Z会の東大コース担当者が、2021年度入試の東大物理を徹底分析。受験生の再現答案や得点開示データをもとに、合否を分けた「差がつく一問」を選定し、東大物理の攻略法を詳しく解説します。
まずは、2021年度の「東大物理」を俯瞰しよう
はじめに、問題構成や出題傾向をおさえて、「自分が受ける入試問題」を正確に把握しましょう。
上手に時間配分して得点を最大化しよう
易化した2020年度に比べ、若干難しくなった印象です。すべての大問を時間内に正確に解き切ることは難しいので、上手に時間配分して得点を最大化することが合格へ条件となったでしょう。
合否の分かれ目は?
受験生の答案データを見てみると…
第1問 | 第2問 | 第3問 | 合計 | |
---|---|---|---|---|
配点 | 20 | 20 | 20 | 60 |
合格者平均 | 14.5 | 5.7 | 8.5 | 28.8 |
不合格者平均 | 11.7 | 3.3 | 6.9 | 21.9 |
合格者標準偏差 | 3.80 | 4.50 | 4.95 | 8.65 |
不合格者標準偏差 | 4.22 | 2.18 | 3.47 | 7.50 |
Z会集計の再現答案からZ会で推定した配点を当てはめ、大問ごとの得点率を出すと、上表のような結果となりました。合格者、不合格者とも、全体的に第1問の点数が高く、第2問の点数が低かったのですが、第3問は答案ごとの出来不出来が大きく、この問題が得点に大きく影響したようです。
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差がつく一問は
≪第3問≫
差がつく一問の注目ポイント
第3問は光ピンセットの原理を扱った問題です。物理的にとくに難しい部分はないのですが、光線を幾何的に正確に捉える必要があり、東大らしい問題と言えるでしょう。正確に近似処理をしようとすると大変ですが、大雑把な近似で構わないという見極めが必要な問題でした。第3問ということで時間的な余裕がなかったせいか、最初の方の設問だけ解答している答案も多く見られました。
受験生の再現答案&添削を見ながら、差がつくポイントを確認しよう
Z会では、受験生が作成したこの大問の再現答案を、独自の採点基準に基づいて添削しました!
Z会が採点した結果は、20点中8点。Z会が設定した目標点である14点を下回る結果となりました。
それでは、この答案には、「どんな要素が足りなかったのか」「どういう対策をしていれば目標点に届いたのか」を詳しく見ていきましょう。
目標点とのギャップをどう埋める?
この問題は、Ⅰの設問ができるかどうかが鍵です。微粒子に入射した光が出射するまでに、その向きがどれだけ変化したかを問題の図から丁寧に求められれば、後は設問の誘導でスムーズに解けます。この向きの変化でミスしたことが致命傷になっています。その後の考察がきちんとできているだけに非常に惜しい答案です。このため4点失点しています。さらに、Ⅰ(3)、(4)の向きを答える指示を見落としたせいで2点失点しました。これらの誤りがなければ目標点に達していました。
受験生全体の解答傾向は?
最初のⅠ(1)、(2)は基本問題で、ほぼ全員が正解できていましたが、(3)以降について、再現答案にあるように光の向きの変化のミスが、不合格者にはかなり多く見られました。その後の設問に大きく影響する部分だけに、もう少し丁寧に考えることが必要でした。時間的な余裕がないとつい思い込みからミスしやすい部分ではありますが、ここがすんなりできている人は、その後も流れに乗ってかなりの点数を積み上げていただけに、惜しまれます。物理的にそれほど高度な考察は必要ではなく、素早く正確に処理する力が求められていました。
Z会が独自作成。この大問の採点基準はこちら!
大学から採点基準が公表されていない中、Z会では、実際の受験生の再現答案や得点開示データを毎年収集し、綿密に分析。長年の分析に基づいて作成した独自の「採点基準」で、本番に限りなく近い採点を可能にしています。
「2021年度入試 東大物理 第3問」の採点基準
配点20点
Ⅰ(10点):(1)、(2)各1点、(3)3点、(4)2点、(5)3点
Ⅱ(4点):(1)、(2)各1点、(3)2点
Ⅲ(6点):(1)2点、(2)3点、(3)1点
採点のポイント
Ⅰ:(3)は向きの変化の角度に1点。(5)はθ、φの近似に各1点
Ⅲ:⑵は考え方ができていれば2点
一言コメント:光線の図を正しく把握できたかどうかが問われました。
Z会の『過去問添削』で、東大対策を進めよう!
Z会では、特別講座『過去問添削』を開講中です。長年の分析に基づく正確な採点で現在の実力を正確に把握。そのうえで、あなたの答案に寄り添った適切なアドバイスにより、次の打ち手が明確になります。実戦力を効果的に高められる講座です。
Z会東大コース担当者からのメッセージ
合格を勝ち取るためには、まずは基本事項理解のための問題演習が不可欠です。その上で志望校対策として、過去問演習に取り組むことになるかと思いますが、様々な要素が融合された入試問題ほど、通常の問題集よりも詳しい解説が求められます。また、実際に記述答案を作成するという練習や、適切な時間配分の仕方を身をもって体験することも大切です。これらの要素をすべて満たした教材こそZ会の「過去問添削」です。問題の解答のみならず、さらに発展的な問題にも対応できる解説を熟読すること、さらに、答案の記述を客観的に評価してもらうことで、本番では自信を持って取り組むことができます。