ウェルビーイングとは何か~教育とウェルビーイング~

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Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。

最近、「ウェルビーイング」という言葉をよく耳にするようになりました。
近年、文部科学省の様々な文書においても「ウェルビーイング」という言葉が記載されています。

この言葉を目や耳にしたことがあっても、どういうものなのかを説明することは難しいという方も多いのではないでしょうか。

現在、Z会ソリューションズでは、小学生向けの読み物として『99%の小学生は気づいていない!? ウェルビーイングの魔法』という書籍を発刊しており、今回はこの書籍を発刊するにあたって集めた知見から「『ウェルビーイング』とはどういったものなのか」にということについてご紹介していきます。

 

ウェルビーイングとは

この言葉は、1946年のWHO(世界保健機関)が設立された際に初めて登場しました。

Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.

健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが 満たされた状態にあることをいいます。

-世界保健機関憲章前文(日本WHO協会仮訳)より

このように、well-beingは「満たされた状態」と訳されています。
なにが満たされた状態かというと、「肉体的にも、精神的にも、社会的にも、全て」であり、WHO憲章で定義されている「健康」の概念はとても広いということがわかります。
身体が健康であること、心が豊かで幸せであること、そして社会が良好な状態であること。
それがウェルビーイング、つまり「幸福」な状態であるということです。

75年以上も前に登場したこの言葉が改めて注目をあびたのは、SDGsとの関連と言えます。2015年の国連サミットで採択された、2030年までの世界の行動指針であるSDGsの3番目の目標として、「Good Health and Well-Being(全ての人に健康と福祉を)」が掲げられています。ここではウェルビーイングが「福祉」と訳されています。

さらに2019年、OECD(経済協力開発機構)のEducation2030プロジェクトが提示した「ラーニング・コンパス2030」の中で「individual and collective well-being(個人および集団のウェルビーイング)」として登場します。
この訳語では、「ウェルビーイング」がそのまま使われています。「ウェル」と「ビーイング」、つまり「良好な状態」というのが、「健康」「幸福」「福祉」などを幅広く含む概念であることの表れであるとも受け取れます。
個人と社会のウェルビーイングは「私たちの望む未来(Future We Want)」であり、社会のウェルビーイングは共通の「目的地」とされているのです。

「ラーニング・コンパス2030」では、ウェルビーイングに関与する11の要因(OECDの指標)と、SDGsの17の持続可能な開発目標(国連の定義)との関係性が表にまとめられていて、互いに密接に関係していることがわかります。
持続可能な社会を目指すためにも、個人のウェルビーイングと社会のウェルビーイングはとても重要であるということです。

【まとめ】
ウェルビーイングとは、心身と社会的な健康を意味する概念である。
持続可能な社会の実現のためには、個人と社会のウェルビーイングの実現が必要である。

 

教育とウェルビーイング

心も身体も健康であるほど生産性や創造性が上がるという研究結果もあり、日本では健康経営や働き方改革の観点から、国や企業からウェルビーイングという概念が広まりました。

そんなウェルビーイングが教育においても注目されています。
中央教育審議会の令和5年3月8日付「次期教育振興基本計画について(答申)」では、「ウェルビーイング」という言葉が実に49カ所で登場しました。
「ウェルビーイング(Well-being)」とは、「経済的な豊かさのみならず、精神的な豊かさや健康までを含めて幸福や生きがいを捉える」考え方であるとした上で、次期教育振興基本計画のコンセプトについて下記のように述べています。

我が国の教育をめぐる現状・課題・展望を踏まえ、本計画では 2040 年以降の社会を見据えた教育政策におけるコンセプトとも言うべき総括的な基本方針として「持続可能な社会の創り手の育成」及び「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を掲げる。両者は今後我が国が目指すべき社会及び個人の在り様として重要な概念であり、これらの相互循環的な実現に向けた取組が進められるよう教育政策を講じていくことが必要である。

「次期教育振興基本計画について(答申)」P8より

これに続けて、日本社会に根差したウェルビーイングを教育を通じて向上させていくことや、子どもたちのウェルビーイングを高めるためには教師のウェルビーイングを確保することが必要であること、また、学校だけでなく地域社会とのかかわり、そして生涯学習・社会教育の視点も大切であることなどが述べられています。
身体的、精神的、社会的に良い状態であること、そしてそれが短期的なものではなく、生涯にわたって続いていくこと。それを目指すのがウェルビーイングの実現であり、教育はその重要な担い手なのです。

 【まとめ】
個人と社会のウェルビーイングを実現していくために、「持続可能な社会の創り手」を育て、日本社会に根差したウェルビーイングを教育を通じて向上させていくことが必要である。

 

ウェルビーイングのための「4つの因子」

ウェルビーイングは学問的な研究分野でもあり、世界中に様々な研究者がいますが、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授は日本のウェルビーイング研究の第一人者です。

幸福の対象には、地位財と非地位財があります。地位財は長続きしない幸せで、他人と比較できるカネ、モノ、地位などです。非地位財は、精神的、身体的、社会的に良好な状態、つまりウェルビーイングです。

『ウェルビーイング』p72 前野隆司・前野マドカ著、日経文庫より

この非地位財につながる心の状態を分析した結果として、「幸せの4つの因子」を明らかにしました。

・「やってみよう」因子 :自己実現と成長
・「ありがとう」因子  :つながりや感謝、利他性やおもいやり
・「なんとかなる」因子 :前向き、楽観的、チャレンジ精神
・「ありのままに」因子 :独立性と自分らしさ

この4つの因子は日々のちょっとした行動で高めていくことができます。
例えば、夢や目標をもつこと(やってみよう因子)は幸せに通じ、それをだれかと語り合うこと(ありがとう因子)で幸福度が高まります。「どうせ、でも、だって」などのネガティブな言葉を口にしないこと(なんとかなる因子)や、自分と他人を比較しないこと(ありのまま因子)を心掛けることが幸せにつながります。
4つの因子を意識して、自分がなにに幸せを感じるのかを知っておくことで、ウェルビーイングは実現できると前野先生は述べています。

この4つの因子の大切さと、因子を強めて幸せを自分でつくりだす方法について知ることができるのが『99%の小学生は気づいていない!? ウェルビーイングの魔法』です。
小学生向けの学習読み物ですが、大人が読んでも明日からすぐに実行できることばかり。
教室での読み聞かせで、子どもたちのウェルビーイングが高まっているという事例も報告されています。

まずはウェルビーイングについて知ること。そして、自分自身のウェルビーイングを高めることが、周りの人や、社会のウェルビーイングにつながります。
できることから一歩ずつ始めてみませんか?

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