将来の東大入試の合否を左右する、中学3年生から高校1年生でのつまずき解消法 ~進学校における確率、空間図形の指導事例から~

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Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。

多くの中高一貫校で抱える悩みの1つとして「中学3年生から高校1年生の期間は、中だるみにより成績が伸び悩む生徒が多い」ことが挙げられます。数学に関して言えば、この時期は高校範囲の学習に入ってしばらくしたところで、計算の複雑化や、三角比などの新しい概念との出会いもあって、数学に対してこれまであまり苦手意識を持っていなかった生徒であっても、急にできなくなるということが見られます。

Z会ソリューションズでは、東大・京大・医学部をはじめとする難関大学を志望する生徒に向けたハイレベルな実力テスト「中学・高校アドバンスト」を実施しており、難関大学の合格者と不合格者の間で差がつきそうな問題を調査しています。

そして、中学3年生と高校1年生の「中学・高校アドバンスト」受験者を対象とした東大入試の合否追跡結果から算出した数値から、合格者と不合格者の間で差がつきそうな問題を選んだところ、「確率」と「空間図形」の問題があがりました。

本記事では、この2つの分野について

  • この問題の難しさはどこにあるのか
  • これらができるようになるための指導上の工夫は何か

を、中高一貫校の先生方にお伺いした際の話をご紹介します。

「丁寧に場合を分けること」と「効率のよい計算」が求められる、確率の問題

2022高1アドバンスト第3問
〈2022高1アドバンスト第3問〉

本問は、多くの学校が中学3年生で学習する確率の分野から、ゲームのルールに従って確率を計算する問題です。(3)までは全受験者においても得点率は高く、東大を志望する学力層の中ではほとんど差がつかなかったのですが、期待値を計算する(4)では、「この調子で学習を進めれば東大合格が期待できる学力層」(以下、「みなし合格者」)と「このままでは東大合格が危ぶまれる学力層」(以下、「みなし不合格者」)の間で、得点率に約22ポイントもの差がつきました。

今回、話を伺った先生方からは、(4)は、それまでの小問で求めた値全てを使う必要があることを押さえた上で、「ほかに求めなければならないのは何の確率か」と考える必要があり、丁寧に場合を分けることと、手際よく計算することの両方が求められるという点で差がついたと考えられるという話がありました。
また、手際よく計算することに関連して、「確率に限らず、値が大きい、桁数が多いなど面倒な計算は最後までやろうとしない生徒が増えている」という話もありました。

計算を甘く見ている生徒が多いことは、多くの学校に共通する悩みの1つのようです。生徒にしっかり計算させるための工夫として、授業ではあえて泥臭い方法をとって解説する(うまい解法は参考書などを読めばわかる生徒が多い)という話もありました。樹形図をかいて数え上げる地道な解法をとることで、規則性など立式のポイントとなる考え方に気づかせることができる場面も多いようです。

答えまでの過程を振り返ることの大切さ

確率の計算において意識させたいこととして、「全ての場合についての確率の和は1」という、確率の定義から即座にいえる事実があります。全ての場合の確率を求めなくても期待値を計算することはできます。しかし、面倒な計算になればなるほど計算ミスをする生徒も多いため、授業で時間がとれるときには、全ての場合の確率を求め、それらの和が1になることを確認させることで、意識づけられる効果があるという話もありました。

また、期待値の計算においては、個々の場合の確率の値を約分するのは二度手間になり、計算ミスを招くものですが、答えが合えばそれでよし、として計算過程まで振り返らない生徒が多いという話もありました。答えが合っていたとしても必ず模範解答の途中の考え方や解説を読み、自分の答案を振り返らせることも、効率よい計算力の向上につながるといえそうです。

「図をかくことによる条件の整理」が求められる、空間図形の問題

2022中学3年生アドバンスト第5問
〈2022中学3年生アドバンスト第5問〉

本問は、数学Iの図形と計量の問題です。空間図形の計量で、(1)は東大を志望する学力層の中ではほとんど差がつかなかったのですが、空間における折れ線の長さの最小値を求める(2)では、みなし合格者とみなし不合格者の間で、得点率に約24ポイントもの差がつきました。(2)のようなタイプの問題においては展開図を用いて考えるのが定石ですが、ほとんどの先生方が、差のついたポイントは展開図を用いるという発想の部分ではない(展開図を利用するという考え方は中学入試で馴染んでいる)ということでした。
では、本問の正解と不正解を分けたポイントはどこだったのでしょうか。まずは条件を整理するために図をかくこと、そして、かいた図から糸口を見出し、また別の視点から図をかくことは、空間図形の問題においては特に難しく、これができたかで差がついたのだろう、といった話でした。

そうなると、いかにして図をかかせるかが指導上のポイントになりますが、「図をかいて考えることの大切さをどれだけ説いても、なかなかかいてくれない」という悩みを持たれている先生は多いのではないでしょうか。どのようにして、生徒に図をかく習慣をつけさせることができるのでしょうか?
話を伺った先生の多くが、生徒に問題演習させる際は、「問題文中に図を与えない形で演習させている」ということでした。入試問題などには参考として図を与えてあることもありますが、そうした場合も図を削除して生徒に与えて、取り組ませているという話もありました。

問題の解決に役立つ図をかく力を養うには?

平面図形なら図をかける生徒でも、空間図形になるとかけない、というのはよくあることです。これは、空間図形は平面図形と比べてイメージが難しいというのが大きな要因と考えられます。

空間図形をイメージする力を養うための工夫を伺ったところ、正多面体の模型を生徒自身に作らせるといった取り組みや、例えば家庭科の調理実習の前に「豆腐や人参を切ったときの断面を注意して見るように」といった働きかけをしているという話がありました。
このような取り組み、働きかけを通して空間図形のイメージを与えた上で、「きれいな図でなくてもいい、多少誤った図でもいいから、大きく見やすい図を自分の手でかこう」のような指示を出すことが、問題の解決に役立つ図をかく力を養うには重要とのことです。

定期考査と実力テストの違い~実力テストをご受験いただく意義~

ここまで、確率と空間図形について、生徒が抱えている課題や、各校での指導の工夫をご紹介しました。個々の生徒がどのような課題を抱えているかを把握する手段の1つとして、どの学校でもテストを活用されていることと思いますが、最後に、話を伺う中で出てきた、実力テストを受験いただく意義についても紹介します。

「定期考査では満点を目指させるが、実力テストでは満点は求めない」という話がありました。東大をはじめとする難関大学の入試に対応できるようにするため、経験のある問題の類題に対しては「解法を素早く引き出し、トレースすること」、初見の問題に対しては「試行錯誤を通して解法の糸口をつかむこと」が必要であり、これらをそれぞれ定期考査と実力テストで試しているとのこと。

この他、実力テストにおいては、問題に取り組む順序といった実戦的な要素も、定期考査と比べて大きく入ってきます。3年後、もしくは2年後の大学入試を見据えて、中学3年生、高校1年生の段階から、全国のハイレベルな生徒と競い合える場として実力テスト「中学・高校アドバンスト」をご活用いただけますと幸いです。

 

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