私立大学、特に文系学部においては、英語の得点は合否を分ける重要な教科となります。そうであるにも関わらず、同じ大学であっても、学部によって出題傾向が異なる大学も多く、形式や傾向に合わせた対策が難しい教科となります。そうは言っても、入試傾向から必要な力を把握し、その力を意識して対策を行うことが、効率的な対策になりますので、今回の記事を参考にしてください。
※残りの大学は入会後にご確認いただけます。
① 早稲田大学
〇読解問題
1000語程度の文章が2~3題出題される、200~500語程度の文章が多数出題されるなど、出題形式は学部によって異なります。いずれにしても、合計の語数が多く、時間的余裕はありません。
文章自体も、文構造が複雑なケースもあるため、正確に文構造を把握することで内容を正しく理解するために精読力を高め、そのスピードを徐々に上げる形で、速読力につなげることを意識してください。
〇文法・語法・語彙問題
空所補充や整序問題、正誤問題等が、独立した大問で問われるとともに、読解問題内でも出題されます。
出題のされ方が独特で、正誤問題で「誤りなし」の選択肢がある、空所補充問題で「不適切語」を選択するなど、正確な知識を有していないと対応しづらい出題もあるため、文法・語法・語彙の習得は必須です。
〇英作文
自由英作文、あるいは英語での要約問題が出題されます。国公立大学と同じような出題形式であり、記述力を要するため、「入試演習」に取り組み添削指導を受けることで、英作文の力を養成しておきましょう。
以下、学部ごとの特徴を簡単に紹介します。
〇政治経済学部
「総合問題」という形で出題され、大問1は国語、大問2は英文読解、大問3は自由英作文の3題構成で、試験時間は120分です。
大問2の英文読解は、2,000語近くにおよぶ長文で、図表や資料も含まれます。読解ができれば、設問自体はそれほど難しくはないため、語彙力と構文把握力を高め、英文の内容を正確に捉える訓練をしてください。
また、内容説明問題が出題されるため、「入試演習」に取り組み、和訳や内容説明問題への対応力を養成しておきましょう。大問1と併せて、国語力が必要だと捉えてください。
統計数値の処理を伴う出題もあるため、ある程度の数学の力も必要です。
いずれにせよ、類似の問題を市販の問題集から探すことは困難なため、過去問演習は念入りに行うと良いです。
大問3の自由英作文は、短い英文で示されるテーマに沿って書く形式です。全体の試験時間を考えると、長くても15分程度で書き上げる力が必要となるため、「入試演習」には必ず取り組み、添削指導を受けておきましょう。なお、問われていることに対する解答を考えること自体が難しい場合が多々あるため、過去問等で同じような形式の問題に、数多く取り組むことで、対応力を養成しましょう。政治経済学部の入試は、2021年度から「総合問題」に変わりましたが、それ以前の英語の英作文問題と傾向は似ていますので、過去問を遡っての対策は有効です。
〇法学部
年度によって多少の変化はありますが、基本的には、大問1、2が長文読解、大問3が正誤、大問4が空欄補充、大問5が文法、大問6、7が自由英作文となります。
試験時間は90分で、とにかく時間が足りないので、大問3~5の知識問題を手早く処理して、読解や作文に時間を割く戦略をもつことが重要です。
長文読解の力の増強は、語数と試験時間を比較すると明らかです。細かい文法や構文を気にせず、また知らない語彙に惑わされることなく、文章の大意をつかむことを優先して手早く読解し、設問に必要な箇所は精読して正解できる力を身に着けてください。
また、語彙力の増強も必須ですので、手元の単語帳を仕上げた後、『速読英単語 上級編』にまで取り組んでおくと良いです。
自由英作文は、日本語による解答方針が決まった後は、スラスラ英文を書くことができるよう、トレーニングをしてください。また添削指導は必須ですので、「入試演習」には必ず取り組んでください。
イラスト、図、グラフなどを見て考える形式の出題もあり、何を書いてよいか迷うこともあるので、過去問を用いて、傾向には慣れておいた方が良いでしょう。
〇文化構想学部
大問1は長文の空所補充(語句)、大問2は長文読解、大問3は長文の空所補充(文章)、大問4は会話文の空所補充(語句)、大問5は英語要約(英作文)と、読解問題が8割を占める出題構成です。
試験時間は90分で、英文の内容を正しく把握できないと解けない問題ばかりなので、読解力、特に要点把握と情報把握の能力を高めておく必要があります。語彙力も高いレベルが必要とされるため、手元の単語帳を仕上げた後、『速読英単語 上級編』にまで取り組んでおくと良いです。
大問5の英語による要約問題は、4~10語の英文を書けば良いので、作文自体は難しくはなく、本文の内容把握力が問われます。つまり、読解力の増強が、文化構想学部の英語で合格点を取るための必要条件となりますので、比較的長め(500語前後)で抽象度の高い英文の読解トレーニングを行っておくと良いです。
〇文学部
大問1~4は、長文読解に伴う選択式問題で、大問5は英語要約(英作)となります。
試験時間は90分で、2,500前後の英文を読解する必要があるため、読解力が必要な試験となります。
大問1は語句の補充問題になりますが、同じ品詞が選択肢として並び、意味の違いで正解を選択できる語彙力が必要となります。いたずらに語彙数を増やすというよりは、1つの語句の複数の意味を確実に頭に入れておくことが攻略の鍵となります。
大問2は模試で見るような普通の長文読解問題です。語数が多いので、丁寧に訳していると時間がなくなってしまいますが、ひねりのない設問ばかりなので、文章の大意をつかみ、設問に取り組めば正解を導くことができます。とは言っても、語彙力は必要となるため、他の大問対策も兼ねて、『速読英単語 上級編』にまで取り組んでおくと良いです。
大問3は文挿入問題で、800語前後の英文を読んで、空所に当てはまる文を選択することになります。時間との戦いになりますが、例えば選択肢の英文の時制を確認するだけで正解を選択できるなど、選択肢の英文自体が長く情報量が多いため、大問1よりは解きやすい大問なので、得点源としたいところです。
大問4は会話文の語句補充問題で、口語表現が多いため、苦戦する人が多いはずです。結局語彙力がものを言うので、語彙力を増強して臨んでください。
大問5の英語による要約問題は、4~10語の英文を書けば良いので、作文自体は難しくはなく、本文の内容把握力が問われます。つまり、読解力の増強が、文学部の英語で合格点を取るための必要条件となりますので、比較的長め(500語前後)で抽象度の高い英文の読解トレーニングを行っておくと良いです。
〇商学部
大問1は会話文問題で、大問2~5は長文読解問題となります。全体で3,000語前後の英文を読解することになる上に、語彙が難解なテーマが多く出題されるため、読解力の向上とともに、語彙力の増強が不可欠です。『速読英単語 上級編』にまで取り組んでおくと良いでしょう。
設問は、内容説明や内容一致、空所補充、同義語選択となり、一部記述問題が出題されます。記述問題は、並べ替えや本文の抜き出し、英訳などになりますので、少なくとも和文英訳についてはトレーニングをしておく必要があります。
90分で500語前後の長文を、連続で4題取り組む必要があるため、時間的余裕が全くない試験です。比較的長めの文章に日頃から取り組み慣れておくことが重要です。
〇理工学部
大問1は長文読解、大問2は整序問題、大問3は空所補充と整序問題、大問4は短文読解、大問5は語彙(共通語補充)となり、読むべき英文の量が非常に多く、また出題形式が独特なため、過去問を用いた対策は必須として、科学系の長文読解のトレーニングを積んでおく必要があります。
語彙力の増強も不可欠ですが、『速読英単語 上級編』レベルのものにまで取り組んだ後は、科学系の英文に数多く取り組み、そこで出てきた語彙を都度修得する形で、語彙を増やすと良いです。
また読解力や語彙力だけでなく、文整序で必要な文章作成力につながる文法・構文把握力も必要となるため、英語の力を満遍なく高めておくことが必要です。
〇社会科学部
大問1は文法問題で、大問2~5は長文読解問題の構成です。
2025年度入試より、試験時間が90分から60分に短縮されたことに伴い、1題あたりの文の語数も900語前後から700語前後に減少、そして設問数も減少しました。試験時間に対する分量は変わらず多いため、短時間で英文の内容を把握し、設問に対応する力が求められます。
大問1の文法問題は、2~3行程度の英文に引かれた下線部のうち、誤りのあるものを指摘する出題ですが、「NO ERROR」が選択肢に含まれるため、苦手とする人が多いです。基本的な語彙や文法知識で解けるケースもあるため、基本的な文法や構文は、確実に頭に入れておきましょう。
長文読解問題は、空所補充、語義選択、要旨選択、内容一致文選択となりますが、文章自体は時事テーマを含んだ難解なものが多いため、手早く文章の要旨を掴むことのできる読解力と語彙力が必要となります。
『速読英単語 上級編』にまで取り組んで、語彙力を増強するとともに、文章の中に出てきた語彙を正確に訳す訓練を行ってください。英語の読解問題に取り組む際は、手早く要旨を掴み、設問に解答することを意識してください。そして、その文章中でわからない語彙や、訳すことのできない文法・構文に出会った際は、前後関係から類推して訳すとともに、後ほど正しい知識をインプットすることで、知識量を増やすと良いです。
〇人間科学部
大問1は英文読解、大問2は短文の空所補充、大問3は語法正誤の構成です。
2025年度入試より、試験時間が90分から60分に短縮されたことに伴い、全体的な語数や設問が減少しましたが、処理量を考えると、時間内に高得点を狙うことが厳しい試験であることに変わりはありません。
大問1の読解問題は、200~400語の英文を読んで、内容一致や空所補充、表題選択などに取り組む形式です。英文自体は難しくはないです。選択肢にまぎらわしいものが含まれているため、解答には時間を要します。先に設問内容を確認してから本文を読むことで時間短縮につながるので、過去問でそのトレーニングをしておきましょう。
大問2は前置詞の空所補充問題です。同じ選択肢を繰り返し使用できたり、「NO WORD」が選択肢に含まれる上に、難しい熟語が出題されたりするので、難易度は高いです。イディオムの知識量が必要とされますので、特に前置詞を含むイディオムは、その成り立ちからしっかり理解し、たくさん頭に入れておきましょう。
大問3は短文の中の誤りをみつける出題ですが、「誤りがない場合」の選択肢があるため、難度は高いです。高いレベルの英文解釈能力が試されるため、ハイレベルな文法問題に対応できる力を養成してください。
〇スポーツ科学部
2025年度入試から、「総合問題」による試験に変わり、大問1が資料やデータを含む英文読解問題の形で出題されました。
事前に公表されたサンプル問題では、英文の出題はなかったため、今後もこの出題傾向が続くとは限りません。ただし、この学部のみを受験する人よりも、併願で他学部、他大学を受験する人の方が多いはずですので、英語の対策はしっかり行っておいてください。
また、スポーツ科学部で英文が出題されたとしても、語彙や文法のレベルは共通テスト並みとなるはずですので、共通テストに対応できる力があれば、こちらも対応可能だと考えて良いでしょう。
〇国際教養学部
国際教養学部の英語の試験は何度も変更されてきましたが、ここ数年は長文読解3題、英作文3題で落ち着いているので、今後もこの形式での出題になると考えてよいでしょう。
読解問題(Reading)が90分で、英作文(Writing)が60分と、英語の試験が2分割されていることも特徴です。
読解問題は、ここ2年は、設問数に変化はあるものの、要旨把握、同義語選択、内容不一致文選択の出題が続いています。英文の語数が多く、本文や選択肢の語彙が高レベルなため、日頃から長めの長文読解を行うことと、語彙力の増強が不可欠です。
出題される英文のテーマが、科学や経済のような専門的なものから、物語まで幅広いため、様々なジャンルの英文に触れることを心掛けて対策をしてください。
英作文は近年は、大問1が短い英文を読んだ上で自分の意見を書く自由英作文、大問2がグラフを読み取り設問に英文で解答する問題、大問3が英文の日本語要約問題で固定されているため、今後も同じ傾向が続くと考えて良いでしょう。
英作文力の向上のために、英語の入試演習への取り組みはもちろん、日本語の要約問題に対応するため、現代文の記述力を向上させるために、国語も受講している人は、現代文の入試演習にも手を抜かずに取り組んでください。