生徒のこれからのキャリア教育をサポートする「8つの能力」の可視化
Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。
生徒のキャリア教育において「内省・メタ認知」により「自分を知る」取り組みを行うことは重要です。総合的な探究の時間の授業などを活用し、生徒が内省・メタ認知を行えるような機会を取り入れている先生方もいらっしゃるでしょう。
キャリア教育において重要な「内省・メタ認知」を促すためには、まず社会で求められる能力について知ることが大事です。その上で、どの程度の能力が身に付いているのか、生徒自身で考えてもらう機会を設けることで、より自分について深く知る機会を与えられます。
例えば、自分に足りない能力に気が付くかもしれませんし、自身の目指す将来のためにどのような能力を今後身につけるべきか考えるきっかけになるかもしれません。
キャリア教育における「内省・メタ認知」の重要性については以下でご紹介しています。こちらもご参照ください。
総合的な探究の時間などを活用し、社会で求められる能力について自己評価による能力の可視化を定期的に行う機会を与えてあげるのが理想だと考えます。
しかし、社会で求められる能力と言われても、学力以外の能力とはどういったものを指すのか、言語化して指標のようなものを定めていらっしゃる学校や先生方はあまり多くないかもしれません。
今回の記事では、Z会が扱っている非認知能力測定ツールであるDiscoveRe Method®の8つの能力と、自己評価による能力の可視化で生徒の「内省・メタ認知」を促す取り組みについて紹介します。
変化の激しい今の時代に必要な8つの能力とは
8つの能力とはJAXAがNASA等と共に定めた「宇宙飛行士として望ましい行動と心構え」を基に今の時代を生きる人々に必要な能力としてピックアップしたものです。
8つの能力は「困難な課題をチームで解決する」ために必要な能力であり、変化が激しく将来の予測が困難な今の時代においてはどのような仕事にも求められます。
また、8つの能力はOECD(経済協力開発機構)が定めたキーコンピテシーと多くの共通点を持つものでもあります。
キーコンピテシー(key competencies)とは、全世界的に今の時代を生きるために欠かせない能力といわれており、文部科学省では次のように説明されています。
key competencies(主要能力)。教育の成果と影響に関する情報への関心が高まる中で1990年代後半にスタートし,2003年に最終報告されたOECDのプログラム「コンピテンシーの定義と選択」に規定されており,(中略)単なる知識や技能だけではなく,技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して,特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力であるコンピテンシー(能力)の中で,特に以下の性質を持つとして選択されたもの。
1.人生の成功や社会の発展にとって有益
2.様々な文脈の中でも重要な要求(課題)に対応するために必要
3.特定の専門家ではなく全ての個人にとって重要出典:「用語解説」(文部科学省)(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/031/toushin/attach/1397267.htm)(2022年7月20日に利用)
8つの能力と評価ポイントの紹介
前述したOECD(経済協力開発機構)のキーコンピテシーは次の3つのカテゴリーに分けられており、文部科学省ではこのカテゴリーを下記のように表現しています。
- 自律的に行動する能力 ・・・ 対自己
- 2.多様な社会グループにおける人間関係形成能力 ・・・ 対他者
- 3.社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力 ・・・ 対課題
キーコンピテシーとの対応がわかりやすいように、8つの能力を3つのカテゴリーに分け、自己評価による可視化のポイントを紹介していきます。
カテゴリー1 自律的に行動する能力(対自己)
能力1 自己管理
「自分自身のことをどの程度把握し、改善するための行動をとることができるか」という内容の能力です。
次のような質問を先生方で用意してあげ、生徒の振り返りをサポートしてみてはいかがでしょうか。質問に答える形で自己評価することで「自己管理」についての「内省・メタ認知」を促す一助となります。
- 自分自身がどのような人間か説明できる?
- 自分で自分のストレスを和らげることができる?
- 頑張れば達成できるような目標を設定している?
- 失敗を次に活かすことができる?
カテゴリー2 多様な社会グループにおける人間関係形成能力(対他者)
能力2 コミュニケーション
「理解し、納得し、誤解しないように他の生徒と伝え合っているか」という内容の能力です。
「コミュニケーション」能力に関する「内省・メタ認知」を促す質問は以下が考えられます。一つの指標として参考になさってください。
- 自分が理解・納得するまで聞いている?
- 相手が理解・納得するまで伝えられている?
- 相手が誰でもわかりやすいやり取りができている?
- 誤解のないやり取りができている?
能力3 異文化適応
「他者との違いが理解しがたいものであっても偏見を持たずに尊重することができるか」という内容の能力です。
「異文化適応」能力に関する「内省・メタ認知」を促す質問は以下が考えられます。一つの指標として参考になさってください。
- 他者の見方や考え方を尊重できる?
- 偏見をもたないように心がけている?
- 違和感を感じたとき、その理由を考えている?
能力4 チームワークと集団行動
「どのようなメンバーとも向き合い自分よりチームの団結を優先できるか 」という内容の能力です。
「チームワークと集団行動」能力に関する「内省・メタ認知」を促す質問は以下が考えられます。一つの指標として参考になさってください。
- 自分の結果よりもチームの結果を優先できている?
- チームに積極的に貢献しようとしている?
- メンバーと良好な関係を築けている?
能力5 リーダーシップ
「リーダーになったらその責任をきちんと引き受けることができるか、リーダーでなくても、チームのことを考えて行動できるか」という内容の能力です。
「リーダーシップ」能力に関する「内省・メタ認知」を促す質問は以下が考えられます。一つの指標として参考になさってください。
- 自分がリーダーの場合、的確に指示を出せている?
- 自分がフォロワーの場合、進んで意見を出したり、作業をしたりしている?
- 場合に応じてふるまいを変えている?
能力6 対人コンフリクト管理
「もめごとが起きたら、関係者全員を集め、冷静に対処できるか」という内容の能力です。
「対人コンフリクト管理」能力に関する「内省・メタ認知」を促す質問は以下が考えられます。一つの指標として参考になさってください。
- もめごとが起きたときに、誰が問題かと考えていない?
- もめごとが起きたときに、何が原因かを考えられている?
- 意見の違いで人を攻撃していない?
- もめごとのきっかけを感じ取れている?
カテゴリー3 社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力(対課題)
能力7 状況認識
「いかなる状況の変化も見逃さないように自分とチームの体制を整えているか」という内容の能力です。
「状況認識」能力に関する「内省・メタ認知」を促す質問は以下が考えられます。一つの指標として参考になさってください。
- メンバーや周囲の状況に気を配れている?
- 十分な情報を集められている?
- 様々な可能性を想定できている?
能力8 意思決定と問題解決
「自分のやり方を押し通すのではなく、手順に従って問題解決に取り組んでいるか」という内容の能力です。
「意思決定と問題解決」能力に関する「内省・メタ認知」を促す質問は以下が考えられます。一つの指標として参考になさってください。
- いつも同じ手順や方法だけを使っていない?(多数決など)
- 一つひとつの選択肢について良い点と悪い点の両方を考えている?
- 決定して実行したあと、振り返りをしている?
生徒に対し、定期的に質問を投げかけ、自身を振り返ってもらうことで、徐々に普段の生活でも8つの能力を意識して行動できるようになると考えます。自己評価による能力の可視化を定期的に行うことで気づきも多く与えられますので、生徒の成長により有効に働くでしょう。
Z会サービスの紹介
「内省・メタ認知」を促す取り組みをどのように進めていけば良いか悩まれる先生方も多いと思います。生徒のキャリアに必要な「内省・メタ認知」や能力の可視化についてお困りでしたら、ぜひZ会サービスDiscoveReMethod®の導入をご検討ください。
DiscoveRe Method®(ディスカバリー メソッド)
DiscoveReMethod®は、今回ご紹介した8つの能力を可視化するアセスメントです。生徒自身の自己評価と客観的な評価の二つで能力を可視化します。
自己評価により生徒の「内省・メタ認知」を促すことができ、客観的な評価と自己評価を比べることでより多くの気付きを生徒に与えられると考えます。
先生方が普段から8つの能力を意識して接し、イベントのたびに振り返りを行っていくことで生徒に変容が見られるようになるでしょう。これらの取り組みをアセスメントで測定することでその変化を視覚化することが可能になります。
DiscoveReMethod®を活用して学校独自の行動の指標を定めることも可能です。行動の指標とは前述した「内省・メタ認知」を促す質問のようなものです。行動の指標を先生方と生徒の共通言語として扱うことで、先生方にとっては生徒のサポートがしやすくなり、生徒にとっては普段から行動の指標と自身の行動を照らし合わせるようにすることで自然と「内省・メタ認知」を行えるようになります。
実際、行動の指標を取り入れられた学校では、生徒の非認知能力に関する行動により良い変化が見られています。
まとめ
キャリア教育において重要な「内省・メタ認知」を促すためには、キャリアに必要な能力、つまり社会で求められる能力を知ることも大事です。社会で求められる能力と照らし合わせて自身を振り返ることでより深く自分を知ることができ、自分のキャリアのために何をすべきか考える機会等を与えられます。
今回は社会で求められている8つの能力と、それぞれの能力を振り返り、自己評価により可視化する取り組みについてご紹介しました。8つの能力とはJAXAがNASA等と共に定めた「宇宙飛行士として望ましい行動と心構え」からピックアップしたものです。また、OECD(経済協力開発機構)が定めたキーコンピテシーと多くの共通点を持ちます。
先生方で8つの能力の振り返りを促す質問を用意してあげ、生徒が質問に答える形で自己評価することで「内省・メタ認知」を促し、能力の可視化の一助となると考えます。それぞれの能力に関する質問をいくつか例に挙げておりますので参考になさってください。
生徒のキャリア教育において重要な「内省・メタ認知」を促す取り組みの一つとして、ぜひ8つの能力の可視化もなさってみてはいかがでしょうか。
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