新課程の大学入試「英作文」はこう指導する! ~『アップリフト英作文』シリーズの学習指導~

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大学入試センターが大学入学共通テスト(以下、共通テスト)に変わり、学習指導要領が改訂されるなど、英語教育にとっても変化が多い中、大学入試「英作文」では何が問われるのでしょうか。本記事では、大学入試の出題方針や学習指導要領に触れつつ、Z会の英作文教材や学習指導のポイントを説明いたします。

 

1.大学入試「英作文」と学習指導

共通テスト「英語」では、文法・語法に特化した問題(センター試験「英語筆記」第2問)が出ません。これは、文法・語法の知識(後述の「英語という言語の仕組みの理解」「しっかりした語彙力や慣用表現の知識、構文や文法の理解など」)を軽視しているのではなく、それらを土台とした思考力・判断力・表現力を問う出題に変わったためです。また、各大学の個別試験では毎年「英作文」が出題されます。最新の学習指導要領にあるように、表現力の育成を重視する指導方針から考えると、今後「英作文」の出題が減るということはまず考えにくい状況にあります。

「英作文」の出題について見てみると、国公立大学では「和文英訳」「自由英作文」が半分以上(年度によっては75%前後)を占めます。私立大学では「整序英作文」が大半(年度によっては75%以上)を占めるものの、「和文英訳」「自由英作文」も(出題比率は少ないとは言え)特定の大学・学部では毎年のように出題されます。

個別試験における「英作文」の一例として、東京大学が公示している「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと」を挙げます。この【外国語】の項目には以下のように記述されています。

2) 英語を用いて表現する力
同様の場(知的内容のあるやりとりを英語で交わす場)において,自分の意見や考え方を,相手にわかってもらえるように,正確な英語を用いて表現する力も必要不可欠です。英語を使って表現する力は,英語という言語の仕組みの理解の上に養われます。
引用元:「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと」(東京大学 入学案内)(https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/ e01_01_18.html)(2024年9月24日閲覧)

 

さらに、もう一例として、京都大学の「個別学力検査の出題方針について」を挙げます。

個別学力検査「英語」では,(中略)高い英語コミュニケーション能力を身に付ける上での基礎的な学力とその応用力を問います。この高い英語コミュニケーション能力は,しっかりした語彙力や慣用表現の知識,構文や文法の理解などを基盤としてようやく実現されるものです。このような基礎的な学力とその応用力を問うために,まとまった内容の英文和訳や和文英訳を求める問題を多用します。語彙知識を問うことに加えて,文法事項のうちでも特に論理的な思考と表現に欠かせない関係代名詞や関係副詞,仮定法,分詞構文などの理解力や,代名詞の指示対象の的確な理解力を問います。(中略)このような出題を通して,単なる訳出ではなく,包括的な英語の理解力と表現力を重視して評価します。
引用元:「個別学力検査の出題方針について」(京都大学)(https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/inline-files/syutsudai_houshin-bc7de475c2e2dab94b65bff79651c67b.pdf)(2024年9月24日閲覧)

こうした共通テストと個別試験に共通して言えるのは、「英作文」の土台となる文法の知識を定着させることが何よりも重要であるということです。そして、個別試験では文法の知識を応用する力を見るために「英作文」が出題されます。

先述の東京大学「高等学校段階までの学習で身につけてほしいこと」に、「現実のことばの運用では、情報は「発信」あるいは「受信」という形で一方向的に伝えられるわけではなく、誤解を解いたり視点を共有したりといった、参加者同士の協力による相互理解のプロセスが加わります」ともあります。高校課程「英語」の授業や教材では「英文読解」(主に受信技能)と「英作文」(主に発信技能)を分けて指導されるケースが多いと思います。これは生徒たちを志望大学に合格させるのに必要な指導です。ただ、弊社の教材をご利用される先生方には「大学入試の先を見据えた指導」をお願いしたく存じます。「相手の立場や心の中を想像し、理解し、解釈しながら、自分の表現を模索する」「英語を理解する力と英語を用いて表現する力を連動させ、総合的に運用する」ことを意識した授業や指導を、弊社の教材や添削指導を活用して進めてください。

 

2.2024年10月【改訂版】発刊!『アップリフト英作文』シリーズ(2レベル)

・本シリーズの指導理念

学問に王道なしとよく言われるように、たしかな学力の習得には、学校での日々の学習、教科書での学習の積み重ねが大切であることは紛れもない事実です。しかし同時に、教科書だけでは大学入試を乗り切るための実戦力としては必ずしも十分でないことも、また事実です。例えば、英語や国語では、教科書と同じ文章は入試にはまず出題されません。教科書で学んだ基本知識を活用することによって、初めて出合う文章を読み解く力が試されます。

アップリフトが目指すものがそこにあります。すなわち、教科書で培った基礎力を入試でも通用する実戦力、応用力へと「持ち上げる」こと、言い換えれば、教科書から入試への橋渡しをすることです。

一人でも多くの高校生の方が、アップリフトというリフトに乗って、それぞれの志望校へと無事到着されることを願ってやみません。

・本シリーズの指導方針~教科書の「文法の知識」から「英作文を書く力」へ

大学入試(共通一次試験、センター試験、共通テスト、個別試験)を徹底的に分析した上で、本シリーズを改訂しました。先述の東京大学や京都大学の例で取り上げたように、大学入試「英作文」で問われる「文法の知識」を確認すること、そして、この知識を実際に「書く力」につなげる演習を繰り返すこと。この2つが大学入試「英作文」の攻略には欠かせません。

・学習指導のカリキュラム、要点と演習問題へ

教科書や文法書に準じた指導では「文型」「動詞」「時制」など項目別の学習になります。英語の「土台作り」としては非常に大切です。ただ、空所補充を主とする文法・語法の指導だと「英作文」は攻略できません。文法項目の中でも特に発信に使えるものを意識的に指導し、複数の文法項目を応用する「和文英訳」「自由英作文」の演習が必要です。

 

『アップリフト英作文 入試基本[改訂版]』

『アップリフト英作文 入試基本[改訂版]』

・「文法の知識」から「和文英訳」へ橋渡し~要点(例文+解説)と演習問題をすべて刷新!

入試でも、本書の難易度の基準とした大学共通第一次学力試験、センター試験、共通テストを徹底的に分析しました。具体的には、これらの文法・語法・語句整序英作文の全問を編著で解き、頻出の文法・表現を厳選し、要点に入れ込みました。また、演習問題(全300問)では合計70問ほどを、センター試験と共通テストの「英語」に出題された英文を和文英訳問題に改変して転載し、教科書や文法書で身につけた文法・語法の知識を和文英訳に引き上げるのに最適な1冊に仕上げました。

・語句・語順のヒント付き和文英訳問題

入試基本レベルの英作文教材であることから、独学でも取り組みやすいように、「適語句空所補充→語句整序英作文→和文英訳」の3Steps 方式を旧版から引き継ぎました。また、自己採点・自己添削しやすいように、和文英訳では語句・語順を指定し、解答ができるだけ1つに定まるようにしました

▼問題編

問題編

▼解答・解説編

解答・解説編

・規範的な文法・表現の指導~大学入試に必須の表現と英語ネイティブが実用する自然な表現

問題で別解ができるだけ出ないような工夫を施しつつ、解説では大学入試「英作文」で使える別の表現をできるだけ紹介しています。また、英語ネイティブが実用する自然な表現やニュアンスも紹介しました。英語ネイティブに英文校閲を依頼するのに加え、主要な英語コーパスや近年の洋書に登場する実例まで調べて、本書の学習者に身につけてほしい文法・表現を厳選・解説しました。

たとえば、「discuss は、他動詞なので、『discuss about+議題』のように使ってはいけない」と指導されると思います。しかしながら、主要な英語コーパスや Web 上の比較的公式な動画を確認すると、「discuss about+議題」の実例が数多く見つかります。本書で「discuss about+議題」を許容として扱うのか、非常に悩みました。そこで、英語ネイティブへの聞き取りや関係資料(著名な文法書と辞書)を再確認しました。たとえば、Web 上の英英辞典では次のように解説されています。

People sometimes say ‘discuss about something’. However, this is still considered incorrect by most people, teachers and in exams. Use discuss or have a discussion about instead: I discussed my problem with my parents. • I had a discussion about my problem with my parents. • I discussed about my problem with my parents.
引用元:「Oxford Learner’s Dictionaries」(https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/discuss)(2024年9月24日閲覧)

こうした再確認や協力者との相談を経て、長年、大学受験生や中高生を添削指導してきたZ会の英作文教材としては、まずは「規範的な文法・表現」を指導すべきだという結論に至りました。したがって、本書では「discuss about+議題」を完全な誤りとはしないものの、「discuss+議題」として使うように解説しております。この他にも「大学入試に必須」「英語ネイティブが実用する」という2つの間で、編著と校閲者と英語ネイティブで議論を繰り返した結果を、本書の各所に詰め込んでいます。

 

『アップリフト英作文 入試標準[改訂版]』

『アップリフト英作文 入試標準[改訂版]』

・「和文英訳」から「自由英作文」への橋渡し~3パート方式のカリキュラム

パート1では、基本的な文法・表現のうち、英作文での使用頻度が高いものや、より優先的に身につけておく必要があるものから、順次表現力を広げるものへと学習。パート2では、近年の大学入試問題に頻出のテーマや表現を盛り込んだ英作文を学習。パート3では、本格的な入試での自由英作文演習への橋渡しとして、基本的な自由英作文の書き方を学習しますが、ここで、パート1、2で学習した語句や表現が活用できる作りとなっています。

・別解や、別表現をできるだけ示す

英作文は正解が一意に定まらないのが特徴でもあります。英訳問題では、スタンダードな英文・生徒が書きやすい英文を模範解答とし、やや背伸びしたネイティブらしい英語表現や、ある程度言い換えて表現したものなどを別解として示しています。解説の中にも、その他の可能な表現などを示し、生徒自身に「こういう書き方もできるのか」という発見をしてもらえればと思っています。また、直接解答につながらなくても、関連して覚えておくべき表現もピックアップして示しています。

▼問題編

問題編

▼解答・解説編

解答・解説編

・Review and Further Learning

パート1の最後に、それまでに学習したポイントを復習するレッスンを設けています。ここでつまずいたり不安があったりした問題については、該当のレッスンに戻って復習したのち、パート2以降に進む、という活用をしていただければと思います。

・大学入試「英作文」トピックのこだわり

2017年以降の大学入試「和文英訳」に登場した日本語の語句と語句同士の組み合わせ、英訳に登場する英単語の頻度をすべて確認・分析しました。さらに、これらすべての語句をジャンル・トピックに分類して、教科書や英作文教材の類書を確認の上、本書で扱うトピックを厳選・決定しています。

・重要例文集

巻末には、本問とは異なる、英作文に活用できる表現を文の形でまとめたものを一覧として掲載しています。本問の解答に加えて、より豊かな表現力を身につけるために活用していただくことを期待しています。

▼重要例文集

重要例文集

 

3.著者から先生方へ

『アップリフト英作文 入試基本[改訂版]』
著者 向井建雄先生:

本書では、基本的な英文を理解して覚えられるよう、各レッスンで例文を取り上げ、文法・表現について解説しています。大学入試の英作文に必要な知識を確認したうえで、「適語句空所補充→語句整序英作文→条件付き和文英訳」の順に出題し、段階を踏んで着実に力をつけられる構成としました。とくに「条件付き和文英訳」では、正解の英文が一つに定まるように語句と語順を設問で示しています。こうした条件を設問に沿えることにより、入試必出の表現を学習者が演習を通じて身につけることができ、指導者が添削しなくても学習者自身で答え合わせができるように工夫しました。

本書の難易度は、2021年開始の大学入学共通テスト「英語」(旧大学入試センター試験「英語」)に出題される英文レベルまで、としました。和文英訳のカリキュラム(=本書の目次)は、「主語と動詞を考える」「副詞を考える」「形容詞を考える」「名詞を考える」という大きな流れに沿って、英文の基本的な構造を学びながら、実際に使うために必要な文法・表現の知識を定着させていくものにしました。中学課程の文法を習得していれば、高校課程の文法を学ぶ前でも、あるいは一通り学習してからでも、理解しやすいように解説しています。学校で学んだ文法・表現の知識を大学入試レベルの英作文力へアップリフトするため、そして、英語を実用することを目指して、本書を活用してください。

『アップリフト英作文 入試標準[改訂版]』
著者 岡﨑友泰先生:

英作文の要諦は、和文英訳問題ならば与えられた日本語、自由英作文ならば頭の中に浮かぶ日本語を「簡単な日本語」(例えば「真偽」→「真実かどうか」)に加工し、それを「自信のある英語」で書くということです。ただし、加工できない、あるいは加工するとかえって誤りやすい表現や、知らないと書けない表現、必要なコロケーションなどは覚える必要があります。これらを踏まえて、1文レベルで、最初は拙い英語でも構いませんので、まずはミスのない英文を書く練習をしましょう。

本書では、Step1に語句整序問題、Step2に誤文訂正、空所補充、部分英訳問題、Step3に和文英訳問題を配置し、学習者が無理なく学べることを意識しました。英作文に必要な文法事項を練習できるように、大学入試問題やそれを参考にしたオリジナル問題を出題し、その問題の中には自由英作文を書く際に、「そのまま使えるような表現やトピック」も散りばめています。さらに解答・解説編では、和文英訳問題の模範解答はできる限り学習者目線で書けるものにし、加えて問題の解説と関連する内容や、身につけて欲しい語句を「表現」として掲載していますので、模範解答とあわせてぜひ覚えてください。そして最後にStep3までで学んだことを生かしてChallenge問題(難関大学の入試問題レベル)に挑戦しましょう。

 

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重要例文集

 

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