探究の時間に取り入れたい 生徒の成長を促す「測定」という視点

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Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。

先生方からの「評価」は、生徒の成長の過程において重要な要素の一つです。
生徒に現在の状況を「評価」で伝えることで、自分自身を振り返り、さらなる学びのために何をするべきか考える機会を与えることができます。

「総合的な探究の時間」における「評価」についても役割は同じです。「総合的な探究の時間」で身につけて欲しい資質・能力に対して、成長段階にあわせて課題を設定し、その課題に対してどの程度達成できているのかを「評価」することで成長に必要な気付きを与えられます。

ところが、「総合的な探究の時間」における「評価」については先生方から次のような声もお聞きします。
・評価が生徒の成長に繋がっているか疑問
・生徒の個性や長所を評価できているのか不安

「総合的な探究の時間」を通して身につけてもらいたい資質・能力は数値化が難しいこともあり、「評価」をどうしたら良いのか模索中の先生方も多いかもしれません。

そのような先生方は、「評価」だけでなく「測定」という別の視点も取り入れてみてはいかがでしょうか。

「測定」という視点は外部の「測定ツール」などを導入・利用することで得られ、先生方の「評価」と併用することで、生徒の資質・能力をより「多面的」に見られるようになります。生徒の資質・能力を様々な角度から可視化することで、成長をより促せるのではないかと考えます。

今回は、「評価」と「測定」の両方の視点を持つことが、より生徒の成長を促せる理由についてご紹介します。

 

性質が異なる「評価」と「測定」

まずは先生方が行う「評価」と外部の「測定ツール」がどう違うのか考えてみます。

・「評価」とは
総合的な探究の時間においては、先生方と生徒で設定した「評価項目」と「達成目標」に対して、生徒が自らの学びを振り返って次の学びに向かえるように状態を示すもの。

・「測定」とは
測定者が設定した同一の「測定項目」「達成目標」を使い、生徒の資質・能力を数値化して示すもの。過去も含めた多くの生徒と比べて、データを用いて客観的に資質・能力を可視化できる。

先生方が「総合的な探究の時間」で行う「評価」については、学習指導要領で次のように書かれています。

総合的な探究の時間における生徒の学習評価については,総合的な探究の時間の特質を踏まえた上で,教師や学校が創意工夫の中で学習評価の妥当性や信頼性が高められるよう,組織的かつ計画的な取組を推進するとともに,学年や学校段階を越えて生徒の学習の成果が円滑に接続されるように工夫することが重要である。

出典:「【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/content/1407196_21_1_1_2.pdf))(2022年5月20日に利用)

また、評価を通して生徒自身が自分の長所や強みに気付けること、現状、どういった能力が身についているのかを知れることも大切であると記されてもいます。

それらを踏まえて、具体的な評価方法については次の3つが重要としています。

  1. 生徒にとって納得性のある評価方法であること
  2. 生徒を多面的に見られる評価方法であること
  3. 学習状況の過程を評価する方法であること

これら3つを満たせるような評価方法とはどのようなものか、ある学校での取り組みを例に詳しく紹介します。

まずは、先生方の間で「総合的な探究の時間」を通して生徒に学んでもらいたいことや、身につけてもらいたい資質・能力について話し合います。先生方が生徒に対して「総合的な探究の時間」での目標を示し、お互いの認識を合わせておきます。

その上で、生徒と目標について話し合い、お互いが納得できる「評価項目」に落とし込んでいきます。
例えば、「総合的な探究の時間」を通して身につけて欲しい資質・能力の一つがプレゼンテーション能力だとすると

  • プレゼン内容の理解
  • 図表の活用
  • 声の大きさ
  • 目線の使い方

というような評価項目を使い、プレゼンテーション能力を評価すると決めます。評価項目についてもあらかじめ生徒に説明し、納得をしてもらうことが重要です。
生徒の特長に合った様々な評価項目を設定することで、生徒を「多面的」に見られます。

また、それぞれの評価項目に対して、どのぐらいの達成度でどの評価になるのかという「達成目標」に関しても生徒と認識を合わせておきます。
それぞれの評価項目に対して「〇」か「×」かといった二択の評価ではなく、「A~E」というようないくつかの段階を「達成目標」として設定します。そうすることで、現在の生徒の目標に対する達成状況がどの程度なのかを示せるようになります。

評価の段階では、あらかじめ設定した「評価項目」「達成目標」を使い、まずは生徒が自己評価を行います。次にクラスメイトなどが行う他者評価を実施するケースもあるかもしれません。最終的にそれぞれの結果を考慮しながら、先生方で「総合的な探究の時間」における今期の評価を決定し、文章にまとめて生徒にフィードバックします。

まとめると、「評価」とは先生方と目の前の生徒との双方で作りあげながら、最終的に先生方の判断によって示すという流れをとることが理想的な形といえるでしょう。

一方、「測定ツール」は先生方の意向や生徒一人ひとりを考慮したものではありません。一般的に広く必要とされる資質・能力を定義し、それに沿って「測定項目」を設定しています。
どのぐらいの資質・能力があればどの評価になるかという「達成目標」についても、「測定ツール」ごとに統一されています。

「測定ツール」は全ての生徒に対して「同じ基準」で資質・能力を測るものです。
「同じ基準」を使っているので過去の測定結果も含めた多数の生徒と資質・能力を比べることも可能です。それぞれの生徒が大人数の中でどの程度の資質・能力なのかを客観的なデータとして示してくれます。

「総合的な探究の時間」の学習指導要領では、「教科のように数値的に評価することはせず,」と記載されています。

出典:「【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/content/1407196_21_1_1_2.pdf))(2022年5月20日に利用)

しかし、「測定ツール」を評価のために活用するのではなく、生徒が自らを多面的に振り返り、改善点を検討する際に活かすことで大いに役立つと考えます。

 

併用のメリットは「多面的」による気付き

「評価」と「測定ツール」は性質の違うものであるからこそ、両方を併用するメリットがあります。中でも、生徒をより「多面的」に見られ、多くの気付きを得られるというのが一番のメリットです。

様々な生徒がいてその能力は多種多様です。
「評価」で使われるのは、先生方が生徒に身につけて欲しいと思う資質・能力、生徒にとって納得性のある指標(具体的な行動リストなど)が示された項目です。
「測定ツール」で使われるのは、広く一般的に求められる資質・能力を元に考えられた項目です。
2つを併用することで、より多様な視点で生徒の現状を把握することができるようになり、
今まで気付かなかった生徒の新たな一面や成長を発見することができるかもしれません。。生徒にとっても、これまでとは違った視点で自身の可能性を示されることで、成長に対するモチベーションが高まるきっかけになるかもしれません。
また、広く一般的にあると望ましいとされる能力で未成熟であると認識できれば、今後伸ばしていこうと意識してもらえることも期待できます。

先生方が「適切に評価できているのだろうか」「評価するのが難しい」と感じる生徒の個性や長所も「測定ツール」により可視化できる可能性もあるでしょう。「評価」と「測定ツール」の結果を両方用いることで、今後の評価の改善にもつながるはずです。

例えば、ある生徒が「自分はコミュニケーション能力」が低いと評価していたとします。それは、先生方で設定した「ハキハキと大きな声で喋る」という評価項目で自信がなかったり、クラスメイトからの他者評価を受けたりする中でそう感じていたのかもしれません。
しかし、「測定ツール」での結果では「コミュニケーション能力は高い」と示されたとします。
これは「評価」と「測定ツール」のどちらが正しいということではありません。コミュニケーションといっても必要となる能力は様々あります。ある側面から見ると能力が低くても、別の側面から見ると能力が高いということは十分ありえるのです。

この生徒は測定ツールの結果を受けて、気付いていなかった資質・能力を知るきっかけを得られたはずです。今後、コミュニケーション能力を伸ばしていける自信に繋がる可能性は大いにあります。
先生方としても「測定ツール」の結果を受けて、この生徒の成長を促すようなサポートをしていけるでしょう。今まで気付けていなかった生徒の資質・能力を可視化できるよう、評価をより良く改善していく取り組みにも繋げていけます。

「評価」と「測定ツール」どちらも併用することで、性質の違うバリエーション豊かな指標を設定でき、生徒の資質・能力を「多面的」に見られるようになります。
生徒はもちろん先生方にとってもより多くの気付きを得られるため、生徒の成長を効果的に促していけるようになると考えます。

 

Z会の「測定ツール」は「対他者」と「課題発見・解決」にフォーカス

Z会では「総合的な探究の時間」で育めると期待される能力を可視化できる2つの測定サービスをご用意しています。それぞれ、評価項目の一部と共にご紹介します。

 

DiscoveRe Method®(ディスカバリー メソッド)

人との関わり、チームでの取り組みに必要な能力を測定するアセスメントです。
チームワークが重要視される宇宙飛行士に求められる8つの能力を評価項目として設定しています。
ここでは対他者に関する一部の指標を一例としてご紹介しましょう。

対他者に関する評価項目

・コミュニケーション
物事に対してきちんと理解し、納得した上で、誤解のないように伝えられる能力がどのぐらいあるかを測定します。

・異文化適応
他者との違いが理解しがたいものであっても、偏見を持たずに尊重することができる能力がどのぐらいあるかを測定します。

・チームワークと集団行動
様々な性質のあるメンバーと真剣に向き合い、自分よりチームの団結を優先する能力がどのぐらいあるかを測定します。

DiscoveRe Method®(ディスカバリー メソッド)の詳細はこちら

 

LIPHARE(課題発見・解決能力テスト)

課題発見・解決能力を測定するための記述式アセスメントです。
学習指導要領においても、多面的評価の一例として「課題設定や課題解決能力をみるような記述テストの結果による評価」が挙げられています。

出典:「【総合的な探究の時間編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/content/1407196_21_1_1_2.pdf))(2022年5月20日に利用)

課題発見・解決能力に関する能力の測定に使っている評価項目についても一部ご紹介します。こちらも、先生方が評価項目を作る際の一例としても参考になるのではないかと思います。

課題を見極め、情報を収集する力に関する評価項目

課題を与えられてからすぐの段階で、何について考えなくてはならないのか、課題を解決するために必要な情報を精査・考察する力がどのぐらいあるかを次の評価項目で測定します。

・論点設定力
与えられた課題を解決するにあたって、問われていることを理解する能力がどのぐらいあるかを測定します。

・課題分析力
課題の内容を正確に理解した上で、自らの論を作るための材料にできる能力がどのぐらいあるかを測定します。

・情報収集力
情報の正誤に注意しながら他者の意見を収集し、複数の角度から内容を検討した上で、適切な情報を選択する能力がどのぐらいあるかを測定します。

論理を構築する力に関する評価項目

収集した複数の情報について関係性を考え、関係性の中から論理を深めた上で、筋道を立てて説明する力がどのぐらいあるかを次の評価項目で測定します。

・論理構築力
他者に伝えたいことを筋道立てて説明する能力がどのぐらいあるかを測定します。

・批判的考察力
与えられた情報に対して、「なぜ?」「本当に?」という批判的考察を適切にできる能力がどのぐらいあるかを測定します。

LIPHARE(課題発見・解決能力テスト)の詳細はこちら

 

まとめ

「総合的な探究の時間」における「評価」については、まだまだ模索中の先生方も多いでしょう。今の「評価」が生徒の成長につながっているのだろうか。生徒の個性や長所を「評価」できているのだろうか。不安の声もお聞きします。
このような悩みは、先生方による「評価」だけでなく、外部の「測定ツール」を併用することで解決に近づけるかもしれません。

「評価」とは、総合的な探究の時間においては、先生方と生徒で設定した「評価項目」と「達成目標」によって先生方が生徒の資質・能力を示すものです。一方、「測定」とは、測定者が設定した同一の「測定項目」「達成目標」を使い、生徒の資質・能力を示すものです。多くの生徒と比べて、客観的に能力を可視化できます。
「評価」と「測定」は性質の違うものであり、併用することで「多面的に」生徒の資質・能力を可視化できるという点が一番のメリットです。

先生方も生徒自身も気付いていなかった、資質・能力を知れるなど、生徒により多くの成長を促す気付きを与えることができると考えます。「評価」と「測定」を比べることで、今の評価を改善する取り組みにも繋げていけます。
「評価」と「測定」の両方の視点を上手く活用することで、今まで以上に生徒の成長をサポートしていきましょう。

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