デジタル教科書の変遷がわかる

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Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
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令和3(2021)年度からGIGAスクール構想が小中学校で本格化し、児童・生徒1人1台のデジタル端末が当たり前の時代になりつつあります。デジタル端末の普及に合わせるように文部科学省ではデジタル教科書についての議論が進みつつありあます。令和3(2021)年6月8日には「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議 (第一次報告)」 という資料が公開されています。

この検討会議は令和22020)年6月に発足され、児童生徒1人1台端末環境におけるデジタル教科書・教材の活用促進について専門的な検討を行うことを目的としてデジタル教科書の在り方に関することや、それを踏まえた制度を検討しています。

本記事ではデジタル教科書に関するこれまでの変遷と、現在検討会議等で議論されていることを整理していきます。

 

デジタル教科書に関する制度の変遷

デジタル教科書に関する議論が始まったのは最近のことで、検討を進めながら制度が変化しています。
特に紙の教科書とデジタル教科書を「どのように併用していくのか」「デジタル教科書はどのような役割を担うのか」「児童・生徒への健康に関する留意点はないか」など、メリットとデメリットのバランスを勘案しながらその議論が進められてきました。

以下に制度の変遷をまとめました。

● 平成30(2018)年:デジタル教科書は、学校教育法等の一部改正等により制度化されました。

  • デジタル教科書の定義は、「紙の教科書の内容の全部をそのまま記録した電磁的記録である」とされました。それ以外の教材は 「デジタル教材」と呼ばれます。
  • 文科省告示においてデジタル教科書の使用については、「各教科等の授業時数の2分の1に満たないこと」とされました。
    理由は児童・生徒の健康に留意したものでした。

● 令和元(2019)年度:一定の基準の下で、必要に応じ、教育課程の一部において、紙の教科書に代えてデジタル教科書を使用することができるようになりました。

● 令和2(2020)年12月:授業時数の2分の1に満たない使用について、「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」が、必要な対応方策を講じることを条件に当該基準の撤廃を提言しました。現在は基準が撤廃されています。

● 令和6(2024)年度:次の小学校用教科書の改訂時期にデジタル教科書の本格的な導入を目指しています。

 

デジタル教科書のメリット

令和3年1月の中央教育審議会答申において、「ICTは学校において『個別最適な学び』と『協働的な学び』を充実させるツールとして重要である」としており、「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議 (第一次報告)」 ではデジタル教科書を使用することの様々なメリットを説明しています。

● 教科書のデジタル化(ビューアの機能を含む)によるメリット

  • 直接画面に書き込みができ、その内容の消去や、やり直しを簡単に行うことができるため、作業に取り掛かりやすく、試行錯誤することが容易である。
  • ペア学習やグループ学習の際、デジタル教科書に書き込んだ内容を見せ合うことで、効果的に対話的な学びを行うことができる。話し合いの際に相手の意見を書き足したり、自分の意見を変更したりしながら活動できるため、より相互の理解を深めることができる。
  • ピンチアウト操作による拡大表示やポップアップで図版や写真などを拡大して表示できることによって、細かい箇所まで見ることができる。
  • 機械音声読み上げ機能により、読み書きが困難な児童生徒の学習を容易にすることができる。
  • アクセシビリティやユーザビリティが確保されれば、紙の教科書へのアクセスが困難だった障害のある児童生徒が教科書へアクセスできるようになる。
  • 端末だけを持ち運びすることとなれば、授業や家庭学習で用いる教科書の持ち運びの通学上の負担が軽減され、身体の健やかな発達にも資する。

 
● デジタル教材や他の ICT 機器・システムとの連携によるメリット

  • デジタル教材との連携がしやすく、動画や音声等を併せて使用することにより、学びの幅を広げたり、内容を深めたりすることが容易になる。
  • デジタル教科書とデジタル教材を連携させて活用することにより、教師の教材作成や児童生徒の学習状況の把握等に係る業務の効率化に繋がる可能性がある。
  • デジタル教科書に書き込んだ内容をプロジェクターや大型テレビに提示することにより、どの部分の説明をしているのかが視覚的にわかるため、児童生徒が、教師の指示や説明はもとより、他の児童生徒の説明の内容なども理解しやすくなる。
  • 授業支援システムとの連携により、教師側の画面で児童生徒がデジタル教科書に書き込んだ内容を見ながらの授業の進行がしやすくなり、クラス全体に対して特定の児童生徒の書き込んだ内容を共有して指導を行ったり、それを基に児童生徒が議論を行ったりすることができる。

 

今後検討しなければならないこと

デジタル教科書を使用するメリットや意義は十分に大きいですが、同時に検討しなければならない課題も山積しています。今回の「第一次報告」に記載されている課題を列挙するだけでも多くの検討事項があることがわかります。

● デジタル教科書に共通して求められる機能や、デジタル教材等との連携の在り方

● 障害のある児童生徒や外国人児童生徒等への対応

  • 障害のある児童生徒に対する配慮
  • 教科用特定図書等との関係
  • 外国人児童生徒等に対する配慮

● 児童生徒の健康面への配慮

● 教師の指導力向上の方策

● デジタル教科書を学校や家庭で円滑に利用するための環境整備の確保

● デジタル教科書にふさわしい検定制度の検討

● 紙の教科書とデジタル教科書との関係についての検討

また、今後はデジタル教科書だけの議論にとどまらず、新しい技術や他の会議等で議論されているサービスとの連携についても将来検討が進められていくことが示唆されています。

 

【執筆担当者より】私が目にしてきた英語の授業の今昔

私が中学生・高校生の頃は、まだセンター試験の科目としてリスニングがなかったこともあり、英語の授業では教科書に登場する新出の単語・文法事項を学び、本文を訳読したり、本文に関連する問題に取り組んだりという活動がほとんどで、音声を聞いたり、生徒同士で英会話したりするのは英検対策など限定的なものでした。結果、英文を読むことはある程度できても、英語でのコミュニケーションには今でも苦手意識をもっています。

当時とは異なり、共通テストや個別試験でリスニングが科され、教科書以外の様々な問題集でも本文の音声が準備されるようになっています。そして、その媒体がCDからデジタル端末に変わってより音声にアクセスしやすくなり、教科書の内容も日常的な場面での使用を想定したものに変わってきています。英語への苦手意識をもっている私としましても、英語を使いこなし、世界で活躍する人材が多く育っていくことを願っています。

現在、私は教材を企画・案内する立場で英語教育と向き合っており、「デジタルならではの学習体験」を通してより効果的な学びが得られるよう日々検討しております。例えば、中高生用英語教科書『NEW TREASURE ENGLISH SERIES』のデジタル教科書で、本文中の任意の単語を隠したり、対話文で片方の話者のスクリプトを隠したりする機能や、教科書に準拠したオンライン英会話『NEW TREASURE Online Speaking』で、授業で学習した内容をすぐに実際の英会話で使うという体験は、紙の教科書やCDでは実現が難しかったことだと考えています。

2021年度より『NEW TREASURE』は中学の課程変更に対応した改訂を順次行っており、デジタル教科書がスマートフォンでも利用できるようになっていきます。時代の変化に合わせ、よりよい教材・サービスをお届けしていきます。

 
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