生徒の「数学的に表現する力」を伸ばす添削指導 ~添削指導の時間を確保できずにお困りの先生方へ~

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Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。

東京大学は「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと」の1つとして、数学的に表現する力を挙げています。

数学的に表現する力

 
数学的に問題を解くことは、単に数式を用い、計算をして解答にたどり着くことではありません。どのような考え方に沿って問題を解決したかを、数学的に正しい表現を用いて論理的に説明することです。入学試験においても、自分の考えた道筋を他者が明確に理解できるように「数学的に表現する力」が重要視されます。普段の学習では、解答を導くだけでなく、解答に至る道筋を論理的かつ簡潔に表現する訓練を十分に積んでください。
東京大学ホームページより引用:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_01_18.html)(2023年8月15日に利用)

生徒は、普段の学習で「答えが合っているか」に注目しがちです。それゆえ、テストや模試で、変数を定義しない、途中式を省くなど「自分だけがわかる答案」を作ってしまい、得点が思うようにとれない…ということは多々あります。そんな生徒の数学的に表現する力を伸ばしてあげたくても、添削指導の時間を確保できずにお困りの先生方は少なくないと思います。

そのような先生方のために、オリジナル添削シリーズ「数学講座」を2022年4月に開講しました。これまでに提出された答案や添削指導も交えながら、多くの生徒が抱える課題と、数学的に表現する力を伸ばす添削指導についてお話しします。

まずは、次の問題を見てください。

「2次関数 ハイレベル」の問題
オリジナル添削シリーズ「数学講座」「2次関数 ハイレベル」の問題

放物線の対称移動と平行移動、2つのグラフの位置関係についての問題です。数学的に表現する力が不十分な生徒は、どのような答案を作ってしまうでしょうか。

★生徒の課題1:数学の用語や記号を正しく使えない

オリジナル添削シリーズ「数学講座」の答案で、次の誤りが見られました。

【答案】
  1. 放物線C傾きは-1
  2. C-(x+1)2-4
  3. f(x)-g(x)の判別式
  4. f(x)>g(x)f(x)-g(x)>0
【添削指導】
  1. 放物線を表す式のx2の係数は「傾き」といいません。
  2. Cは放物線を表す記号です。記号と関数を「=」で結んではいけません。
  3. 判別式は方程式に対してのものです。f(x)-g(x)は方程式ではなく、関数です。
    f(x)-g(x)=0の判別式」が正確です。
  4. このように「=」を使うと、「g(x)=f(x)-g(x)」となってしまいます。
    2つの不等式が同値であることを、「=」を使って示してはいけません。 

生徒にとって、数学的に正しい表現を用いることは、思った以上に難しいことです。また、普段の学習の答え合わせで、誤って使っていることに気づくことは少ないでしょう。答案を一生懸命作って、添削指導を受けて誤りに気づくことは、知識・技能をより確かなものにすることにもつながります。

★生徒の課題2:自分だけがわかる答案を作ってしまう

答案は、自分の考えを採点者に伝えるメッセージ。採点者への配慮がなくてはいけません。ただし、模試や入学試験は解答時間が限られているので、答えにたどりつくのに必死になり、自分だけがわかる答案、つまり論理的に説明できていない答案を作ってしまいがちです。それを防ぐためには、普段の学習から、採点者が読みやすい理路整然とした答案を作ろうと意識して取り組むことが大切です。普段できていないのに、模試や入学試験でいきなりできることはないでしょう。

【答案】
  1. aが0、xtのように見えてしまう。
  2. 判別式Dを定義せずに使ってしまう。
  3. 空いているスペースに次々に書いていくため、後半の設問ほどどれが答えかわかりづらい。
  4. 式の羅列になり、どの条件から導いたかわかりづらい。
【添削指導】
  1. aが0に見えるところがあります。ミスをしやすくなりますし、
    採点者に正確に伝えるためにも、丁寧に書きましょう。
  2. Dは問題文で与えられていないので、定義してから使いましょう。
  3. どれが答えかは明記した方がよいです。
  4. 式を書くだけではなく、「(★)の式より」など、この式がどの条件から
    導き出されているかを記述すると、採点者はわかりやすいです。

本問の(3)と(4)では、「“任意の”と“ある”の違い」を問うており、Z会が実施する実力テスト「中学・高校アドバンスト」では、生徒が苦手とするテーマの1つです。オリジナル添削シリーズ「数学講座」の「2次関数 ハイレベル」ではもう1問出題していますが、2問全体を通して、数学的に正しい表現を用いて論理的に説明できている生徒の多くは、(3)と(4)の題意の読み替えがきちんとできていました。数学的に表現する力は一朝一夕では身につかない力なので、受験生になってからではなく、ぜひ高校1年生、高校2年生のうちから磨いていってほしいです。

添削指導の隠れたメリット

筆者は高校生のときにZ会の添削指導を初めて受けました。「できていない部分」への復習ポイントの指導だけでなく、次のように「できている部分」への褒める指導もしてもらえるので、成長を感じ、学習へのモチベーションがぐんぐん上がりました。学校の先生以外にも、自分の学習をしっかりサポートしてくれる指導のプロがいることは、とても心強かった思い出があります。「やる気になる」「不安が少ない」という状態で行う学習は、生徒の大きな成長につながります。

【添削指導】
  1. 立式の根拠が示されていてよいです。
  2. 判別式は問題文で定義されていないので、定義して使うことが大切ですね。
  3. 全ての条件をしっかり押さえられています。
  4. グラフをかいて説明しているので、わかりやすいです。
  5. この記述があることで、以降の処理で何が行われるのかが読み手にわかりやすくなりますね。

そして、筆者は2003年にZ会に入社し、「小学生向け、大学受験生向けの通信教育の講座」や実力テスト「中校・高校アドバンスト」、オリジナル添削シリーズ「数学講座」などを担当してきました。日々、多くの答案から、子どもたちが自分の考えた道筋を一生懸命表現しようとする姿勢や、成長している様子が伝わってきて、とてもやりがいを感じています。これからも子どもたちの数学的に表現する力を高めていきます。

オリジナル添削シリーズ「数学講座」は、2022年4月の開講時点では数学I・Aの単元のみをご用意しておりましたが、先生方から、

  • 継続のために明らかに単元数が足りない。ぜひ増やしてほしい。
  • 数学Ⅱ・Bの単元がほしい。
  • 公式やパターンに留まらず、説明や論証の要素を多く含むものは添削が必須。
  • 「ベクトル」があるとよい。数式にビジュアル的な要素が絡む分野は、解答の方向性が分散しがちなため、指導にも手間がかかり、そもそも模範解答も作りにくい。

といったお声をいただき、2023年4月に数学Ⅱ・Bのラインナップを追加しました。「数列」では数学的帰納法、「図形と方程式」では軌跡、ベクトルでは「図形の性質と絡めた問題」などを出題しています。この単元のこのような問題を増やしてほしいという嬉しいお声は、いつでもお待ちしています。

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