「私」の意見を書くために:オリジナル添削シリーズ「小論文講座」

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Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。

「学力」の定義が〈どれだけ多くの知識をインプットして正確に運用できるか〉ということから、〈事象に対する広く多角的な視点と思考力、考えを共有する表現力〉にシフトするなか、大学入試においても小論文やプレゼンテーションを課す選抜方法が一層増えてきています。

一方で、長い文章を書くことに苦手意識をもち、入試対策に尻込みをしてしまう生徒が多いのも現実です。しかしながら小論文を書く力は、小説家のように「文章のセンス」のあるなしで決まるものではありません。「小論文とはどうあるべきか」についてのきちんとしたイメージをもって、それに近づけるための練習を積めば、かならず上達するものです。

《オリジナル添削シリーズ「小論文講座」》では論述力を、その「土台」からしっかり身につけてもらう指導を目指しています

 

「書きたいこと」「書くべきこと」の発見

小論文に対する苦手意識としてよく聞かれるのは、与えられたテーマに対して「何を書けばよいのかわからない」という声です。そのために手が止まってしまい、与えられた字数を埋められない、あるいは、課題文から読み取ったことを書き抜いたり、収集した情報を書き連ねたりするだけで字数を埋めるといったケースがよく見られます。

「書きたいこと」「書くべきこと」をつかむためにはどうすればよいでしょうか。

①意見をつくるまでのプロセス:設問要件に導かれて考える
「設問要件」とは、「何について何文字で書くか」に加えて、「課題文をどう踏まえるのか」「どの観点から論じるのか」といった諸条件のことです。小論文への取り組みにおいては、テーマに対して〈何を書くか〉を決めるまえに、〈何に対する考えを聞かれているのか〉〈どの論点から出発するべきなのか〉という「考えの道筋」をたどることを怠ってはなりません。設問要件を「制約」ではなく「ヒント」として活用し、適切な論点で考え、整理した結果として、まとまりのある意見が形成されるのです。

ただ、設問要件に沿って論点をとらえ、考察を進めていくのは簡単ではありません。最初はワーク教材などを使いながら慣れていくと同時に、日常においても「疑問をもって考えてみる」習慣をつけるということに、時間をかけて取り組んでもらいたいと思います。

そうした思考の訓練を欠き、テーマごとに書くべきことを情報として収集して、いわば「ネタ」ありきで書き始めれば、必ず設問要件との齟齬が生じてしまいます。小論文の出題は、立派な意見を披露する場ではなく〈設問で指示されたとおりに考えてみる〉という試みであり、その「プロセス」が評価されるものと考えてもらいたいと思います。

②テーマに対する当事者意識:「自分」の問題として考える
小論文の課題が示されたときに〈現状はこうである〉〈現状のこの点が問題だ〉〈こうあるべきではないのか〉を明確に説明するのが小論文ですが、そこでは、特別な見識や意表を突くアプローチを打ち立てることが求められているのではありません。評論家や研究者が行うような「強い影響力のある言論の発信」の場ではなく、出題者が知りたいことは、テーマや要件を〈等身大の自分の問題として真摯に考えたかどうか〉なのです

例えば「世界の子どもの死亡率」という問題を考えるとき、アフリカなど特定地域の貧困問題が軸になるとはいえ、そこで国際社会の構造上の問題を指摘するだけではなく、「貧困を引き起こす要因に日本も関わっているのではないか」「十分な医療が受けられない子どもは日本にもいるかもしれない」、「その解決のためにできること、考えるべきことが自分にもある」と、「自分の問題」としてたどっていけば、おのずから「私の意見」が形成されていくのです。正論を首尾よく述べる技量ではなく、「自分自身」の問題として考える姿勢をもって臨めば、読み手にしっかりと伝わる論述となるはずです。

③「読み手」への意識:「書かねばならないこと」にポイントを絞る
テーマに対してさまざまに考えたものの、それらを羅列するのみで一つの意見に収れんさせられないケースもあります。その要因は、小論文は「読み手を説得する」ことが最終目的だということへの意識が不足していることです。「意見」として論述したものに対し、読み手に「確かにその通りだ」と思わせるためには、端的に〈わかりやすく〉〈力強い〉文章でなければなりません。

そのためには、1.テーマに対して自分はどの立場をとるのか(賛成か反対か、など)を明確にする、2.調べたり考えたりしたことのなかから、「何を言えば読み手に『刺さる』か」「これだけは伝えなければいけない」といったことに絞り込むことが重要です。読み手を納得させるために何を書けばよいのかを果断に絞り込むことによって、シャープで明快な「私の意見」が形作られるのです。

 

「考えることの意義」を書く

一方、テーマに対して自分の考えを書けているが、「小論文」としての練り上げが足りないケースも少なくありません。文章を書くこと自体には抵抗がなく「さらさらと」書いたように見受けられる答案が、こういったケースであることもしばしばあります。この場合、まずは「作文」と「小論文」との違いをしっかりわきまえることが必要です。「作文」は自分の「思い」を書き記すもので、読み手が共感するかどうかは相手次第です。一方「小論文」は自分の意見に対して読み手に納得してもらうことが至上命題であり、自分を全く知らない他者が読んでも間違いなく伝わるものでなければなりません。

①客観的・社会的な根拠:誰が読んでも納得できるように準備する
重要なことは、自分の意見が不特定の第三者に間違いなく伝わり、かつ、彼らを納得させられるかということです。自分の意見そのものを繰り返し述べるのではなく、「どのように考えたらその結論にいたるのか」と、その主張をもつことの正当性を客観的に証明することが必要です。イメージがわきやすいように具体的な事例も活用しながら、主張そのものをアピールするというよりは、「そのように考えるに至った経緯」が、検討に値するものであることを示してほしいと思います。

②経験や見聞にひきつける:「リアル」な問題として語る
一方、客観的に納得できる意見であっても、例えば「生成AIの利用には慎重さが必要だ」という社会的通念を述べるだけでは、「それはその通りだ、しかし、あなたの自身の意見は?」と感じさせてしまい、意見論述としての力はもたないものになります。「生成AIのどこが問題なのか」を自分自身に差し迫った問題として考え、「自分が使ってみたらこうであった」、「その時このようなことを問題に感じた」、「そこで自分はどう向き合うか」を現実的に考えていけば、同じ「慎重さが必要だ」という結論であっても、意見論述としての真実味は全く違うものになります。

このように、小論文は作文とは異なり「自分の意見を相手に納得させる」ためのものですが、その意見そのものが独特で、目を引くものである必要はありません。「私自身のおかれた状況と立場で」「私自身の問題として」真摯に考えたプロセスを丁寧に説明することによって、読み手が納得する力をもったものになるのです。

 

「私の意見」を前向きに書くための添削指導

オリジナル添削シリーズ「小論文講座」では、以上のように「自分の考え」を獲得し、まとめあげるプロセスの重要性を主眼として添削指導を行います。そのため、基本的には書き手の考えや立場を尊重し評価します。たとえ社会における多数派の考えとは異なる立場から意見が述べられていても、的確な根拠を挙げ論理的な主張がなされていれば、小論文として適切な評価を与えるということです。

小論文には唯一の「正解」は存在しないのですから、「正しい解答へ導く」という指導は必ずしも適切とはいえません。何よりも大切なことは、書き手が何を考え、何を書こうとしたのか、その道筋をたどって改善のアドバイスをすることです。

その際、徹底して、書かれたことの中から「この視点は生かせる」という部分を見つけて、それをどう生かすかという方向で指導をするようにしています。不十分な考察や未完成な論述に対して「書けていない」ことを指摘するだけでは意欲が削がれてしまいます。

考え方はさまざまあるが、あなたの立場であれば…と、「正しい解答へ導く」のではなく、さまざまな考え方があることを示すような問いかけを用いることによって、「私の意見を書いてもいいのだ」「書きたい」と、さらに考えを深め、書き直すというチャレンジ精神をもってもらうことが望ましいと考えています。

添削見本

設問要件に導かれて真摯に考えることによって「私の意見」を形づくり、読み手を意識することによって、説得力をもたせていく。そのような経験をたくさん積んで「小論文」に自信をもっていただきたいと思います。

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