【著者対談】プラクシスシリーズを使った授業実践!

Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
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2024年1月にLevel1が発刊され、4冊がそろった『英語長文読解 プラクシス』シリーズ。今回は、著者である大阪星光学院中学校・高等学校の石原健志先生(写真右)と、実際にそれを採用し、ご指導されている同校の篠木琢良先生(写真左)にプラクシス Level1の実践的な活用例を伺いました。
自主課題として優秀な『プラクシス』
(編集部、以下:編)篠木先生は、大阪星光学院で現在高校1年生をご担当され、このたび、『プラクシス』のLevel1をご採用くださいました。どのようにご活用されていますか。
(篠木先生)発刊されてすぐ、中学3年生の冬の段階から使い始めています。授業では違う長文問題集を利用していますが、『プラクシス』は自主課題として出しています。
具体的には2週間に1回の課題として、問題を解くだけでなく、「レポート」を書かせる課題も出しています。
(編)「レポート」とはどのようなものですか。
(篠木先生)生徒によってまとめる内容は様々ですが、問題を解くだけでなく、英文の構造を書いたり、解説をまとめてきたり。あるいは、関連する文法項目を文法書からまとめてくる生徒もいます。僕は、問題の方にハンコを押すのではなく、レポートの方に目を通しています。よくないんですけど、中には、問題をやらずにレポートだけやってくる生徒もいます(笑)。
解答解説は事前に渡しているので、実態はわかりませんが、場合によってはそれを丸写ししてくる生徒もいる可能性もあります。けれど、『プラクシス』の問題冊子を確認しなくても、解説ってそこだけでちゃんと完結していて、情報が詰まっているんですよね。だから、そこだけ写してきてもゼロにはならないと思います。
(石原先生)学習成果を言語化するのが大事ですね。
~生徒の実際のレポートのお写真を見せていただく~
(編)すごいですね! これは「できる」生徒さんだからできるのでしょうか?
(石原先生)いえ、必ずしもそうとは言えないでしょう。 このような活動は中学1年生から積み上げてきた成果でしょうね(※大阪星光学院では、6か年通して担任団が持ち上がり、一貫して授業を持つことが多い)。ただ優秀だからといって、しっかりとした事前指導なくできることではないでしょう。
(篠木先生)そうですね。例えば、単語学習として例文を拾ってくる生徒もいます。ですが、いきなり中学3年生でこれはきつくて、中学1年生から積み上げてきた成果かなと思います。中学では辞書を引いた時に、例えば、品詞、加算名詞or不可算名詞、動詞の語法、例文など、見出しの意味以外の箇所に目を向けるという声掛けを徹底しました。そして中3段階で長文の予習として単語の「品詞」と「例文」を含むように、単語調べを課すようにしました。その段階で不十分なものを添削して、こちらのイメージを時間をかけて共有するようにしました。
『プラクシス』を利用した単語学習
(篠木先生)単語といえば、『プラクシス』は単語の勉強もさせやすいです。例えば、STAGE2-3には be connected with ~ という形で Vocabulary に載っています。単語帳だと 生徒はconnectという見出し語にしか目がいかないんですけど、この段階の生徒にとって、この「単語の結びつきを踏まえて理解する」というのがハードルが高くて、こちらが意識を向けさせないといけないんです。
(石原先生)そう! そこ! 英単語だけでなく、長文の中で出てきた意味のかたまりで載せるのはこだわったところ(笑)! 生徒は connect っていう単語があったら、「つなぐ」の意味 でしか覚えないけれど、そうではなく「意味的チャンク」で覚えることが大事。そこは意識してVocabularyに掲載しています。
あと、『プラクシス』には指導用データとして、単語リストのデータがありますが、生成AIを利用すれば、単語と意味のフラッシュカードのスライドも簡単に作ることができます。これを授業に活用するのもいいと思いますよ。
サポートノートの活用
(編)別冊のサポートノートもご活用いただきたいところですが、こちらはいかがですか。自主課題としてもご使用になっていますか?
(篠木先生)はい、使っています。1週目はレポートを出し、その次の週にサポートノートを出させるようにしています。出したら加点、という扱いですね。授業で扱った英文をもう一度復習させる機会を作るのは難しいので、その意味で役立っています。
「読解へのアプローチ」の活用
(編)英文の前に付属する背景知識のコーナーである、「読解へのアプローチ」をどのようなタイミングで扱ったらよいか、という先生方の声もあります。
(篠木先生)レポートで、ここをまとめる生徒もいますよ。例えば、STAGE2-5では I wish と I hope の違いを扱っています。「これを知らないまま高校3年生を迎えてほしくない」と思う内容で、こういうことは文法書にも載ってはいるものの、開かせるのが大変なので、目につくところにある、というのはとてもありがたいと思います。
(石原先生)あとは、授業で一緒に読んで、大事なところに線を引かせるだけでも全然違うし、「読解のための英文法」に出てきた内容が本文のどこに出てきたか一緒に確認する、というのも「読解へのアプローチ」と「長文の中の英文法」を有機的につなぐ活動としてとても有効だと思います。
『プラクシス』を利用した定期テスト
(編)レポートも評価の対象ということですが、それ以外に当然定期テストもあると思います。定期テストではどのような出題をされていますか。
(篠木先生)定期テストは授業で扱った素材が大きな配点を占めます。自主課題の『プラクシス』も出題しますが、主に語彙の部分ですかね。あとは、出題範囲をプリントにして渡し、そこから下線部和訳を出したりしています。
(石原先生)僕だったら、定期テスト問題や理解チェックのための小テストはこんな感じで用意しますね(Level 1 STAGE1-1)。
学習の深度によって難度は調節できると思います。ここでは、この4つの問題で全部の段落を扱っていますが、これらは問題のバリエーションを載せたサンプル問題と捉えてください。テスト全体の分量を考えて、第1段落だけ出す、とか英文全体を出す、などの調整も可能です。和訳を覚えているだけではできないような問題や、本文内容、語彙、表現を再現(Replication)させる問題を出すようにしています。これは「英語を生徒たちの頭の中に残す」ためです。
(編)指導用資料の中には、石原先生に作っていただいた、本冊・別冊とは別の「定期テスト用問題」もありますから、それも先生方にはぜひご活用いただきたいですね!
長期休みの『プラクシス』活用法
(編)これから夏休みとなりますが、長期休みの課題として『プラクシス』を使うならどのように使いますか。
(篠木先生)長期休みだったら、生徒の作業量を増やしたいと思うので、全訳をさせるかもしれません。
(編)全訳ですか! それはかなりボリュームがありますね。全訳は、例えば高校3年生の課題としても有効ですか。
(石原先生)全訳は、学年によらず、それが向いている場合と向いていない場合があるでしょう。文構造を無視して目に入った単語から文意を推測するような適当な読みをしたまま入試を迎えることがないように、まずは「普通の文を普通に訳せる」つまり、主述の関係を守るようになることが英文が読めるようになると言える第一歩です。
(篠木先生)あとは、Level 1だったら、関連する文法単元の文法問題をリンクさせて課題を出す、というやり方もあるでしょうね。
(石原先生)あるいは、間違えた問題について、その理由をまとめてレポートにするという課題も有効でしょう。あとは、音読・録音させて、それを提出させる、というのも有効でしょう。
具体的には、iPadやスマートフォン、パソコンなどにある録音機能を使って、自分の音読を録音してもらいます。ICT環境が整いつつあるなら、それを先生に送信する手段があるので、それを使うと良いでしょう。RepeaTalkなどを利用しているのであれば、先生側で提出管理もできると思います。「音読ができる」というのは、英文理解ができていることを示すことにもなります。「音読」を「録音」を通じて見える形にするのはかなり意味があると思います。
授業でこそ使いたい『プラクシス』
(篠木先生)Level 1には文法のテーマがありますが、1つの英文の中に「これが載っていたら嬉しい」ということがぎゅっと詰まっています。例えば、STAGE2-4は分詞・分詞構文ですが、下線のある1か所だけではなく、後置修飾の分詞もあって、、、あ、このlead to ~ もいいですね。こういうのの「出てくる」感がよいです。
(石原先生)そう!1個だけじゃなくてね!それは最初から意識して作っていますからね。
(篠木先生)これは中学3年生の時に授業で使いたかったですよ。早く出してくれないから(笑)。1つの読解英文の中に、これだけ準動詞がまとまって出てくるのは他にはなかなかないです。
(石原先生)決まった文法項目がまとまって出てくるのは書き下ろし英文が満載のLevel 1ならではだと思います。
『プラクシス』を使った1時間の教案例
(石原先生)授業で扱うなら、例えば、このような展開が考えられるかな、と思います(Level 1 STAGE1-1)が、大事なのは、『プラクシス』を使ってどんな読解指導がしたいのか、ということだと思います。
英文が読めるようになるためには、第一に単語の意味が分かることが必須で、そして、それは選択式問題の「意味認識型」の問ではなく、「意味想起型(=英語を見て、日本語の訳語が思い浮かぶ)」の問である必要があると思うので、まずはそういう活動をします。
次に、きちんと文の構造を理解した上で意味を理解しているかを確認します。そのためには、SVを意識したチャンクごとに意味をとる活動を取り入れます。
そして、授業では英文に含まれる文法について生徒自身に気づかせ、それを引き出すことを重視しています。下記にそれをまとめました。
最後に
(篠木先生)『プラクシス』は「問題を解かせる、全訳、解説を読ませる、音声をきかせる」全部できます。みんな、『プラクシス』をやればいいと思いますよ!
(石原先生)『プラクシス』には、大事なことをぎゅっと詰めました。入試の問題をそのまま載せるのではなくて、この問題集の問題を解くことで、英語力が身につくように問題を作っています。しんどいところもあるかもしれませんが、そこに意味があると思っています。
(編)これは英語力をつけるための教材であって、ふるい落とすための試験ではない、というのが企画段階からのコンセプトでしたね。『プラクシス』の問題を解いたら自然と英文が読めている、英語の表現が身についている、そういう問題集になっているかと思います。指導用資料も充実していますので、先生方の目指す読解指導に応じて柔軟に使っていただければと願っています。今日は篠木先生、石原先生、ありがとうございました!
石原先生、篠木先生には、2024年秋に開催予定の弊社主催の「Z会 英語教育研究会」でも、読解をテーマにご登壇いただける予定です。ご興味のある方はぜひ、下記もチェックしてください。
参考:指導用資料の活用方法
『プラクシス』は、本対談で取り上げたような、ご指導に役立つ指導用資料を豊富にご用意しています。そのうちのいくつかについて、活用法をご紹介します。
★本文データ
テキストの行間やNOTESだけでは不十分な場合、行間を広くしたプリントをご作成いただくと、生徒が授業内容を書き込みやすくなります。
★本文パワーポイント
英文1文ずつ(長いものは切って)をパワーポイントの1画面に音声つきで作成しています。文構造の解説など、授業で効果的にご利用いただけます。
★単語リスト
テスト作成の他、本対談でもご紹介のありましたように、フラッシュカードの作成などにご活用いただけます。
★サポートノートLet’s Try(英作文)Google Forms 提出フォーム
(要お申込み)Google Formsを利用して、生徒の英作文の解答を集めることができます。大変なライティングの採点の効率化、また生徒同士での活動にも応用することができます。
★定期テスト用問題
和訳を覚えているだけでは対応できないような、定期テスト用問題を各英文にご用意しています。特に、Level 4 では、本冊では扱っていないT/F問題を定期テスト用問題として収録しています。
★そのほかにも豊富な指導用資料をご用意
・書き込みやすい「解答欄」シート
本冊、サポートノート、Let’s Try(英作文)のものをご用意しています。
・「サポートノート」の丸つけがしやすい、「解答入りサポートノート紙面」
Z会 英語教育研究会(オンライン)のご案内
秋に、「文法指導に根ざした長文読解(仮)」として『英語長文読解 プラクシス』の著者である石原健志先生による講演や、『プラクシス』を利用した授業実践の事例紹介を盛り込んだ研究会をオンラインで実施する予定です。
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