2024年度以降入試、「情報Ⅰ」を入試科目に課して原則6教科8科目へ ~国立大学協会の基本方針~

2022.02.08
Z会
Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
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2022(令和4)年1月28日に国立大学協会が、2022年度の高校1年生(現中学3年生)が受験生となる2024年度に実施される入学者選抜の入試科目に関する基本方針を公表しました。

一般選抜の受験生に対し、教科「情報」(科目名は「情報Ⅰ」)を加えた6教科8科目を大学入学共通テストで課すことを原則とする方針を正式に決定しました。

国立大学協会HPより(外部リンク)

「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度―国立大学協会の基本方針―」の公表及び
「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度―国立大学協会の基本方針―」の策定に当たって(会長談話)の発表について
 

これから各大学が各入試科目の活用の方法を発表していくことになりますので、状況は刻一刻と変化していくものと考えられます。

現時点で確定情報は限られていますが、過去に入試科目の変更で起こった事例も参考に、今後起こると予想されることをまとめました。

 

国立大学協会の基本方針より、「情報」に関する記述全文

今回、国立大学協会が公表した基本方針には、「情報」以外の入試の方針についても記載されています。

その中から「情報」に関する記述だけを抜粋しました。

1.2024年度以降の国立大学入学者選抜制度の基本方針
(2)「大学入学共通テスト」

6教科8科目の原則
高等学校においては、2022年度から新学習指導要領が年次進行で実施され、事象を情報とその結び付きの視点から捉え、情報技術を適切かつ効果的に活用する力を全ての生徒に育む必履修科目として、「情報Ⅰ」が設けられることとなった。2024年度に実施される大学入学共通テストからは、この新学習指導要領に対応した教科・科目が出題され、特に、大学入学共通テストの出題教科に新たに「情報」が加わることは、大学入試センター試験を含め初の教科の追加となる。

国立大学においても、これからの社会に向けた人材育成の中で、文理を問わず全ての学生が身につけるべき教養として「数理・データサイエンス・AI教育」が普及しつつある。そのような状況の中で、高大接続の観点からも、「情報」に関する知識については、大学教育を受ける上での必要な基礎的な能力の一つとして位置付けられていくことになる。

よって、2024年度に実施する入学者選抜から、全ての国立大学は、「一般選抜」においては第一次試験として、高等学校等における基礎的教科・科目についての学習の達成度を測るため、原則としてこれまでの「5教科7科目」に「情報」を加えた6教科8科目を課す。
なお、2024年度に実施する入学者選抜での経過措置問題を含む「情報Ⅰ」の活用の方法等について、各大学は、速やかにホームページを活用して公表するなど、受験生に対して十分な説明を行う。

出典:2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度-国立大学協会の基本方針-

 

入試科目が変更になる際に予想されること

国立大学が揃って科目を増やすのは、2004年1月の大学入試センター試験以来となります。
2004年度入試では「国立大学を受験するためには、勉強の負担が大きくなる」ということで、国立大学入試の志願倍率が前年度より0.2ポイント低下し、数にすると約2万人ほど志願者が減少しました。(下表)

もしかしたら、変更初年度となる2024年度入試(2025年実施)も「情報Ⅰ」の負担感から同じように国立大学の志願者数が減少するかもしれません。

余談ですが2004年度入試では、国立大学志願者が減少し、その反動として私立大学の志願者が増加すると予想されていました。
しかし、大学入試センター試験が全体的に易化したため平均点が上昇し、国立大学への強気の受験も見られたため、私立大学の併願校数が減り、結果として私立大学全体の志願者数が減少したという結果となっています。

文部科学省の資料を元に執筆担当者者が作成

また、大学入試センター試験の出題科目(地歴、公民、理科)の選択範囲等に変更された2012年度入試でも大きな変化がありました。

それまでの大学入試センター試験の時間割は、「地歴(60分)」「公民(60分)」「理科①(60分)」「理科②(60分)」「理科③(60分)」と分かれていましたが、2012年度入試から科目選択の弾力化を目指し「地歴+公民[1科目(60分) or 2科目(120分)]」「理科[1科目(60分) or 2科目(120分)]」という時間割に変更となりました。

このタイミングで「倫理、政治・経済」という4単位科目が新設され、それに伴い、北海道大学、東北大学、東京大学、大阪大学、京都大学(一部学部)、九州大学(一部学部)などが「『日本史B』『世界史B』『地理B』『倫理、政治・経済』という4単位科目から2科目を入試科目とする」と決定しました。「倫理」「政治・経済」「現代社会」などの2単位科目は入試科目として認められなくなったことで大きな話題となりました。

当時、文系の5教科7科目といえば、「世界史B」と「現代社会」のような4単位科目と2単位科目を組合せて受験していた生徒も多く、学校のカリキュラムもそれらを見越して組まれていました。一部の進学校では、授業時間を再編するという対応に迫られ、「高校公民免許を持っている先生の数が足りない」という問題が生じた県もありました。

今回の動きは4単位科目が課された場合と同じように、『「情報Ⅰ」が、どの国立大学で、どのように入試に活用され、合否判定に影響するのか?』によって、その影響範囲が変わっていくことが予想されます。

 

大学はどのように入学者選抜で「情報Ⅰ」を活用するのか?会長談話より

各大学が「情報Ⅰ」を入試科目にどのように設定するかで、合否判定への影響度合いが変わることは上記の通りですが、その温度感を知る資料として、国立大学協会会長の談話が参考になるように思います。

当初は、理系に強い大学が先行して合否判定につながるような設定をするかと予想しましたが、「文理を問わず全ての学生が身につけるべき教養科目として履修されています。」という文言を見るに、文系・理系といった区分はなく全ての受験生が対応に迫られる可能性が高いのではないかという予想もできます。

どちらにしても、各大学の動きを待つ状態ではありますが、各大学から入学者選抜方法に関する情報が発表されましたら、改めてお知らせしていきたいと考えています。

「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度-国立大学協会の基本方針-」の策定に当たって(会長談話)

このたび、国立大学協会は「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度-国立大学協会の基本方針-」を策定し、公表しました。
この基本方針については、2022年度から年次進行で始まる、高等学校の新学習指導要領に対応し文部科学省から公表された「令和7年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」等の内容を踏まえ、国立大学協会として取りまとめた方針を示すものです。

2024年度以降の入学者選抜において、最大の変更点は、大学入学共通テストの出題教科に、国語、数学、英語等と同様の基礎的な教科として「情報」が追加されることです。

これまで国立大学協会は、「高等学校における基礎的教科・科目の学習の達成度を測る」ことを目的に、一般選抜において大学入学共通テストで「5教科 7 科目」を課すことを原則として掲げてきました。2022年度から始まる高等学校の新学習指導要領では「情報Ⅰ」が全ての生徒が学ぶ必履修科目として履修され、一方、国立大学においても既に多くの大学で、「数理・データサイエンス・AI 教育」が文理を問わず全ての学生が身につけるべき教養科目として履修されています。このような中において「情報」に関する知識については、国立大学の教育を受ける上で必要な基礎的な能力の一つとして位置付けられていくと考えています。それらを踏まえ、今回の基本方針では、一般選抜において、これまでの「5教科7科目」に「情報」を加えた、「6教科8科目」を課すことを原則としています。

大学入学共通テストでの「情報」導入初年度は、既卒者となる方への経過措置として、現行の学習指導要領の内容に対応した「旧情報(仮称)」が出題されます。既卒者の方は、自らが学んだ学習の成果を測るものとして、この「旧情報」を受験することができます。また、国立大学においては、「情報Ⅰ」と「旧情報」の内容の違いについて必要なサポートを行い、「情報Ⅰ」を学んだ方と共にさらに発展的な「数理・データサイエンス・AI 教育」を学んでいただきたいと考えています。

今後、各国立大学は、本基本方針を踏まえ、それぞれのアドミッション・ポリシー等に基づき2024年度に実施する入学者選抜に向け具体的な入学者選抜方法の検討を行い、2022年度中には予告・公表を行っていきます。

令和4年1 月 2 8 日
一般社団法人 国立大学協会
会 長  永 田 恭 介

出典:「2024年度以降の国立大学の入学者選抜制度-国立大学協会の基本方針-」の策定に当たって(会長談話)

 

【執筆担当者より】問題集を発刊する企業として

大学入試センター試験において「倫理、政治・経済」という試験科目が設置された際には、多くの学校で演習の時間が組まれ、弊社も含む多くの出版社がその対策問題集を発刊しました。

また、大学入試センター試験から大学入学共通テストへの変更も記憶に新しいところです。大学入学共通テストに関する情報が錯綜する中、大学入試センター試験の最終年では現役志向が高まるとともに、初回の大学入学共通テストに向けては早期から対策を行う学校が多く見られました。
その際、弊社では大学入試センター試験の過去問題を使わず、全てオリジナル予想問題で構成した問題集を発刊したことで、多くの学校・生徒からご好評をいただきました。

大学入学共通テストにおいて「情報」という教科が課されるようになることは、先生方にも、生徒にも、そして我々出版社にも大きな変化です。
先生方や生徒にとって有益な商品・サービスを提供できるよう、「情報」への対策につきましても、今後、各大学から発表される入試要項を踏まえて検討してまいります。


▼「情報」以外にも、最近の入試動向などを踏まえた新刊・改訂をご用意していきます。最新情報は、以下のページをご覧ください。
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