化学 – 共通テストの分析&対策の指針

投稿日時:2024年1月15日

Z会の大学受験生向け講座の化学担当者が、2024年度の共通テストを分析。出題内容や「カギとなる問題」の攻略ポイント、次年度に向けたアドバイスなどを詳しく解説します。

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共通テスト「化学」の出題内容は?

まずは、科目全体の傾向を把握しましょう。分量、問題構成、難度などを解説します。

試験時間と配点

時間 / 配点:60分 / 100点


全体の傾向

●大問数は5のままであったが、マーク数は35から31と4つ減少した。実質の解答数は2023年度と同じ29であった。見慣れない題材が出題されたり、解法の方針が立てにくい問題がみられたりしたため、2023年度と同様に時間のやりくりに苦労するセットであった。計算問題の分量が減少したため、解答時間に対する負担感は2023年度よりもやや減少した。

●正答を2つ選ぶ問題が出題された。また、2023年度に出題された、数値を桁ごとに解答する問題や、方眼紙を用いる問題は出題されなかった。

●2023年度に引き続き、高校化学において深く学習しない内容に関する説明文を読み込み、考察する問題が出題された。


化学の「カギとなる問題」は?

次に、化学で「カギとなる問題」を見てみましょう。共通テスト特有の問題や、合格点をとるうえで重要な問題を取り上げ、攻略ポイントを解説します。

第2問:問3

電池の量的関係に関する問題。方針が立てづらく、難しく感じた受験生もいただろう。各電池の反応において、反応物と電子の量的関係を判断し、流れた電子の物質量を求められるかがポイントとなる。


第4問:問3

ペプチドの呈色反応に関する問題。典型的な題材ではあるが、アミノ酸のみならず、側鎖にアミノ基をもつタンパク質やペプチドもニンヒドリン反応を示すことを押さえておく必要があり、正確な知識が要求される問題であった。


第5問:問3 a

質量分析法という、高校化学では深く扱われない題材に関する問題。リード文の説明や与えられた例から内容を理解し、考察する能力が問われた。


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大問別ポイント/設問形式別ポイント

次に、化学の出題内容を詳しく見ていきましょう。各問の難度や求められる知識・考え方を解説します。

第1問:理論  [標準]

・問1は、配位結合に関する出題であり、平易であった。
・問2は、液体のメタンを気体にしたときに体積が何倍になるかを求める問題。液体のメタンの体積は密度から、気体のメタンの体積は状態方程式から求めればよい。
・問3は、コロイドに関する問題。コロイド粒子は、ろ紙を通過できるがセロハンの膜を通過できないということがポイントである。
・問4は、状態図などの読み取りに関する問題。a、bは、それぞれの選択肢について図と照らし合わせて検討すればよい。cは熱量に関する標準的な問題だが、氷の温度は0℃であることに気づいたうえで、氷の密度をグラフから読み取る必要があった。


第2問:理論  [やや難]

・問1は、エネルギー図に関する問題。問2は、平衡移動に関する問題。いずれも基本的な問題なので、確実に得点したい。
・問3は、電池の反応における量的関係に関する問題。方針がやや立てづらいが、流れた電子の物質量を比較することを目標とすればよい。そのためには、各電池の反応における、反応物と電子の量的関係を判断する必要がある。
・問4は、電離平衡に関する問題。aは、電離度と濃度の関係式を導けば正解できる。bは、与えられた図が難しそうな印象を与えるかもしれないが、値を読み取って電離定数の式に代入すればよく、平易である。cは、Aの減少理由は水溶液の体積が増加したためであることに気づきにくく、確信をもって正解を選ぶのがやや難しい。


第3問:理論、無機  [標準]

・問1は、無機化学に関する総合的な知識問題。正答を2つ選ぶ必要があるが、問われている知識は平易なので確実に得点したい。
・問2は、アスタチンの性質についての問題。目新しい題材だが、問題文にもあるとおりに他のハロゲン元素の物理的・化学的性質から類推すればよい。
・問3は、合金の構成元素に関する知識を問う問題であった。
・問4は、ニッケルの精錬に関する問題で、高校化学ではあまり見慣れない題材である。aは、ニッケル原子と硫黄原子それぞれの酸化数の変化を調べればよく、平易である。bでは、一見するとCuCl2が不足するように思えるが、式⑵の反応でCuClがCuCl2に戻されることにより、NiSがすべて反応するために十分な量が順次供給されることに気づけるかがポイントである。cは、陽極で生成するCl2の物質量が、陰極で生成するNiとH2の物質量の和に等しいことから立式すればよい。


第4問:有機  [やや易]

・問1は、アセトアルデヒドの製法に関する問題。一見すると細かな知識を問う問題にも見えるが、この反応を知らなくても、両辺の原子数に注目すれば正答を選ぶことが可能である。
・問2は、高分子化合物に関する知識問題。問われた内容は多岐にわたるが、いずれも基本的な内容であるため正解したい。
・問3は、ペプチドの呈色反応に関する問題。典型的な題材だが、構造式から側鎖のアミノ基を見落とさないための注意力が必要である。そのうえで、アミノ酸のみならず、側鎖にアミノ基をもつタンパク質やペプチドもニンヒドリン反応を示すことも押さえておく必要があり、正確な知識が要求される問題であった。
・問4は、医薬品を題材とした問題。aは、糖が還元性を示す原理についての知識が必要である。bは、分子内の脱水縮合によってできる環構造を考える点が目新しい。cは、芳香族化合物の反応に関する基本的な問題であり、確実に正解したい。


第5問:理論[やや難]

・問1は、質量分析法を用いた、物質の定量に関する問題。図1より、Aの信号強度は尿中のテストステロンの質量に比例することがポイントである。
・問2は、同位体の存在比から、試料中に含まれる銀の物質量を考察する問題であった。実験Ⅱにおいて、実験Ⅰで調製した溶液200mLから100mLを取り分けていることを見落とさないように注意する必要がある。
・問3は、質量分析法に関する問題。各枝問を解答する前に、説明文とメタンの例を通して質量分析法の概要を把握できるかがポイントとなる。aでは、塩素の同位体の存在比が、相対強度に反映されると推測すればよい。bは、正しい選択肢を選ぶには相対強度は重要ではなく、各原子の相対質量の和を考えれば正解できる。cは、問題文に与えられた情報からできやすい断片イオンを列挙し、それらの相対質量と最も適合する質量スペクトルを選べばよい。


攻略へのアドバイス

最後に、次年度以降の共通テストに向けた攻略ポイントを確認しましょう。化学で求められる力をふまえて、必要となる対策を解説します。

幅広い分野の正確な知識が必要

2023年度と同様に、一部大問・中問形式を含みながらも小問集合を中心とした出題が続いており、この形が定着しつつある。小問集合の場合、テーマを絞られた大問・中問形式に比べて必然的に問われる範囲が広くなることから、引き続き、全範囲を抜けもれなく学習することが肝要である。


個別試験を想定した演習を

2023年度に続いて、個別試験レベルの問題、処理に時間のかかる問題が出題されている。また、時間に対する解答の負担感も、大きい状況が続いている。個別試験レベルにおいて典型的な問題、頻出の問題は、方針に迷うことなく素早く解けるまでよく習熟しておき、本番では処理に時間のかかる問題に充てる時間を捻出できるようにしておきたい。よって、共通テストの直前であっても、個別試験レベルを想定した演習を積んでおくことが望ましい。

また、正答を導くにあたり、複数の段階を経て考える必要があり、方針が立てづらい問題が見られるようになってきている。日頃の演習の中では、答えが合えばよし、設問による誘導にのって解ければよしとするだけでなく、その誘導の意味を考えるなど、正答に至るまでのプロセスや考え方の流れを意識するように心がけるとよいだろう。


共通テスト独自の出題形式にも注意

小問集合が出題の中心ではあるが、2023年度には、数値を桁ごとに解答する問題、方眼紙を用いる問題など、共通テスト独自の出題形式も見られた。また、2024年度もグラフを扱う問題が出題されたほか、高校で深く学ばない題材についての問題、測定や実験によって得られた値から物質の量などを求める問題が出題されている。これは「観察、実験などを行い、科学的に探究する力を養う」という学習指導要領の目標を意識した現れの一つと考えられる。今後、実験レポートを題材とした問題など、より学習のプロセスを意識した出題が行われる可能性もあるので、もし出題されても面食らわないように、模試型問題などで対策をしておくとよいだろう。


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