大学入試改革に伴う小論文の傾向〜広がる総合型選抜 近年の難関大入試で求められる力とは【前編】

2023年8月23日

カテゴリー : 大学受験

2020年に始まった大学入試改革。総合型選抜、学校推薦型選抜、一般選抜などの受験区分の名称も定着してきました。
大学入試改革においては、「知識・技能」に加え、「思考力・判断力・表現力」や「主体的に学習に取り組む姿勢」も重視するものとし、その力を測る手段として小論文が注目を集めていました。

 

小論文の観点から見た大学入試の変化_2019.9

 

現在、大学入試において小論文はどのように扱われているのでしょうか。
最新の状況について、Z会の高校生向けコース国語・小論文担当が解説します。

大学入試改革で小論文の出題は変わったのか

大学入試改革によって「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に取り組む姿勢」が重要視されるようになり、小論文の出題が増えると思われていました。しかし、現在のところ、一般選抜の枠組みにおいては、「小論文の出題が大きく増えた」ということはありません。
それでは、出題の中身に変化があったのでしょうか?
Z会で独自に調べた、難関大学における小論文入試の出題状況をもとに、 2019年度と2022年度の出題傾向を見てみましょう。
多少の変化はありますが、「課題文読解型」が半数近くを占めるなど、現時点では傾向自体に大きな変化は見られません。

 

無視できない「総合型選抜・学校推薦型選抜」の流れ

では、何が変わったのでしょうか。
大学入試全体における傾向として、「総合型選抜・学校推薦型選抜」の募集人員の割合が年々増加していることは無視できません。「総合型選抜・学校推薦型選抜」では、多くの大学・学部で「小論文」が出題されているのです。小論文の出題形式はさまざまですが、総じて「現代の社会(あるいは出題する学部の学問領域)が抱える課題・問題について、自分なりの意見を構成し、他者に伝えること」が求められる点が共通しています。
入試改革に伴う変化は、〈総合型選抜・学校推薦型選抜の拡大〉あるいはその中での〈小論文や総合問題の導入〉などといった【入試実施の大きな枠組み】レベルで現れている、と言えます。

 

一般選抜の注意したい動向

「一般選抜では大きな変化が見られない」ということを述べましたが、注意が必要なところもあります。
2023年6月に筑波大学が「5年後をめどに、個別試験を面接や小論文中心の形式に変更する」という入試改革の方針を表明しました。入試形式の変更と合わせて、各大学・学部で特徴的な出題が導入される可能性もあるため、今後も志望する大学・学部の入試動向については注意が必要です。

 

国語についても要注意

まだ過渡期にあると言える小論文ですが、「国語」科目では、従来とは異なる新たな傾向の出題が見られるようになりました。
2021年1月よりセンター試験に代わって新たに導入された「大学入学共通テスト」では、授業やレポートといった生徒の言語活動や発表場面を想定した設問が、国語の各大問内で出題されています。さらに、2025年1月から開始される新課程の出題では、試験時間が従来の「80分」から「90分」に増加するとともに大問が新たに1題追加されることが決まっています。図表やグラフを含めた多様な文章・資料の読解、効果的な主張や表現を行うための情報の組み合わせ方・表現の工夫、といったような、【言語活動の過程】を重視した出題が予定されています。

 

入試改革の出題傾向に見る、「難関大入試」やその先の社会で求められる力とは

入試改革を通じて大学入試の出題方法・出題形式の多様化が進み、それぞれの大学・学部が、各自のアドミッションポリシーに応じてふさわしい学生を選抜できるよう、現在も出題内容の見直しが進められています。アドミッションポリシーの内容は大学や学部により異なりますが、総じて重要視される力として、以下が挙げられます。

  • 簡単には解決できず、答えが一つに定まらない社会の問題について、自分なりに思考し意見を発信する力
  • 高校までに学んだ内容を大学に入ってからの学びと結びつけ、社会において役立てようとする力

単に教科の難しい問題が解ける、多くの知識を備えている、というだけでなく、多様な意見をもつ他者とときに協働しつつ、主体性をもって激動する社会の難題に取り組もうとする姿勢が、これからの社会において求められているといえます。

 

大学入試改革に伴い、入試で求められる力と、社会で求められる力の結びつきが強まっています。
こうした普遍的な力や姿勢は、一夜漬けで身につけられるものではなく、積み重ねることで磨かれるものです。
よりよい未来をひらくためにも、学校での学びと社会の話題を結びつけながら学習するよう習慣づけましょう。

 

後編では、これらの力の身につけ方について解説します。
ぜひ後編もご覧ください。

【後編】大学入試改革に伴う小論文の傾向 〜近年の難関大入試で求められる力とその身につけ方

 

 

難関大学の入試、およびその先の社会で求められるこうした力は、Z会が「教育理念」として大切に養成しようとしている

  • 課題を発見・解決する力
  • 本質を見究める力
  • 自らの思いや考えを伝え、周囲を巻き込む力
  • 社会をより良くしようとする強い意志

といった力とも共通するものとなっています。

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