Z会数学書籍における新課程対応への考え方
Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。
数学は学習指導要領の改訂の影響を受けやすい教科です。
今回の改訂(高等学校学習指導要領[平成30年告示])に伴い、共通テスト「数学II・数学B」が「数学II・数学B・数学C」に変更されるなど、学習内容の変更だけでなく、入試そのものにも大きな変更が見られます。
本記事では、新課程について、学習内容や入試の変更点などに言及しつつ、Z会書籍においてどのような対応をおこなっているかを紹介していきます。
※以下、2025年度(令和7年度)以降の入試における学習内容を新課程、2024年度(令和6年度)以前の入試における学習内容を旧課程と表記します。
【数学I・A】
「整数」は、二次私大対策用の書籍で旧課程と同様に扱う
数学I・Aでは、1つ目のポイントとして、旧課程数学A「整数の性質」の内容が、新課程数学I「数と式」・新課程数学A「数学と人間の活動」に分かれ、大項目として「整数」を扱わなくなったことが挙げられます。共通テスト「数学I・数学A」の出題範囲においても、「数学A」は「図形の性質」、「場合の数と確率」の2項目のみに対応した出題とすることが記載されています。
そのため、検定教科書や共通テスト対策のみの学習では、「整数」の対策をしないままに数学I・Aの学習が進んでしまう可能性があります。しかし、二次私大対策において「整数」の対策が必要であることは、履修範囲になかった頃の出題をふまえ、これまでと変わらないだろうと考えました。
そこで、二次私大対策を目的としたZ会書籍では、旧課程と同様に「整数」を扱う方針で新課程対応を進めることにしました。既刊の『Z会数学基礎問題集 数学I・A チェック&リピート 改訂第3版』では、「整数」を単独で扱う章を残し、最新の入試傾向をふまえて一部の問題を差し替えつつも、旧課程と同様の内容を学習できるようにしています。新刊の『定理・公式から学ぶ数学I・Aの考え方 チェック&リファレンス』でも「整数」を扱っています。
「期待値」は、共通テスト・二次私大対策用書籍のどちらも扱う
2つ目のポイントとして、新課程数学A「場合の数と確率」で「期待値」が追加されることが挙げられます。「期待値」は、旧課程数学B「確率分布と統計的な推測」の範囲でしたので、試験範囲に入っていないことも多く、学習していなくても入試対策にはあまり影響しませんでしたが、新課程では出題される前提で教材を用意する必要があると考えました。
そこで、共通テスト対策を目的としたZ会書籍では、「期待値」のオリジナル問題を追加して新課程対応を進めております。また、二次私大対策を目的としたZ会書籍では、「期待値」を含んでいる2014年(平成26年)以前の入試問題を追加して新課程対応を進めています。既刊の『Z会数学基礎問題集 数学I・A チェック&リピート 改訂第3版』や『ハイスコア!共通テスト攻略 数学I・A 改訂第2版』では、「期待値」の問題を数問追加しています。そして、今後発刊予定の『理系数学入試の核心 増補版(仮)』でも、同様に「期待値」の問題を追加する予定です。
しかし、新課程入試の初年度は、「期待値」を学習していない旧課程の受験生も少なくないため、新課程・旧課程の共通範囲での出題が中心になると考えています。そのため、2025年度(令和7年度)入試では、「期待値」の出題は限定的になると予想しています。
その他、新課程数学I「データの分析」では、「仮説検定の考え方」や「外れ値」が追加されます。これらは、共通テストの試作問題でも扱われていたため、共通テスト本番で出題される可能性があると予想しています。そこで、模試形式の共通テスト対策書籍では、一部の模試に「仮説検定の考え方」や「外れ値」を含む問題も掲載していきます。
【数学II・B・C(ベクトル)】
「ベクトル」は、文系・理系の両方の学習者をにらんだ書籍構成に
数学I・A以外では、1つ目のポイントとして、旧課程数学B「ベクトル」が新課程数学Cに移るものの、文系・理系を問わず「ベクトル」が引き続き必要となることが挙げられます。共通テストでは、これまでの「数学II・数学B」が「数学II・数学B・数学C」となりますが、数学B「数列」、数学B「統計的な推測」、数学C「ベクトル」、数学C「平面上の曲線と複素数平面」の4項目から3項目を選択する必要があるため、「ベクトル」は文系・理系を問わず多くの受験生が選択することが予想されます。また、主要な二次私大入試では、文系であっても数学C「ベクトル」が試験範囲に含まれています。そのため、文系でも数学C「ベクトル」の学習が前提になると考えています。
そこで、『Z会数学基礎問題集 チェック&リピート』シリーズや『定理・公式から学ぶ数学の考え方 チェック&リファレンス』シリーズでは、文系・理系ごとに試験範囲に合わせた科目選びがしやすいように、「数学II・B+C(ベクトル)」と「数学III+C(平面上の曲線と複素数平面)」で分ける予定です。文系・理系共通で「数学I・A」と「数学II・B+C(ベクトル)」を使い、理系は「数学III+C(平面上の曲線と複素数平面)」も合わせて使うことで、入試対策が進めやすいよう配慮します。また、新課程入試で「ベクトル」の出題傾向が急激に変わることは考えにくく、「ベクトル」の対策は旧課程の問題でも引き続き対応可能だと考えております。
「統計的な推測」に特化した書籍を発刊し、共通テスト対策書籍でも取り上げる
2つ目のポイントとして、新課程数学Bは「数列」、「統計的な推測」、「数学と社会生活」から2単位を選択となっているため、「統計的な推測」もほぼ必要となることが挙げられます。「統計的な推測」は、二次私大入試において必要となる大学や学部は限られますが、共通テストで、数学B「数列」、数学C「ベクトル」の2項目を選択したあと、数学B「統計的な推測」と数学C「平面上の曲線と複素数平面」のどちらかを選択すると考えると、「統計的な推測」の選択は旧課程のときよりも多くなると考えています。
「統計的な推測」は、授業の進め方が難しいという学校からの声も多く聞かれています。そこで、『「統計的な推測」ニューアプローチ ー速習ワークブックー』を新たに発刊し、「統計的な推測」に特化した学習ができるようにしました。その他、「共通テスト分野別演習 数学I・A/II・B・C」、「ハイスコア!共通テスト攻略 数学II・B・C」でも「統計的な推測」を追加しております。「2025年用 パワーマックス共通テスト対策模試」や「2025年用 共通テスト実戦模試」など、すべての模試形式の書籍でも扱います。
【数学III・C(平面上の曲線と複素数平面)】
これまで通りの対策で!
数学IIIと数学C(平面上の曲線と複素数平面)は、新課程による変更はないため、二次私大対策においては、これまで通りの学習で対応可能です。ただし、共通テスト対策は二次私大対策とは別に行う必要があると考えていますので、数学C「平面上の曲線と複素数平面」の共通テスト対策においては、共通テスト専用の書籍で対策することをおすすめします。共通テスト対策のZ会書籍では、「統計的な推測」と同様に扱います。
【まとめ】学校専用書籍の新課程対応について
最後に、おもな学校専用書籍について、新課程対応の状況をまとめておきます。
「2025年用 パワーマックス共通テスト対策模試」(2024年6月発刊予定)
新課程で追加される内容は、いずれかの回の模試で出題するよう調整しています。また、「数学II・数学B・数学C」における選択問題は省略せずに全問掲載しているため、すべての分野について万遍なく対策が可能です。
「共通テスト分野別演習 数学I・A/II・B・C」(販売中)
基本事項から本番形式の問題演習まで、新課程で追加された内容についても、ひと通り学習できるように編集しております。
「共通テスト分野別演習 数学I・A/II・B・C」の詳細はこちら
「「統計的な推測」ニューアプローチ ー速習ワークブックー」(販売中)
新課程数学B「統計的な推測」の学習に特化しています。基本から共通テスト対策まで対応しています。
「「統計的な推測」ニューアプローチ ー速習ワークブックー」の 詳細はこちら
「アップリフト」シリーズ(販売中)
入試での頻出内容を扱っており、2025年度(令和7年度)入試においては、新旧課程の共通範囲での出題が多くなると予想しており、旧課程と共通の分野の対策が必要と考えているため、今のところ2024年中の改訂の予定はありません。
「アップリフト」シリーズの詳細はこちら
しかし、これらの対応は、あくまで2025年度(令和7年度)入試に向けてのものと考えております。最新の入試傾向をつねに確認しながら、2025年度以降の入試に向けての対応も順次進めていく予定です。
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