「総合的な探究の時間」はキャリア教育とどう結び付いているのか
Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。
2022年度から高等学校において「総合的な探究の時間」が始まりました。 どのように授業を進めていくか、模索中という先生方も多いでしょう。今回は「高等学校学習指導要領(平成 30年告示)総合的な探究の時間」において、目的の一つとして掲げられている「キャリア教育」との結び付きについてお話しします。
「総合的な探究の時間」は「キャリア教育」を見据えた活動を意識する必要がありますが、「キャリア教育」についてまだピンと来ていない先生方も多いのではないでしょうか。「キャリア教育」は重要なポイントではありますが、見落とされがちな部分でもありますので詳しく説明していきましょう。
キャリア教育と総合的な探究の時間の結び付き
そもそも「キャリア教育とは何か。」
文部科学省では「キャリア教育」を次のように定義しています。
「キャリア教育は,子ども・若者がキャリアを形成していくために必要な能力や態度の育成を目標とする教育的働きかけである。」出典:「高等学校キャリア教育の手引き」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/1312816.htm)(2022年4月20日に利用)
社会に出た時にどう活躍したいか。生徒が自身の「在り方・生き方」を考える取り組みからキャリア教育は始まります。「在り方・生き方」を考える中で、自らが望む理想のキャリアに相応しい能力を身につけていけるようにサポートするのが「キャリア教育」です。
これまでの高等学校の「総合的な学習の時間」とは何が違うのでしょう。今までは、授業で必要な能力を身につけた上で、生徒が後ほど自身の「在り方・生き方」を考える、という流れでした。一方、「総合的な探究の時間」では、自身の「在り方・生き方」を考えながら、関連する課題を自ら発見し、解決していくという流れに変わりました。
出典:「【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」(文部科学省)https://www.mext.go.jp/content/1407196_21_1_1_2.pdf)(2022年4月20日に利用)
キャリアを念頭におきながら、必要な能力を授業で身につけていくことになります。「総合的な探究の時間」において、生徒は自己の「在り方・生き方」に照らし、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、自ら課題を発見し解決していくために下記の過程(探究のプロセス)を繰り返し行います。
- 課題の設定
- 情報の収集
- 情報の整理・分析
- 自らの考えをまとめて表現する
1~4を繰り返すことで社会において必要とされる資質・能力を養っていくことが期待されています。
外部講師による講座 ポイントは高頻度かつ自由参加
既にキャリア教育に熱心に取り組んでいる学校の取り組みをご紹介します。
外部講師を招いて講座を開催するという取り組みをなさっている学校もいらっしゃると思います。大学教授、大学・企業で活躍する卒業生、医師や会計士など多種多様な方をお呼びし、自身の研究テーマや仕事の話などをしていただくことが多いようです。その頻度は、年に1・2回程度の開催となることがほとんどかと思います。
しかし、キャリア教育に熱心な高校は開催頻度が全く違います。月に3〜4回など、高頻度で開かれ、参加するかどうかは生徒の自由となっています。
たくさんある講座の中から、自分はどれに参加しようか。生徒自身に選んでもらうことで、興味を惹かれる講座やより詳しく知りたいと思う講座がどのようなものか気付くきっかけを与えられます。結果、生徒は自分の「在り方・生き方」を考える機会に恵まれるのです。
「生徒にとって、将来のことが自分ゴト化するタイミングはそれぞれ違います。どんな人の話がモチベーションを高めてくれるかもわかりません。だから、開催頻度を高くしています」とおっしゃっていた先生のお言葉は大変印象的でした。
お話を伺った学校では、目の前の勉強にも、より意欲的に取り組めるようになった生徒も増えたそうです。そして、明らかに進学実績に良い影響が出ているとのことでした。最近では、「コンサルティング」「マーケター」など、イマドキの職業に従事する方からお話をお伺い出来る講座は生徒から人気であるとのこと。
様々な職業の内容を知ること自体にも価値があります。話題になっているから、人気があるから自分も目指してみよう。ではなく、本当に自分の価値観に合っているか、そもそも自分が想像していたような仕事なのか。正しく知った上で、キャリアを考えられます。
高校での取り組みを通して生徒に「在り方・生き方」を考える機会をどれだけ多く与えられるかがキャリア教育の大事なポイントです。
高校生からのトライ&エラーで活躍できる人材に
生徒に「在り方・生き方」を考えてもらう。必要性は感じていても、学校ではなかなかそのような機会を与えられていなかったという先生方も多いのではないでしょうか。
多くの大学生は、自分は社会でどう活躍したいのか、自分にはどのような強みや能力があるのか、自分が何に興味があるのかわからないまま漫然と学生時代を過ごしているのが現状です。就職活動をする直前になって、急いで「在り方・生き方」を考えている状態に陥っているようです。そのため、就職活動や社会に出てから自身の方向性を見失うという大学生もいらっしゃいます。
そうならないために、自分自身が就きたい職業を検討するきっかけを早めに与え、「キャリアについて考え行動し、振り返りながら気づきを得る」というサイクルを繰り返してもらうことが重要になってきます。
生徒が自分の価値観と向き合い、早めに検討を繰り返した上で社会に出ていけるように学校がサポートくださることで、より自分に合ったキャリア選択を実現できるのが理想的ではないでしょうか。
キャリア教育のために先生方がするべき取り組み
全ての学校で頻度高く講演会を実施することは難しいかと思います。そこで、「総合的な探究の時間」などで、生徒の「キャリア教育」をサポートする上で、大切にしたいポイントをまとめました。
①自分ならどうする? を考える
「総合的な探究の時間」の授業で職業や社会課題をテーマに取り上げる際に、生徒に「在り方・生き方」を考えるきっかけを与えてみてはいかがでしょうか。具体的にはテーマに対して「自分ならどうする?」といった声掛けや課題設定をしてみることなどが考えられます。
自分の興味や得意を活かして、どう解決していけるか。また、将来どのような取り組みや、仕事を通じて社会課題の解決に貢献したいのか。キャリアと結び付けて考えてもらうようにするのがポイントです。
また、生徒の興味に「なぜ?」と問いかける取り組みも大事です。テーマの中からなぜその課題を選んだのか。なぜその解決策を選んだのか。なぜその取り組み、仕事をしてみたいと思ったのか。深堀りして考えてもらう時間が、自分自身を知るきっかけに繋がります。
ですが、考えるということに慣れていない生徒も多いでしょう。生徒がすぐに回答できなくても、最初は考える機会を与えられるだけで十分です。何度も問いかけを繰り返し、考えることに慣れてもらう取り組みから始めてみてはいかがでしょうか。
外部講師による講座開催と同じく、身近にいらっしゃる先生方が生徒に自分を振り返る機会を多く与えてあげるきっかけ作りも「キャリア教育」に有効な手段といえるでしょう。
②生徒の資質・能力を評価・測定して成長を促す
生徒の資質・能力を可視化するのも大事なポイントです。
社会で必要とされている資質や能力はどういったもので、自分はどのような能力を身につけているのか。生徒が今の自分の状態を知ることで、さらなる成長の機会を得ることができます。ルーブリックなどを活用して定期的に評価はしているが、生徒の「キャリア」に必要な能力を可視化するのは難しい。そもそも成長を促すような評価になっているのだろうか。今の評価に対して、足りない部分や不安を感じている、などの悩みをお持ちの先生方も多いのではないでしょうか。
Z会では下記2つの測定サービスをご用意し、先生方をサポートしています。詳しくはリンク先をご覧ください。
DiscoveRe Method®(ディスカバリー メソッド)
チームでの課題解決に必要な8つの非認知能力を可視化できるツールです。チームワークが重要とされる「宇宙飛行士」の訓練ノウハウを活用しています。チームで取り組む課題解決型プロジェクトにおける生徒の資質や能力の測定が可能です
LIPHARE(リファール)
これからの時代に求められる新しい学力=「資質・能力」を測定するツールです。
「課題発見・解決能力テスト」では、答えの見えない大きな問いに対して、協調的かつ主体的に自らの解を導いていく能力を測定します。また「日本語運用能力テスト」では、文章を読んで理解する力だけでなく、図表を解釈・整理する力や、得られた情報をもとに行動に応用する力などを測定します。
生徒の成長をより促すような評価・測定については別の記事にまとめますので、そちらも参考にしてください。
まとめ
「キャリア教育」は「総合的な探究の時間」の目的の一つです。生徒にしっかり意識してもらうことが重要です。大事なポイントは、生徒に「在り方・生き方」を考えてもらうことです。職業や社会課題をテーマに設定するだけで、生徒の「キャリア教育」に繋がるわけではありません。
生徒に自分自身を振り返る時間をなるべくたくさん与え、未来を見据えるように促す取り組みが、生徒がより良い人生を切り開いていくきっかけに繋がります。
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