大学入学前教育から見えた学生の傾向

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Z会ソリューションズ 先生向け教育ジャーナル
Z会ソリューションズでは、中学・高等学校の先生向けに教育情報を配信しています。大学入試情報、文部科学省の審議会情報をはじめ、先生方からお伺いした教育についてもご紹介します。

Z会ソリューションズは、中学校・高等学校向けサービスだけでなく大学向け学習サービスも提供しております。その一つに、大学入学者選抜を早期に合格した高校3年生を対象とする入学前の学習をサポートするサービスがございます。

先日、大学入学前サービスをご利用いただいた学生(2022年度大学入学者)にアンケート調査を行い、入学前教育の意義や感想についてまとめました。
本アンケートは、「小論文講座(Z会による添削あり)」を受講した方と、「課題発見・解決能力テスト(アセスメント)」を受験した方に対して実施しております。学生は両方またはどちらか一方を、受講もしくは受験しました。

本資料は大学の教職員の方にご案内した資料ですが、高等学校の先生方にも参考になるかと考え、ご紹介させていただきます。

※当時、入学前に学習サービスを受講された方は高校3年生ですが、「生徒」ではなく「学生」という表現を使用しております。

 

入学前教育は学生の意識にどのような影響を与えたのか?

大学から入学前に課された課題が学生の意識にどのような変化を与えたのかについてアンケートを実施したところ、以下のような結果になりました。

質問① 入学前講座は大学入学にあたり、学習意欲の向上に役立ちましたか

74.3%の学生が弊社の入学前教育が学習意欲の向上に役立ったと回答しました。

入学前教育全体①本講座は大学入学にあたり、学習意欲の向上に役立ちましたか結果

回答数 割合
とても役立った 1,073 22.4%
役立った 2,485 51.9%
普通 1,117 23.3%
役立たない 85 1.8%
全く役立たない 24 0.5%

質問② 入学前講座の受講を、来年の新入生にすすめたいですか

72.9%の学生が本講座の受講を来年度の新入生にすすめたいと回答しました。

入学前教育全体②本講座の受講を、来年の新入生にすすめたいですか結果

回答数 割合
ぜひすすめたい 1,024 21.4%
すすめたい 2,462 51.5%
どちらともいえない 1,129 23.6%
すすめない 61 1.3%
あまりすすめたくない 108 2.3%

多くの学生は入学前教育に対して前向きな姿勢を感じる回答結果となりました。

<学生からの感想の一例>

  • 大学に進む前に課題を出していただいたことで計画的に準備することができた。
  • 今回のことを活かして大学でも置いていかれないようにしっかり勉強したいです。
  • 自分がなんのために大学に行くのかを、再認識することができたのが良かったです。

大学入学にあたっての学習姿勢、マインドセットができる貴重な学習機会となっていたことが見受けられます。

小論文講座の答案から見える学生の成績傾向

ここでは、入学前教育で最もご採用いただいている課題である「学科での学びと社会貢献」の答案から見える学生の成績傾向についてご紹介します。

~ 調査概要 ~

[実施人数] 2,020名(2022年度大学入学者)

[課題名]  「学科での学びと社会貢献」

[設問]
あなたはこれから所属する学科での学びをどのような形であなたの人生に生かしていきたいと考えますか(例:国内・国外での就職、卒業後の進学、社会貢献、自己実現など)。
それに関連した社会現象、あるいは身の周りのことを一つ具体的に挙げた上であなたの考えを600字以内で述べてください。

[評価について]
小論文講座では、「論述内容」「表現表記」の2つの大きな項目に分けて評価を行っています。

「論述内容」では、論述の基本【設問要求の理解+自己意見(主張+根拠)】ができているか、読み手に対して説得力を持つ記述ができているかどうかなどを評価しています。

「表現表記」では、原稿用紙の使い方や漢字表記、小論文としての適切な表現などの国語的な記述力を、「論述内容」の評価とは切り離して評価しています。

本記事では論述内容についての評価結果のみを掲載します。
答案からは、自分の主張を示すという論述の基本的姿勢は十分に感じられました。
一方で、課題に対し深く掘り下げて考え、その思考内容を他者(読み手)に論理的に伝えるという点が課題としてあがりました。

設問の要求に応じているか

人数 割合
A(とても良い) 93 4.60%
B(良い) 988 48.91%
C(普通) 794 39.31%
D(あまり良くない) 139 6.88%
E(良くない) 6 0.30%

【成績傾向】
50%以上の学生がB評価以上で設問条件を理解したう上で論述に取り組むことができています。
C評価以下の学生は、将来に対する自らの考えを挙げているものの、設問文に示されている「社会現象、身の周りのこと」という具体例との整合性に欠けている傾向がありました。
設問条件は理解しているものの、それをどのように論述に落とし込むのかという点で課題があります。

自分の主張は示しているか

人数 割合
A(とても良い) 141 6.98%
B(良い) 932 46.14%
C(普通) 905 44.80%
D(あまり良くない) 37 1.83%
E(良くない) 5 0.25%

【成績傾向】
約50%の学生がおおむね自身の主張を適切に示すことができています。
将来像と志望学科の学びとの関連をより明確に説明することで主張を強く打ち出し、説得力を高める論述につながります。

適切な根拠を挙げているか

人数 割合
A(とても良い) 114 5.64%
B(良い) 756 37.43%
C(普通) 993 49.16%
D(あまり良くない) 147 7.28%
E(良くない) 10 0.50%

【成績傾向】
全体的に事例を挙げようという意識はうかがえますが、適切な事例かどうか、自身の考えを補強する説明ができているかどうか、という点においてやや物足りない論述が見受けられます。
D評価以下の学生については事例を挙げずに抽象的な説明に終始している傾向があります。
自分の体験や知識を活用して「主張」の補足説明ができていることが適切な根拠の提示につながります。

全体の構成が整っているか

人数 割合
A(とても良い) 50 2.48%
B(良い) 628 31.09%
C(普通) 1,187 58.76%
D(あまり良くない) 150 7.43%
E(良くない) 5 0.25%
【成績傾向】
B評価以上の学生は読み手にわかりやすい論の展開ができています。
C評価以下の学生は、説明が冗長になり同じ内容を繰り返す、思いつくままに書き進めていて読み手に伝わりにくいなど、小論文を書く上での基本構成の定着が課題となります。
また段落分けの全くないものもあり、高校までの学習による習熟度の差を最も感じられる評価項目でもあります。

適切な考察がなされているか

人数 割合
A(とても良い) 43 2.13%
B(良い) 417 20.64%
C(普通) 1,286 63.66%
D(あまり良くない) 268 13.27%
E(良くない) 6 0.30%

【成績傾向】
一般論の繰り返しにならず、独自の切り口で論述を深めることができているかを評価する項目ではありますが、全体的にやや物足りなさを感じる論述が多く見受けられました。
問われていることに対して表面的な論に終始するのではなく、「自ら踏み込んで考える」習慣づけで「深く考えて伝える力」を伸ばしていくことが重要となります。

すでに、お取り組みをされている中学・高等学校もございますが、大学入学後の学びにおいて必要とされる「能動的な深い思考」「自分の意見を的確に伝える力」を意識した学習の機会をより増やしていただけると良いかもしれません。そのためには論述学習やグループワーク、PBL型授業などを活用し、他者を説得できる文章表現やコミュニケーション力を身につけていくことが肝要だと考えております。

 

課題発見・解決アセスメントから見える学生の特徴

高校から大学にあがるにつれて学びが深くなることに伴い、大学様から「入学前教育として議論や研究などの場で深い学びができるような思考の準備をさせたい」といったご要望をよくお伺いします。

「課題発見・解決能力テスト」のうち、入学前教育で最もご採用いただいているテーマ「コンビニエンスストアの24時間営業」の成績結果から、学生の資質・能力に関する傾向を分析いたしました。

 

「課題発見・解決能力テスト」とは?

〈決まった答えのない問い〉に対して、自分なりの答えを出すために、的確に情報を収集・分析し、建設的に意見を組み立てることができたか、その思考のプロセスを評価する、論述式のアセスメントです。

 

「課題発見・解決能力テスト」の全体構成

全体構成

~ 調査概要 ~

[実施人数] 1,041名(2022年度大学入学者)

[課題名] 「コンビニエンスストアの24時間営業」

[解決すべき大きな問い]
日本には、コンビニエンスストアが約5万3千店舗あり、そのうち8割以上は 24 時間営業を行っています。
これに対して、最近、ファミリーレストランなどの飲食店では 24 時間営業を取りやめるケースが増えていると言われています。なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。

[測定する資質・能力]

  • 課題分析・情報収集力
  • 論理を構築する力
  • 意見を構築する力
  • 多様性受容能力
  • 論文作成技術

能力別評価-小分類

※グラフのA~Eは評価を示しています。Aがもっとも高い評価を表します。

全体の中で評価が高かったのが、「課題分析・情報収集力」「意見を構築する力」でした。

ただ、この2つの力をさらに分類すると次のような傾向が見られました。
●「課題分析力」は二極化しており、情報収集や思考を整理する過程には課題が見られました。
●「創造的思考力」においても、ボリュームゾーンが分散しており、独自性を持った意見を出す過程は、学生によって習熟段階にばらつきがありました。

また、評価にばらつきがあった「論理を構築する力」「論文作成技術」を分類すると以下のような傾向が見られました。
●「論理を構築する力」では、「論理構築力」のボリュームゾーンが下がっており、相手に伝わるように筋道立てて説明する過程には課題が見られました。
●「論文作成技術」内の「読解力」についてもボリュームゾーンが下がっており、前述した「課題分析力」と共に分析すると、自分の意見を表明する前段階で、「なぜそう考えるのか」といった情報収集や思考を整理する過程に課題が見られることが分かりました。

 

【執筆担当者より】

今回のアンケート結果や、学習の傾向をご覧になってどのような感想を持たれたでしょうか。普段の生徒の様子と見比べると「予想通り」と感じる箇所もあったのではないでしょうか。

「小論文課題」や「課題発見・解決能力テスト」は、教科学習とは異なる力を身につけたり、測定したりするサービスとなりますが、高等学校卒業後に大学生・社会人となっても役立つ学習内容となっています。

前述したように、本サービスは大学様に対してご提供しているサービスとなりますが、中学・高等学校向けにも「小論文講座」「課題発見・解決能力テスト」をご用意しております。
ぜひ、この機会にご関心をお寄せいただけましたら幸いです。

 

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