教育の制度改正に触れつつ、「普通科改革」についてまとめていきたいと思います。
4つの制度改正の概要
今回取り上げている制度改正は、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して(答申)」と「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(審議まとめ)」(以下ワーキンググループ)等を踏まえて実施されています。
ワーキンググループの資料に目を向けてみると、高等学校を取り巻く現状の課題認識が以下のように整理されています。
● 中学校を卒業したほぼ全ての生徒が進学する教育機関となっている。
● 多様な入学動機や進路希望、学習経験など様々な背景を持つ生徒が在籍している。(特別支援が必要な生徒や外国籍の生徒への対応も含む)
● 「心身の発達及び進路に応じ」た教育を施すことを目的とする高等学校教育は、個別最適な学びを支援する機能を強化していくことが求められる。
● 全体的な傾向として、学校生活への満足度や学習意欲は中学校段階に比べて低下している。
● 教育活動を高校生を中心に据えることを改めて確認し、その学習意欲を喚起し、可能性及び能力を最大限に伸長するためのものへと転換することが急務である。
● これからの各高等学校には、特色・魅力ある教育を行い、生徒一人一人が主体的に学びに取り組むことを支援していくことが求められる。
● 産業構造や社会システムが急激に変化している現代においては、特定の分野に関する知識及び技能だけではなく、多分野に関する理解や、新たなことを学び、挑戦する意欲を育むことが不可欠である。
● 特に普通科においては、多くの生徒がいわゆる文系・理系に分かれ、2年次以降、特定の教科について十分に学習しない傾向があるとの指摘がある。
新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(審議まとめ)
上記の現状から以下の4つの制度改正が示されました。
新しい時代の高等学校教育の実現に向けた制度改正等について(概要)
普通科改革の概要
ここでは、4つの制度改正から「普通科改革」に焦点を絞って概要をまとめていきたいと思います。
普通科改革に向けた論点は以下の通りです。
● 普通科は、高校生の約7割が在籍している。
● 生徒の能力・適正や興味・関心等を踏まえた学びの実現に課題がある。
● 普通科においても、生徒や地域の実情に応じた特色・魅力ある教育の実現が必要。
● 普通科において特色・魅力ある教育を行うにあたっては、総合的な探究の時間を軸として、生徒が社会の持続的発展に寄与するために必要な資質・能力を育成するための多様な分野の学びに接することができるようにする。
個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会より
この論点を受けて、実施されたのが、高等教育の「普通教育を主とする学科」の種類の弾力化・大綱化です。
これまで、「普通教育を主とする学科」は、「普通科」のみとされていましたが、「普通科」に加えて、「学際領域学科」「地域社会学科」「その他普通科」を加えて学校設置者が新しい学科を設置することができるようになりました。(下図参照)
個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会より
この学科を設置することで、全ての高校生が共通して身につけるべき資質・能力を土台とした上で、文系・理系の類型に捉われずに、生徒の多様な学習ニーズに対応し、生徒の特性等を踏まえた学習の機会を提供することを目指していくようです。
個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会より
普通科改革のための予算(新時代に対応した高等学校改革推進事業)
新しい学科の設置も含めた普通科改革のために文部科学省は2022(令和4)年度において2億円の予算額を用意し、以下の3つの事業に取り組もうとしています。
すでに「①普通科改革支援事業」「②創造的教育方法実践プログラム」については、2022(令和4)年2月2日から全国の高等学校に向けた公募を開始しています。
個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会より
今回「普通教育を主とする学科」に新しく設置された学科は、専門学科、総合学科等とどのように違うのかということについて、議論の余地を残しているようです。
特に専門学科については、「特定の専門的な分野や職業分野に関する知識及び技能の習得を主たる目的とする」とされていて、「普通教育を主とする学科」とは違うものであるとされているものの、理数や国際関係などに関する学科については、「普通教育を主とする学科」の枠組みに統合することも検討される必要があるとワーキンググループでは語られています。
今回の事業ではこのように学科の棲み分けといった議論の余地が残っている箇所について検証する役割も担っていくのではないかと推測されます。
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