2024年度以降の大学入試における調査書の在り方について

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Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
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2022(令和4)年度から高等学校では新学習指導要領が施行され、2024(令和6)年度に実施される大学入試でも大きな変更が予定されています。

近年、文部科学省では各大学の入学者選抜が多面的・総合的に評価されるものとなるよう、その方向性を示しています。
その実現に向けて以下のようなことを高等学校、大学関係者間で考え方を整理し共有した上で、取組みを進めることが必要であるとしています。
「学力検査以外の選抜方法」
「選抜資料の活用の在り方」
「選抜区分(一般・総合型・学校推薦型)ごとの特性を踏まえた学力の3要素の評価の重み付け」など

また検討を進めるにあたっては、先生方の業務負担の観点も考慮しながら、新学習指導要領に対応した調査書の在り方などについても新たに検討を行う必要があるとしています。

今回は、「大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議(審議のまとめ) 」を参考にしながら新学習指導要領に対応した調査書についてどのような方向性が示されているのかについてまとめました。

 

調査書の在り方と観点別学習状況の評価の取扱いについて

大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議(審議のまとめ) 」によると、新学習指導要領に対応した調査書においては、「平成31(2019)年3月に示された指導要録の様式 と整合性をとる方向で見直すことが適切であるとしています。これは、調査書は指導要録に基づき作成するという原則(大学入学者選抜実施要項)や、学校の働き方改革を受けた教員の負担軽減の観点から示された方針です。

しかし、この指導要録で新しく示された各教科・科目の観点別学習状況の評価については、「現時点において、大学入学者選抜で直ちに活用することには慎重な対応が求められる」としています。

高等学校における観点別学習状況の評価の取組みが開始されたばかりであることや、大学入学者選抜における観点別学習状況の評価の活用手法が大学側で確立されていないことが理由となっています。

一方で、大学側が「主体性を持ち、多様な人々と協働しつつ学習する態度」の評価の資料とすることが可能となるのではないか、という意見や、観点別学習状況の活用及び活用方法の検討については大学に委ねてはどうか、という意見もあるようです。
「審議のまとめ」にも、観点別学習状況の評価を調査書に記載することについて「意義は認められる」としており、今後の状況を見極めつつ、「条件が整い次第可能な限り早い段階で調査書に項目を設けることを目指す」ことが明記されています。

 

調査書の様式の見直しの方向について

大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議(審議のまとめ) 」には、別紙として以下のように新学習指導要領に対応した調査書の様式の見直し案が掲載されています。

ここでは調査書の各項目に関する方向性を整理しました。

「各教科・科目等の学習の記録」
・各教科・科目の観点別学習状況の項目を直ちに設けることはしない。
・今後の状況を見極めつつ、条件が整い次第可能な限り早い段階で調査書に項目を設けることを目指す。
・検討に当たっては、教育委員会、高等学校、大学等が協働して、大学入学者選抜における観点別学習状況の活用方法等について実証研究に取り組む。
「学習成績の状況」
・科目の成績とその単位数があれば必要に応じて加重平均等の計算が可能である。
・よって、調査書には現行どおりの単純平均を記載し、その活用方法は大学に委ねる。
「総合的な探究の時間の記録」
・指導要録と同様に、この時間に行った学習活動及び各学校が自ら定めた評価の観点を記入する。
・その上で、それらの観点のうち、生徒の学習状況に顕著な事項がある場合などにその特徴を記入する。
・生徒にどのような力が身に付いたかを文章で端的に記述する。
「特別活動の記録」
・指導要録と同様に、文章記述を改め、各学校が設定した観点を記入する。
・その上で、各活動・学校行事ごとに、評価の観点に照らして十分満足できる活動の状況にあると判断される場合に、○印を記入する。
「指導上参考となる諸事項」
・指導要録と同様に、要点を箇条書きするなど、その記載事項を必要最小限にとどめることとする。
・生徒の特徴・特技や学校外の活動等については、原則として、学習指導等を進めていく上で必要な情報として精選して指導要録に記述された内容を元に記入する。
「備考」
・各大学はディプロマ・ポリシーやカリキュラム・ポリシーを踏まえ、志願者が大学の指定する特定の分野(例:保健体育、芸術、家庭、情報等)において、特に優れた学習成果を上げたことを備考欄に記載するよう求めることができるとされている。
・しかし、大学や学部ごとに異なる内容を求められるのは相当の負担である、といった意見などが高等学校関係者からあることを踏まえ、これらの事項については調査書以外の資料で、志願者本人から直接大学に提出するよう求める。
調査書において取扱いが廃止される項目
・大学入学者選抜実施要項において、各大学はその希望により、高等学校長に対し以下2点の記載を求めることができるとされているが、各大学が必要に応じて推薦書等で求めることとし、調査書における以下の取扱いは廃止する。

<取扱い廃止項目>
「学習成績概評」について、Aに属する生徒のうち、人物、学力ともに特に優秀な者については、Ⓐと標示するよう希望することができる。(この場合に「備考」にその理由を記載させる。)
「備考」について、当該大学の学部等が求める能力・適性等について、高等学校長が特に推薦できる生徒については、その旨を記載するよう希望することができる。

「大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議 審議のまとめ」より一部抜粋

 

調査書の電子化の在り方について

調査書の電子化については、志願者、大学双方にとって入試事務の効率化、省力化が進むことから、速やかに「完全電子化」を目指すべきであるとしています。これについては、本記事で紹介している「大学入学者選抜における多面的な評価の在り方に関する協力者会議(審議のまとめ) 」だけでなく、「大学入試のあり方に関する検討会議 提言 」でも触れられている事項となっています。

電子化に向けた検討事項の一つとして各学校のインフラ環境の影響がありますが、高等学校と大学側の状況についての調査結果が示されています。
・令和2(2020)年3月時点の調査では、公立高等学校における統合型校務支援システムの導入状況は約 79%
・令和2(2020)年度大学入学者選抜における電子出願が可能な選抜区分は、一般選抜では約 90%、総合型選抜では約 56%、学校推薦型では約 58%

調査書の電子化については、高等学校側の統合型校務支援システムを活用し、大学側の電子出願システムに送付できるような状態を目指しています。

しかし、調査書の電子化は、平成31(2019)年度に事業予算化し、令和4(2022)年度に実施される全ての大学の全ての入試区分において、原則として電子調査書を用いることを目指していましたが、今一度検討となっており現在においても実施までのスケジュールが不透明な状態です。

 

【執筆担当者より】今後の調査書の見直しに向けて

「各教科・科目等の学習の記録」は、定期考査の成績だけでなく、日々の学習への取り組みなども含めて総合的に評価することになると思われます。そのためには先生方に負担をかけることなく、問題集や単語テストなどの記録をどう残すかも課題となってきます。

その解決方法の1つとして、Webを介した回答・テストが考えられます。生徒の端末に配信し、各生徒の解答を自動で採点、集計、蓄積していくことができるので、学習の記録を残すのに役立ちます。

弊社でも、この3月1日より「Z会書籍対応 Googleドライブ経由データ提供サービス」を開始し、単語集の小テストを自動作成できる機能や、問題集に掲載の問題を自動採点できる小テストなどをご用意しています。

該当書籍をご採用いただいた先生は無料でご利用いただけますので、ぜひご活用ください。


▼「Z会書籍対応 Googleドライブ経由データ提供サービス」について、詳しくは以下のページをご覧ください。
https://www.zkai.co.jp/books/school/gftest/

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