変化の激しい時代を生きる生徒に必要な「課題解決能力」の重要性

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Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。

今の時代は「課題解決能力」が必要であると、様々な場面で耳にするようになりました。学校教育はもちろん、ビジネスにおける人材育成でも同じように重視されています。

文部科学省のホームページに掲載されている下記の資料にも、総論の「1.急激に変化する時代の中で育むべき資質・能力」の中で次のように記されています。

「予測困難な時代」であり,新型コロナウイルス感染症により一層先行き不透明となる中,私たち一人一人,そして社会全体が,答えのない問いにどう立ち向かうのかが問われている。目の前の事象から解決すべき課題を見いだし,主体的に考え,多様な立場の者が協働的に議論し,納得解を生み出すことなど,正に新学習指導要領で育成を目指す資質・能力が一層強く求められていると言えよう。

出典:「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現~(答申) 令和3年1月26日」(中央教育審議会)((https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/079/sonota/1412985_00002.htm)(2022年7月20日に利用)

社会の変化に合わせて学習指導要領が変わり、それに伴い大学入試改革が行われていることはご存じかと思います。「大学入試のあり方に関する検討会議 提言」においても下記のように記載されています。

このように変化が激しく先の予測が困難な今の時代において「課題解決能力」の重要性は十分に語られていますが、
一方で、課題解決能力と言われても、具体的にどのような能力かすぐには思い浮かばない先生方もいらっしゃるのではないでしょうか。

生徒の課題解決能力を育むサポートをするにあたり、先生方が課題解決のために必要な能力を明確に理解することは重要です。
今回はZ会が課題解決に必要な能力として重視している4つの力をご紹介します。ご指導のご参考にしていただければと思います。

 

課題解決において特に重要な4つの力

まずは、課題解決能力がどのような能力か簡単に説明します。
Z会では課題解決能力を「答えの見えない大きな問いに対して、協調的かつ主体的に自らの解を導いていく能力」ととらえています。

課題の設定から最終的に生徒が自分の意見を表現するまでに次の3つの段階をたどると考えています。

また、それぞれの段階で必要になる能力を3つの力として次のように定義しています。

  1. 課題を見極め、情報を収集する力
  2. 論理を構築する力
  3. 意見を構築する力

さらに、それぞれの段階で収集した意見をどの程度活用できているかを「4. 多様性受容能力」と呼んでいます。

課題解決において特に重要な4つの力

Z会が「課題解決能力」において主に必要と考えるのは1~3それぞれの段階で必要になる力と、全ての段階で共通して必要になる4の能力です。
次からは1~3それぞれの段階にどのような力が必要か、また「4多様性受容能力」とはどのような能力かを詳しく紹介していきます。

 

1. 課題を見極め、情報を収集する力

課題を設定してすぐの段階で必要になる力です。まず、何について考えるべきか課題を見極め、解決のためにどのような情報が必要になるのか考察する力のことを指します。
「課題を見極め、情報を収集する力」は、下記3つの力に細分化できます。

  1. 論点設定力
  2. 課題分析力
  3. 情報収集力

課題を見極め、情報を収集する力

論点設定力とは

課題を解決するにあたって、「これから何について考えていかなくてはならないのか」を明確にとらえられる力を指します。
解決すべき課題を最初の段階できちんとつかめていないと、最終的な自分の意見の方向性が異なってしまう可能性があります。課題と意見にズレが出ないためにも、何について答えれば良いのかを常に意識して、思考を深められる力が欠かせないと考えます。

課題分析力とは

情報収集で得た複数の資料を正確に理解し、自らの論を作る材料とすることができる力を指します。
情報収集で得た資料は、まずはその内容を正確に理解することが求められます。正確な理解には基本的な「読解力」が必要ですが、それに加えて次の3つの点を意識することも大事です。

① 資料のテーマをつかむ
② そのテーマについて筆者はどのような意見・見解を述べているのかをつかむ
③ それが解決すべき課題とどう関連しているのかをつかむ

特に③を正確に理解した上で、自らの論を作る材料とできるかがポイントです。

情報収集力とは

他者の意見を収集する際、正誤に注意しながら複数の角度から課題に関する物事を検討した上で、適切な情報を選択する力を指します。
答えが見えにくい課題について自分の意見を考える際には、より多様な視点を持つことが求められます。他者の意見を収集することは、物事を複数の角度から検討することに繋がるという点で大切です。
ただし、他者の意見を収集する際に誤った方向のものを参考にしては意味がありません。情報収集力において情報の信憑性や正誤には十分に注意を払う必要があります。

 

2. 論理を構築する力

収集した複数の情報の関係性を考え、その関係性の中から論理を深めた上で、筋道を立てて説明する力を指します。
「論理を構築する力」は、下記2つの力に細分化できます。

  • 論理構築力
  • 批判的考察力

2. 論理を構築する力

論理構築力とは

他者に伝えたいことを筋道立てて説明する力を指します。
他者に自分の意見や考えを理解してもらうためには、伝えたいことを筋道立てて説明することが求められます。どのような順序で説明すると伝わりやすいのかを意識しながら、意見を作れるのが理想です。意図した通りに伝えたいことが伝わることで、他者と力を合わせて課題解決に取り組めます。

批判的考察力とは

集めた情報に対して、「なぜ?」「本当に?」という批判的考察を適切にできる力を指します。
集めた情報をそのまま用いても、新しい意見・見解には結びつきません。自分なりに「なぜ?」「本当に?」と問いをぶつけてみることで、初めて論に深まりが生まれます。
また、疑問を持つことは、その情報を発信した人の真意をつかむことにもつながり、最終的に様々な立場をふまえた、強固な論を作るためには欠かせません。

 

3. 意見を構築する力

収集した情報を元に、自分の意見を形作っていける力を指します。
「2 論理を構築する力」と似ていると思われた方もいるかもしれませんが、あえて分けているのには理由があります。課題解決のためには説明が論理的であるのはもちろん、生徒独自の意見、つまりオリジナリティあるアイデアや解決策を考え、言葉で提示できる力も重要と考えるからです。
極端な例を考えてもらうと分かりやすいと思います。どんなに説明が論理的で分かりやすかったとしても、肝心の中身が当たり前過ぎる内容であれば聞いている方は戸惑うことでしょう。逆に、アイデアは素晴らしくても、論理的でない説明では相手に意図した内容はなかなか伝わりません。
他者に意見を伝える際は、論理を構築する力も意見を構築する力もどちらも重要なポイントです。

「意見を構築する力」は、下記2つの力に細分化できます。

  • 創造的思考力
  • 提案・提言力

3. 意見を構築する力

創造的思考力とは

与えられた情報を自らの見解に引き寄せ、自分独自の意見を生み出す力を指します。
与えられた情報をそのまま用いるのではなく、その情報を踏まえて自分はどうするかを意識して考えられる力が課題解決には求められます。正しい・間違っているといった観点にこだわりすぎずに、自由に思考することが大事です。

提案・提言力とは

自分の意見を明確に力強く相手に表明する力を指します。
どのような見解であれ、生徒が各々で導き出した結論であれば自信を持って相手に伝えられるのが理想です。もちろん、提案・提言に至るまでの過程で深く考えることができなかった結果として、自信が持てずに力強さに欠けてしまうこともあります。その場合は結論までの過程を見直す必要があります。

 

課題解決に必要な力 4. 多様性受容能力

4. 多様性受容能力

他者の意見を踏まえて自分の意見・見解を示す力を指します。
集めた情報や他者の意見を元に自分の考えを見直そうとする姿勢は、より多くの立場の人が納得できる意見を考えるために欠かせません。
ポイントは、他者の意見を自分の意見に取り入れられるかどうかではなく、他者の意見を踏まえて自分の意見・見解を示せるかどうかです。
例えば、他者の意見に欠けている視点をつかみ、その内容に言及することでより多くの人を納得させる意見を新たに作るといったことです。実際のグループワークなどでも、他者の意見をまずは受容し、その使い方、活かし方を考える姿勢を持てる力が求められています。

 

総合的な探究の時間やグループワークの時間でサポート

生徒に課題解決に必要な4つの力を意識してもらえるようサポートすることで、課題解決能力は徐々に身に付くと考えます。意識してもらう場としては、総合的な探究の時間が適しているのではないでしょうか。

もちろん、普段の授業の中でも取り組めることはあります。4つの力のどれもが他者と関わることを求められる能力です。普段の授業でも生徒同士で意見を出し合う時間を設けるのも有効ではないでしょうか。

数学の授業において生徒同士で解答に行きつくまでの方法を話し合う時間を取るなどの工夫をされている先生もいます。

総合的な探究の時間や各教科の授業を、社会に出る前のトレーニングの場としてもとらえて課題解決能力の向上をサポートしていただくのはいかがでしょうか。

また、課題解決能力を身につけてもらうためには、今どのぐらいの能力があるのかを定期的に可視化してあげる取り組みも大事です。生徒自身、今の自分を知ることで、自分の将来のために今後どの能力や力を意識するべきか考える機会になります。
また先生方も生徒の今の能力を知ることで、より効果的に成長のサポートをできるのではないでしょうか。

 

Z会サービスの紹介

Z会では、課題発見・解決能力を可視化する記述式アセスメントをご用意しています。今回ご紹介した4つの力、「1. 課題を見極め、情報を収集する力」「2. 論理を構築する力」「3. 意見を構築する力」「4. 多様性受容能力」がどの程度あるかを見ることができます。

Z会のサービスを活用することで、生徒一人ひとりの能力はもちろん、学校全体の傾向が明確になり、能力向上のサポートを行いやすくなるのではないでしょうか。

例えば、ある大学で入学が決まった生徒に対して、こちらのアセスメントを実施したことがあります。
文章から情報を収集し、自身の論を立てるというのはどの生徒も得意だったのですが、情報を正しく理解し分析するというのが苦手な生徒が多いという結果が出ました。
文章の構造を理解できていないためか、書き手の主張と対立する意見を書き手の主張として抜き出し、論の展開に活用している回答が多く見られたのです。
生徒の課題解決能力を育むためには、まず情報を正しく理解し分析する力を伸ばす必要があると明確になりました。

今後の学校としての指導方針等を決める材料としてもぜひご活用いただければと思います。

 

まとめ

今回の記事では、変化の激しい今の時代に必要な「課題解決能力」がどのような能力なのかをご紹介しました。先生方が「課題解決能力」を明確に理解することで、生徒が社会で活躍できる人材になれるよう、より効果的なサポートができると考えます。
課題解決のために欠かせない主な力として、Z会では「1. 課題を見極め、情報を収集する力」「2. 論理を構築する力」「3. 意見を構築する力」「4. 多様性受容能力」この4つを重視しています。
総合的な探究の時間や各教科で4つの力を生徒に意識してもらい、授業を社会に出る前のトレーニングの場としてとらえ、課題解決能力の向上をサポートするのが理想だと考えます。
また、定期的に能力を可視化することで、どのようなことに注意をすれば良いのかに気が付くことができるため、アセスメントなどを導入することもお勧めです。

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