「総合的な探究の時間」が多様性を求めるこれからの入試に活きる理由

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Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。

「総合型選抜・学校推薦型選抜」の大学側の定員が増加しています。先生方もその傾向について実感されているでしょう。

令和2年の調査によると、入学者全体に占める「総合型選抜・学校推薦型選抜」の割合は次の通りです。

  • 国立大学 16.8%
  • 公立大学 28.1%
  • 私立大学 55.2%

出典:「大学入試のあり方に関する検討会議 令和3年7月8日」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/content/20210707-mxt_daigakuc02-000016687_13.pdf)(2022年4月20日に利用)

国立大学協会では、国立大学全体として「総合型選抜・学校推薦型選抜」の占める割合を30%にすることを目標に掲げており、今後も大学全体で割合は増えていくと予想されます。

このような状況において、学校は「一般選抜」だけでなく、「総合型選抜・学校推薦型選抜」といった選抜形式に対応できる体制作りが求められてきています。わかってはいても一般選抜の対応だけで手いっぱい、時間が無いという学校も多いのではないでしょうか。

そこで、うまく活用していただきたいのが「総合的な探究の時間」です。
「総合的な探究の時間」の取り組みを通して、「一般選抜」と「総合型選抜・学校推薦型選抜」どちらにも必要な資質・能力を育んでいけるのではないかと考えます。
今回の記事ではその理由をご紹介していきます。

 

「総合的な探究の時間」で育める入試に必要な能力とは

「総合的な探究の時間」を通じて育める資質・能力は色々とございますが、特にどのような入試形式でも活用できるのは以下の2つではないでしょうか。

① 探究活動による「学びを深める力」
② 深めた学びを「人に伝える力」

「学びを深める力」とは、生徒自身が主体的に学習を進めるために必要な能力であり、学力向上に欠かせない要素です。いずれの入試形式を選ぶにしても、難関と呼ばれる大学を目指すのであれば、学力は必須となります。「総合的な探究の時間」を通して生徒に身につけて欲しい能力です。

また、深めた学びは人に伝えることで初めて評価されます。筆記試験において「答案は採点者へのラブレター」と言われるくらいですが、小論文や面接・グループディスカッションであれば「人に伝える力=表現力」はより必要になってきます。試験の形式に合わせ、与えられた課題に対して適切な伝え方で答えを表現する力は、どのような入試形式であっても必要な力となるのです。

では、この二つの能力は「総合的な探究の時間」を通じてどのように育めるのでしょうか。詳しくご紹介していきます。

 

探究のプロセスで「学びを深める力」を育む

まずは、「学びを深める力」についてです。
「総合的な探究の時間」では、先生方が提示するテーマに対して、生徒は次のプロセスを繰り返し行います。(探究のプロセスは、「高等学校学習指導要領(平成30年告示)総合的な探究の時間編」にて紹介されています)

  1. テーマの中から課題を発見する
  2. 課題の解決に必要な情報を収集する
  3. 情報を整理し分析する
  4. 自分の考えをまとめて伝える

テーマの中から生徒自身で課題を見つけ、解決のために情報を収集・分析し、自分の考えを言葉や資料等でまとめて表現します。その過程で、新たに出てきた疑問や気になる点に対して再び課題を設定し、解決のために行動していくというのが探究のプロセスです。

探究のプロセスは学びを深めるための手法であり、テーマを変えることで様々な場面で応用ができます。

例えば、「総合的な探究の時間」では特定の教科に留まらない実社会に即した広い内容をテーマとして取り上げ、社会課題や地域社会について深く学びます。一方、各教科の「探究授業」では数学や古典などの内容をテーマに設定し、授業で習った知識を元に主体的に学びを深めていきながら学習を進めていきます。

「総合的な探究の時間」を探究の手法を身につける基礎的位置づけとし、各教科は探究の手法を活かしながら学習を進めていくことで、それぞれの学びが深いものとなっていきます。
この両者の違いについては、「高等学校学習指導要領(平成30年告示)総合的な探究の時間編」においても記載されています。

 

探究の人と関わる活動で「表現力」を育む

次は、深めた学びを「人に伝える力」=「表現力」について考えていきます。
探究の手法を使うことで、多くの知識を得て学びを深めたとしても、人に伝えられなければ評価されません。「総合型選抜・学校推薦型選抜」においても「一般選抜」においても身につけておきたい能力です。

では「総合的な探究の時間」での取り組みで、どのように表現する力を身につけてもらえば良いのでしょうか。最も大事なのが、人と関わる活動を多く実施することです。グループワーク、社会人や地域の様々な方と接するフィールドワークの時間などを設け、人と関わる機会をできるだけ増やすようにしてください。

人と関わる活動で表現力を育める理由としては
・自分の表現に対して相手からフィードバックを得られる
・表現する相手のことを考えて試行錯誤できる
この二つが大きなポイントになります。

人と関わる活動においては、自分の考えや意見が相手に伝わっているのかどうか、その都度、相手の返事や反応からフィードバックを得ることができます。
上手く伝わらない場合、適切な言葉や表現方法に変えるなど、自然と模索していくことになります。
要するに、人と関わる活動は生徒自身に「より相手に伝わる表現」を考えてもらう機会を多く与えられるのです。授業で探究の手法を使って繰り返し練習できる機会を多く与えることで徐々に表現力が身についていきます。

ただ、表現する際の状況や目的はその時々で違うため、様々な表現の手法を学んでおく必要もあります。写真やグラフ、図などを使ったプレゼンテーションやポスターセッション、Web上の動画やテキストを使っての発表をしてもらう等、様々な表現のかたちに取り組めるような授業設計がされていることが理想です。

アウトプットをする場が多くあると、繰り返し練習をする際にも重要ですし、様々な表現の場を設けてあげることもできるようになりますので、ご検討いただけたらと思います。

表現力を高めれば、社会に出てからも様々な場面で役立ちます。特に仕事では多様な価値観を持つメンバーと一緒に、目標に向かって取り組んでいくような場面がほとんどです。自分の考えや意見を相手や状況に合わせて的確に表現することで、取り組みはスムーズに進み、望む成果も出やすくなります。

入試という場面においては、大学が用意した問いや課題に対して自分を表現していく必要があります。「一般選抜」と「総合型選抜・学校推薦型選抜」では状況が全く違いますし、目指す大学によってもどのような表現の手法が必要かは異なります。受験方法や目指す大学に対応した表現の練習はもちろん必要です。しかし、適切な表現を行うための考え方や、論じたいことを構築する方法など、基礎の部分は「総合的な探究の時間」で学ぶことができます。

 

「総合的な探究の時間」における能力向上のポイント

「総合的な探究の時間」を使って生徒の「学びを深める力」と「人に伝える力」を育める理由をご紹介してきましたが、最後に、生徒の能力を育んでいく上で特に重要なポイントをご紹介します。

 

情報収集をサポート

探究のプロセスの中で、生徒が躓きやすいのが「情報収集」です。これまでの学校教育では、生徒が何か課題に取り組む際には、先生方が必要な情報を集めるのが一般的だったと思います。生徒自身で情報収集する機会は少なく、慣れていないことが多いようです。そのため、最初は先生方や学校全体でサポートしていく必要があります。
図書館の使い方、ネットでの調べ方など、情報収集のやり方を伝えるのはもちろん、普段、関わることが少ない先生方に気軽に話を聞ける体制を整えてあげてください。自ら楽しんで情報収集ができるようになるまで、サポートできるのが理想でしょう。

 

生徒の状態を測定してサポート

「学びを深める力」と「人に伝える力」を身につけることで向上する能力は様々あります。学力については定期テストや模試を通じて生徒の能力を測っていますが、学力以外の能力の測定はできていないという学校も多いのではないでしょうか。
学力以外の能力も他者からのフィードバックや客観評価を定期的に受けてもらうことで、生徒自身に自分の状態を把握してもらえるようになります。自分自身の能力の変化を実感できるため、モチベーションの向上に繋がります。また、次の目標や方向性を考える際のヒントとしても有効です。
先生方にとっても、今の授業での取り組みが生徒の能力向上に有効かどうかを見極める判断基準の一つとなります。今後、授業での取り組みをどう改善するか考える際の参考にもなるでしょう。

Z会では、学力以外の能力を測定できるように下記2つのサービスを用意しています。詳しくはリンク先をご覧ください。

DiscoveRe Method®(ディスカバリー メソッド)
チームでの課題解決に必要な8つの非認知能力を可視化できるツールです。チームワークが重要とされる「宇宙飛行士」の訓練ノウハウを活用しています。チームで取り組む課題解決型プロジェクトにおける生徒の資質や能力を測定可能です。

LIPHARE(リファール)
これからの時代に求められる新しい学力=「資質・能力」を測定するツールです。
「課題発見・解決能力テスト」では、答えのない大きな問いに対して、協調的かつ主体的に自らの解を導いていく能力を測定します。
また「日本語運用能力テスト」では、文章を読んで理解する力だけでなく、図表を解釈・整理する力や、得た知識を問題解決に役立てる力を測定します。

 

まとめ

大学入試では「総合型選抜・学校推薦型選抜」の募集枠が増えています。学校には「一般選抜」「総合型選抜・学校推薦型選抜」どの入試にも対応できる体制作りが求められています。
「総合的な探究の時間」では、どの入試にも必要な「学びを深める力」「人に伝える力」を育むことができます。「学びを深める力」は探究のプロセスを繰り返すことで身につけられ、「人に伝える力」は人と関わる活動を多く設定することで育んでいけると考えます。
先生方として特に重視したいのが、生徒が苦手な情報収集のサポートをすること、そして、生徒の学力以外の資質・能力も定期的に測定することです。

ぜひ、これからの入試に求められる能力・資質を生徒に身につけてもらえるよう、意識して「総合的な探究の時間」を進めていきましょう。生徒の学力以外の資質・能力も定期的に測定することで、生徒が継続的に学び成長していけると考えます。

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