小中高生・大学生の起業家教育~スタートアップ育成5か年計画(案)~
Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。
2022(令和4)年11月、政府は、日本におけるスタートアップ創出の抜本的強化を図るために「スタートアップ育成5か年計画 (案)」を発表しました。
現在、日本はスタートアップにおける開業率・投資額・企業参入率といった数値が諸外国に比べて低く、経済産業省が行ったスタートアップ企業1,459社に対するアンケートによると「起業家が日本で起業が少ないと考える原因」の第3位として学校教育があがっています。
「スタートアップ育成5か年計画」は、2022(令和4)年度途中からスタートしており、文部科学省はこの動きを受けて令和4年度第2次補正予算で、アントレプレナーシップ教育(起業家教育)を小中高生に対して実施するための費用として、10億円を計上しました。
小中高生等へのアントレプレナーシップ教育の拡大方策:EDGE-PRIME Initiative
すでに非常に多くのことが求められている教育現場において、新たに意識しなければならないことが増えるようにみえます。
今回は、アントレプレナーシップ教育が重要視されるようになった背景に触れ、今後、学校現場にどのようなことが求められ、どのような支援が行われるのかについてまとめました。
スタートアップに対する政府の期待と日本の現状
スタートアップ創出は、日本の社会課題を解決する手段の一つとして注目されており、その期待は投資目標額にも表れています。「スタートアップ育成5か年計画(案)」、「スタートアップ育成5か年計画ロードマップ」 によれば2027年度の投資目標額は10兆円規模を目指しており、現在の10倍以上の規模を予定しています。
経済産業省の資料においても、スタートアップの位置づけを以下のように列挙し、その重要性を説いています。
● 新興企業であるGAFAMが米国の成長をけん引。スタートアップは成長のドライバーであり、将来の雇用、所得、財政を支える新たな担い手。
● 世界で戦えるスタートアップを早急に創出しなければ日本と世界の差は開くばかり。
● 安定を求め、リスクをとらない、これまでの経済社会の制度・慣行、組織体質の変革を含め、政府が一歩前に出て、スタートアップが迅速かつ大きく育つ環境を整備する必要。
日本におけるスタートアップの現状
政府が発表した「スタートアップ育成5か年計画(案)」と、経済産業省が作成した「事務局説明資料(スタートアップについて)」によると、日本のスタートアップの現状や課題感は以下のようになります。
● 日本の開業率(※)は諸外国と比較して低い水準。(※)スタートアップ以外の企業の開業も含めた割合
● 日本で起業が少ない原因として、「失敗に対する危惧」、「身近に起業家がいない」、「学校教育」が上位に挙げられる。
● 起業家の社会的な地位に対する評価は他の先進国と比べて低く、起業は望ましい職業選択肢として捉えられていない。
● 日本もユニコーン(企業価値10億ドル超の非上場企業)を創出しているが、そのスピードは、米国のみならず中国やインドにも及ばず、世界との差が開いている状況。
● 米国等では、デカコーン(100億ドル超) やヘクトコーン(1,000億ドル超)と呼ばれる企業価値の大きいメガスタートアップも存在しており、数に加え、大きさでも世界と差が生じている。
● 日本のスタートアップに対するM&Aの件数は、欧米に比べて極めて少ない(米国 1,473 件、英国 244 件、フランス 60 件、ドイツ 49 件、日本 15 件[2020 年])。
● スタートアップに対する投資額において、米国は日本の33倍。
など
「スタートアップ育成5か年計画(案)」と「事務局説明資料(スタートアップについて)」より弊社で作成
現状打開策の方向性と目標
上記のような現状を打開するための施策を進めるにあたり、3本柱として大きな方向性が示されています。
【3本柱】
① スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
② スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
③ オープンイノベーションの推進
また、加速度的に現状を打開するために、政府では戦後の創業期に次ぐ第二の創業ブームを実現しようと考えており、5年間で以下のような目標を掲げ、ロードマップを示しています。
【目標】
<2022年資料公表時点>
日本のユニコーン数:6社(2022年)
日本のスタートアップ数:1万社(2020年)
投資目標額:8,000 億円規模
<2027年度の目標>
日本のユニコーン数:100社創出
日本のスタートアップ数:10万社創出
投資目標額:10 兆円規模
【ロードマップ】
小中高生と大学へのスタートアップ支援策
「スタートアップ育成5か年計画(案)」によると、起業を望ましい職業選択と考える人の割合は、中国では 79%、米国では 68%であるのに対し、日本は 25%と、先進国・主要国の中で最も低い水準となっています。
スタートアップに対するアンケート調査によれば、日本で起業家を増やすには「意識・風土・風潮」の改善が必要との回答が60%を占め、10 代、20代といった若い時期から、起業を志す人材の育成を進めていく必要があるとしています。
このような背景から、小中高生・大学に対するスタートアップ創出に向けた支援が進められようとしています。
特に取り組みを進めるあたっては、助言者(メンター)や事業を進めるあたっての支援者(アクセラレーター)などから支援を受ける機会を提供することが重要であるとしています。
小中高生への取り組み
小中高生を対象にして、起業家を講師に招いての起業家教育の支援プログラムの新設や、総合的な学習の時間等を活用した起業家教育の実施の拡大を図ることを目指しています。
さらに、起業家教育に体系的に取り組む高校・高等専門学校や、STEM分野で高い能力を有する小中高生に対する教育機会の支援を強化していくようです。
また、留学や海外での学習体験を積ませるための中長期的な支援の拡充を目指しています。
現在、大学生・大学院生については年間 16,000 人、高校生については年間1,400 人の留学を支援しているものの、欧米等で教育を受ける大学生・大学院生については、多額の奨学金の返済が負担になっている状況です。これらの負担感を軽減するための支援の拡充を図ることを目指すようです。
高校生等へのアントレプレナーシップ教育を推進する10名の起業家教育推進大使
令和5年1月24日、文部科学省は、スタートアップ創出に向けた人材・ネットワーク構築の取り組みの一環として、「起業家教育推進大使」を文部科学大臣から任命し、広報活動やイベントにおける講演等への協力を依頼しました。
高校生等へのアントレプレナーシップ教育を推進する機運を全国的に高めるため、経験、ネットワーク等を活かしながら、全国的なイベントなどでの講演、周りの起業家の方々へのアントレプレナーシップ教育への協力の声がけ、SNS等での発信などを行っていく予定となっています。
大学での取り組み
大学では、5年間で5,000件以上の案件について大学発の研究成果の事業化を支援することを目標としています。
特にスタートアップ・エコシステム拠点都市(東京・大阪・名古屋・福岡・札幌・仙台・広島・北九州)を中心とし、海外のアクセラレーターやベンチャーキャピタルに関わってもらいながら、グローバルな事業展開も視野に入れていくようなサポートを行います。これにより企業としての加速度的な成長を目指していくようです。
この支援にあたっては、現在に比べて 10 倍規模の5年間分 1,000 億円の基金を科学技術振興機構に新規造成する予定とのことです。
また、研究者等が企業と大学の双方で雇用契約を結ぶことができる「クロスアポイントメント制度」の導入促進を図ることや、創業初期段階にある起業者の事業拡大や成功を支援する目的のもと、通常よりも安価な賃料で事務所スペースを提供するようなインキュベーション施設を大学に整備することを目指しています。
加えて、大学や国立研究所(産業技術総合研究所等)の技術やノウハウと、大企業における経営人材をマッチングするための取組を進めるようです。
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