国語の新課程入試の特徴と対策 ~国公立大学・私立大学/大学入学共通テスト~

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2025(令和7)年度実施の大学入試から、新課程入試に変わります。大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の国語は新課程に基づいた出題形式に変更され、2025年1月実施の共通テストから新課程を踏まえて大問数・試験時間が変わります。それでは、国公立大学の二次試験や私立大学の個別入試はどうなるのか、といった疑問が出てくると思われます。今回は、新課程入試における個別入試の特徴と対策をお話します。

 

国公立大学・私立大学は入試情報・問題傾向に注意

国語の出題科目について
大学入試では新課程に対応した出題科目に変わります。例えば、共通テスト、東京大学の二次試験の場合は次の通りです。

●共通テストの出題科目(国語)

新課程 現課程
現代の国語
言語文化
国語総合

新課程の科目である「現代の国語」「言語文化」について、多くの学校では旧課程の「国語総合」と同様に履修される科目です。そのため、共通テストでは、後述しますように大問構成や試験時間が変わるものの、旧課程の「国語総合」と同じく高校1年生に相当する学力が問われている点は変わりません。

●東京大学二次試験(一般)の出題科目(国語)

新課程 現課程
【文科】
現代の国語
言語文化
論理国語
文学国語
国語表現
古典探究
【文科】
国語総合
国語表現
現代文B
古典B
【理科】
現代の国語
言語文化
論理国語
文学国語
国語表現
古典探究
【理科】
国語総合
国語表現

東京大学の場合は、上記の表だけ見ますと科目が増えたように見えますが、文科の方は高校の学習範囲から出題されることに変わりありません。

ただし、理科では現課程の場合、先に挙げた共通テストと同じく「国語総合」「国語表現」からの出題ですが、文科と同じ科目範囲に広げた形に変更されます。そのため、理科の方では問題の難度が上がる可能性もあります。なお、2023年10月1日現在、東京大学では新課程入試における試験時間や配点などの詳細がまだ公表されていませんので、今後の情報に注意されます。

各大学の試験内容について
では、新課程の科目変更に伴い、各大学の試験問題についてもガラリと変わるのでしょうか? 結論から言えば、各試験によって対応が異なってくるといえます

共通テストについては、大問構成・配点の変更や試作問題が公表され、問題の傾向も実用文や言語活動に関わる出題が増えるとされています。

一方、国公立大学の二次試験や私立大学の個別入試においては、これまでの傾向を踏襲する大学もあれば、共通テストと同じような出題に変える大学もあると予想されます。

そのため、各大学の入試問題が実際どうなるかについては、それぞれの入試情報や過去問から知る必要があります。現課程の大学入試でも、すでに実用文・言語活動の要素を出題している大学もあれば、逆に従来の傾向を踏襲すると予想される大学もあります。さらに大学によっては、学部・系統で問題傾向が異なる場合もあります。これは、総合型選抜・学校推薦型選抜の出題傾向においても同様です。特に、新課程入試の場合は、まだ詳細などが公表されていないところもありますので、今後公表される情報に注意が必要です。

 

新課程における共通テスト国語の特徴

新たな大問と試験時間の追加、配点内訳の変更

新課程に伴った変更が大きい試験として、共通テストが挙げられます。2025(令和7)年度実施の共通テストでは、「近代以降の文章」が従来の2問から3問に増え、「古典」が2問という全5問構成となります。試験時間は10分延びた90分に変わり、配点の内訳も「近代以降の文章」の3問は110点、「古典」の2問は90点(古文・漢文各45点)に変わることが公表されています。

●2025(令和7)年度の共通テスト (2023年6月大学入試センター公表資料をもとに作成)

大問 配点(200点満点) 時間
第1問「近代以降の文章」 110点
*2022年11月の大学入試センターの試作問題・資料では第1問45点、第2問45点、第3問20点の構成を提示しています。
90分
第2問「近代以降の文章」
第3問「近代以降の文章」 新設
第4問「古文」 45点
第5問「漢文」 45点

各大問の時間配分に一層対策が求められる
注意したいのは各大問の配点について、2023(令和5)年6月の大学入試センター公表資料では、各大問の配点について古文(第4問)、漢文(第5問)はそれぞれ45点と公表されていますが、近代以降の文章(第1問~第3問)は110点という公表に留まっています。つまり、第1問〜第3問の配点内訳は確定していないということです。

このように配点や設問数の内訳が変わる可能性は注視されますが、共通テストの傾向や新設の第3問の試作問題を鑑みますと、時間に比して分量の多い試験になる可能性が高いといえましょう。

形式上では大問が1題増え、試験時間も10分延びただけに見えるかもしれませんが、各大問の分量調整の余地を考慮に入れると、90分という試験時間の中で、各大問の時間配分を適切に計画することが一層求められるといえます。

新設される第3問の特徴
2022(令和4)年11月に公表された試作問題では、新設の第3問の問題例として、複数の文章や図・グラフをもとにレポートを作成するという言語活動に基づく問題が出題されていました。

問題の特徴として、扱われた文章・資料の量が多く、テーマは気候変動や日本語の言葉使いなど身近なトピックでありつつも実用的な文章の特徴が色濃く見られました。さらに、それをレポートの形式で本文や資料を再構成してまとめる、あるいは話し合いの過程を考察するといった、すなわち、言語活動の過程を重視したところに特徴があります

●実用的な文章とレポートの設問例
(『ベーシックマスター国語 改訂第3版』掲載)

実用的な文章とレポートの設問例(『ベーシックマスター国語 改訂第3版』掲載)

ただし、これらの問題はあくまでも試作問題であり、2025(令和7)年度に同様の形式の問題が出題されるという保証もありません。さらに試作問題以外の大問例は公表されていないことから、ある程度の予想に基づいた対策も求められるといえましょう

 

新課程入試といえども、重要なのは読解力

国語の読解力が必須

ここまで述べたように新課程入試では、共通テストと同じく実用文・言語活動の要素を個別入試で出題する大学も出てくると予想されます。ただし、注意したいのは、その一方で特に国公立二次試験では従来の傾向を踏襲するところも多いと予想され、共通テストでも読解力を問う出題のウェイトが依然大きいままとなると考えられる点です。

そもそも、国語の問題は文章がベースになります。文章には「ここを問わなければならない」という箇所があります。それは複数の題材で出題される共通テストになっても変わりません。Z会の書籍でも問うべき要素を厳選して生徒の読解力をのばすオリジナル問題を作成することを主眼として編集しています。

例えば、この10月に改訂リリースしました「基礎が身につく現代文 改訂版」シリーズでは、各回に学習テーマを設け、それに沿った設問として「内容」「理由」「心情」「比喩」などの項目を作成しバランスよく配置しています。問題を解くことを通して、文章の読み方や知識を習得できるとともに、それぞれの文章の意義や特質が理解できるよう設計しています。

●「学習のテーマ」で文章の読み方や知識を習得
(『基礎が身につく現代文 レベル1[改訂版]』掲載)

「学習のテーマ」で文章の読み方や知識を習得(『基礎が身につく現代文 レベル1[改訂版]』掲載)

新課程の対策
2025(令和7)年度以降に実施される新課程入試では、従来の読解力が柱となることは変わりません。その上で、各大学の公表される情報や過去問などをもとにして、各大学の傾向や実用文・言語活動の出題に慣れておく必要があります。

特に難関大学とされる大学の個別入試では、問題を読解するのに知識や教養が求められる傾向があります。こちらは新課程でも変わることはありません。また、総合型選抜・学校推薦型選抜の試験では、専門性の高い問題が出題されることもありますが、専門分野だからこそ、その専門分野に関する知識や教養がベースとして求められます。

例えば、「基礎が身につく現代文 改訂版」シリーズでは、設問の解説に留まらず、コラムを掲載しております。問題を解いた振り返りとしてコラムを読むことで、問題文と関連のあるテーマ知識を理解し、評論家の紹介から教養を深めることができます。これらのコラムをきっかけに視野を広げることで、知識や教養に裏付けされた読解力がつくといえましょう。

●コラム:複数の問題文を関連づけて振り返り、知識を深める
(『基礎が身につく現代文 レベル3[改訂版]』掲載)

コラム:複数の問題文を関連づけて振り返り、知識を深める(『基礎が身につく現代文 レベル3[改訂版]』掲載)

新課程入試の初年度は、情報が少なく対策が難しい部分もあります。実用文や言語活動の面が強調されがちですが、まずは、先生方の従来の指導に基づいた読解力が求められているといえます。基本となる読解力があれば、傾向にも左右されません。必要なのは、まず従来の読解力をつける、その上での入試対策だということになります。

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