試行調査から読み解く共通テスト~数学編~

投稿日時:2019年11月25日

今回は、共通テスト(以下、共通テスト)の試行調査(プレテスト)の数学について、Z会の通信教育 高1・高2生向けコース数学担当より解説いたします。    

センター試験から共通テストへ

共通テストの数学では、「数学Ⅰ」および「数学Ⅰ・数学A」において、従来のセンター試験にはなかった記述式の問題が加わることになりました。これに伴い、試験時間が60分から70分に変更になっています。共通テスト作成方針では、「数式等を記述する小問3問を作成する」とされていますので、理由や過程を説明させる問題は出題されない見込みです。公表されている採点基準を見ると部分点はなく、「≦」を「<」と記述しているものは誤答とするなど、ささいなミスであってもばっさりと減点されてしまうので、マーク式の問題演習しかしていない人は注意が必要です。 また、全教科にわたる傾向として、知識そのものの定着よりも、知識を運用する力、思考力、判断力を問う問題が出題されていることが挙げられます。共通テストでは数学の活用が重視されているので、試行調査の数学の問題では、「なぜそのような計算をする必要があるのか」、「それによってどういうことを解決するのか」の説明が問題文の中で丁寧にされています。背景説明の部分と立式に必要な部分を切り分け、適切に処理することが重視されるため、情報処理量が増えている分、計算量は減っています。一つの題材についていろいろな計算をさせ、処理力を測る問題が主流だったセンター試験の数学の問題とは対照的です。 これらを踏まえ、試行調査の問題の具体的な特徴を見ていきましょう。    

日常の事象を題材にした問題

(共通テスト 平成29年度試行調査 数学Ⅰ・A第2問〔1〕)

  内容としては2次関数の最大値を求める問題なのですが、「ボランティア団体に寄付するために文化祭でTシャツを販売する」という場面設定がされており、「できるだけ利益が多くなる価格を決定する」という目的が提示されていることが大きな特徴です。突然式が出てきて、目的もわからないまま計算を進めるというセンター試験の数学の問題とは一線を画す出題になっています。 また、Tシャツの価格についてのアンケート結果が表にまとめられていて、これを利用して考えるという流れになっていることも特徴の一つです。「資料やデータ等をもとに考察する場面」が意識されていることがわかります。 さらに、Tシャツの販売数が価格の関数になっていると考えることで、表にない価格の場合についても売上額を予測することができ、数学のよさを実感できるように工夫されています。 本問の数学的な難度は高くありませんが、設定を理解するのに時間がかかるので短時間で重要な箇所を抜き出す能力が求められます。また、(3)では新たに加わった『Tシャツ1枚当たりの「製作費用」が400円の業者に120枚を依頼する』という条件の影響を考えて利益が最大になるTシャツ1枚の価格を決定する構想力が必要になります。    

ICT(情報通信技術)を活用する問題

試行調査で出された問題の冒頭部分と設問の抜粋を見てみましょう。

(共通テスト 平成29年度試行調査 数学Ⅰ・A第4問)

  図形問題では実際に図を描くことによって方針が見えてくることがありますが、空間図形ではそもそも図を描くのが難しいのに加えて、どの角度から見たときの図を描くのがよいのかがすぐには判断できないことがあります。また、点が動く様子や係数を変化させたときの関数のグラフが変化する様子を理解するにはいくつもの図を描く必要があり、大変な作業になります。こういった課題を解決してくれるのがコンピュータソフトであり、ほとんどのソフトではマウスを操作したりスマートフォンやタブレットの画面を操作することによって図形を回転したり拡大・縮小したりすることが簡単にできるようになっています。試行調査では、コンピュータソフトを活用する場面を設定している問題がいくつか出されており、上記の問題もその一つです。実際の試験中にコンピュータソフトを操作することはもちろんできませんが、正四面体をいろいろな方向から見た図を載せるなどして疑似的にコンピュータソフトを活用できるような工夫がなされています。ただ、このようなソフトに触れたことがない人は図形が動く様子を想像することができず、問題の設定を理解することが難しいかもしれません。学校の授業の予習・復習の際にコンピュータソフトを使ってみるなどして、今からソフトの扱いに慣れておくとよいでしょう。 本問は正四面体の辺の中点のうち4つを結んでできる四角形の性質についての考察から始まり、正四面体でないケースについても探究するという流れになっています(抜粋部分には含まれていません)。計算をする箇所はほとんどありませんが、設問を深く理解した上で論理的に考えていかないと正答にたどり着けず、かなりの難問であると言えます。    

●さいごに● ▼共通テストの数学のまとめ ✏ 記述式の問題では、過不足なく正確に数式等を記述する必要がある。 ✏ 場面設定がされている問題では、情報処理力が要求される。 ✏ コンピュータソフトを活用する場面を設定している問題も出題されるので、コンピュータソフトに慣れておくと有利。 ➜共通テストではセンター試験に比べて計算量が大きく減っていますが、計算力・処理力の重要性が低くなった訳ではありません。長い問題文を読んでようやくたどり着いた計算部分でミスをしてしまっては目も当てられないので、素早く正確に計算する能力は必須です。Z会の通信教育では、無理なく計算力・処理力を高められるようになっています。 ➜高1生・高2生の方は、Z会の通信教育 高1高2生向け・高校コース【本科】数学がおすすめです。基礎的な問題からスタートして徐々にステップアップすることで定理・公式等の応用の仕方を身につけることができます。また、添削指導を受けることによって共通テストの記述式問題だけでなく、個別試験にも対応できる記述力を養えますので、ぜひ活用してください! ➜受験生の方は、思考力や判断力が求められる新傾向の問題への対策が必須です。Z会の通信教育 大学受験生向けコース【専科】共通テスト攻略演習では、演習と復習を通して、「自分で考え、答えを出す力」を伸ばします。

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